僕らの世界
僕は「人が皆平等である」と思う。
だが、その平等という役目は完全に果たす事は無い。
遠い未来では、人口の増加によりその操作を行われる様になった。そういう未来の話。
「なぁ、ユウタ。今順位どのくらい?」
「今?今は13211位だけど、タイチは?」
「俺は15642位」
「昨日より少し上がったのか?」
「昨日、俺落とし物届けたからだと思う」
そうやって、僕たちは手首についている腕輪を見ながら会話をしていた。
登校途中のスクランブル交差点にある大型ビジョンでは、今日の出生者数が表示された後、ある番組が流れ始める。
遠い昔、人口が100億人を越した頃、世界中では飲食物の供給や貧富の差が拡大し、多くの国・部族で争いが絶えなくなった。度重なる戦闘に人々は疲弊しきっていた。
そんな中、人々は地球を一つの国として「EUC」を成立させた。そして、国を一万に区切り、人口の安定を図る為に居住者の人数を一区画に10万を取り決められた。
これを「世界人口上限法案」と呼ばれる。
もし区画内の人口が10万を超えたら場合、10万を超える順位のものは処刑される。
自分たちは、生まれた時から順位がある。優れた成績を持つ者や善意のある行為を行なった者等は順位が高く、長く生きる事ができる。
僕たちはそういう世界で生きている。
僕がこの507ファームに住み始めてもう10年目になる。
人はこの世界で産まれると7歳になるまで同じ場所で育てられる。そこを「ファミリアス」と呼ばれ、子供達が7歳になる時にファームに分けられる。
タイチはファミリアスに居た時からの友人だ。
学校に着くと
昨日教師の一人が強制執行にあったらしい
と噂が流れていた。
その噂は本当だったらしく。昨日自分達の担任が強制執行にあったらしく、今日から新しい担任が赴任してきた。
「どうも、新しく担任になった。ミノル・K・マキシラーと言います。よろしくね」
そう、新しく来た担任が明るく挨拶をする。
いつもの日常が流れる。
「委員長」
「どうしたの?ユウタくん」
「今日時間あるか?」
「ええ、あるわ」
「じゃあ、放課後に」
「わかったわ」
委員長であるユリにそう話しかける。
それを見て、タイチが近寄ってくる。
「なんだよ。委員長とはどう言う関係なわけ?」
「別に。ただ、勉強教えてもらってるだけだけど」
「本当にそれだけか?」
「本当に勉強教えてもらってるだけ。早く死にたく無いからな」
タイチは黙って見ているだけだった。
それから、放課後になり委員長と一緒に教室出て靴箱まで二人で向かった。職員室の前を通った所で女の子にぶつかった。
この学校の制服では無い服を着たその子は尻もちをついてしまった。
「ごめん。大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。こちらこそごめんね」
その子はそう言った。
僕はその子に手を貸そうとして、手を前に出す。
その子は不思議そうな顔して、その手に捕まる。
僕はそのまま握って、その手を腕ごと引く。
その子の体はとても軽くて飛んで行ってしまいそうになるぐらい軽かった。だから、僕は思っていた以上に強く引いてしまい、その子の体と僕の体の隙間は無くなってしまった。
見ただけじゃわからなかったそれは確かにあって、その子が女性である事をもう一度認識した。
「あっごめん」
ただ一言僕はその子に謝る。
「何が?」
その子は本当にわからなかったのか、キョトンとした顔で僕を見つめる。
「その、体が」
「あー大丈夫。気にして無いから」
そう、さっぱりとした感じでその子は言う。
続けて
「初めまして。私は唯鬼 アリス。この学校の転校生です」
その転校生とは、これから長い関係になるとは思っても見なかった。
僕はこれから多くの人を傷つけなければいけない狼煙を上げてしまっていた。僕はそれに気づかなかった。