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一振り目、転生準備

プロローグです。


むしゃくしゃして書いた。

続くかどうかは分かりません。

物語がどういった風に進むのかもわかりません。

だって本当にコインとサイコロで決めてますから。

時々都合がいいように振り直していますがね。


でも、一応物語の方向としてはファンタジー世界のほのぼのを書くつもりです。







「――――はっ!」



 目が覚めたら、俺は変な空間に大の字で寝ていた。見える景色は電気の光が無い満天の星空のように小さな光の粒が大量に輝いている。

 立ち上がって辺りを見渡せばそれは空間全体に広がっていて、俺は地球と同じ重力を感じながら床と思しきガラスのような透明なものの上に立っていた。


「何処だここ?」


 そう呟いた瞬間、目の前にゲームのウィンドウみたいなものが出現した。枠の内側には日本語で文字が書かれていた。


 なになに?



 初めまして、神です。

 覚えているでしょうが、君は自殺しました。

 ここは最近神々の間で流行りの異世界転生に使用する転生の間の一つです。

 もう察したでしょうが、君には異世界転生をしてもらいます。

 理由は単純、私が退屈だから君の人生を観察させてほしい。

 退屈なのに何故この場にいないのかって?

 君が自殺した後、すぐに世界が消滅して魂の引っ越しに私を含めて神々が駆り出されて忙しいからだよ。

 ってことで、こうやってメッセージを残しておきました。



 最後まで読み終えると“次へ”というボタンがあったので押した。

 文字が切り替わった。



 さて、君が異世界転生するにあたって自殺したことによるペナルティがあります。

 自殺は止むを得ない場合を除いて、本来の寿命を全うしたことにならないから、目標未達扱いになるからね。

 で、そのペナルティが今回の異世界転生の肝なんだけど、君にはこれから一生、コインとサイコロを使って行動を決めてもらうよ。

 その為に私の力を込めた神器を作ったから、渡すね。



 今度は“受け取る”というボタンがあった。


 これ、受け取らないとずっと進まないんだろうな。

 嫌がらせでこのまま……は、なんか怖いし止めておこう。


 素直にボタンを押すと、ウィンドウからコインとサイコロが吐き出された。不思議な力によって浮いており、手に取ると浮かなくなった。


「これ、五百円じゃん」


 確認するまでも無くすぐに気付いた。

 正真正銘、日本の造幣局が製造している五百円玉だ。しかもちょっと古い。平成元年のものだ。


「サイコロは……普通だな」


 何の変哲もない立方体で六面の白いサイコロだ。一の目が赤くて他の目は黒い。

 ウィンドウを確認すれば、文字が変わっていた。



 受け取りましたね?

 その二つは『決断のコイン』と『運命のサイコロ』という名前で、捨てても壊しても新品同様の状態で手元に戻ってきますから、思いっきり使ってあげてくださいね。

 使い方は至極単純、コインはコイントスで二択を決める時に使います。サイコロは三つ以上の選択肢がある時に振って使います。

 ただ、どちらも先に選択肢を明示しておかないと効力は発揮されませんし、所持者がその気じゃないと同じく効力を発揮しません。

 で、その二つの神器の力はと言いますと、絶対的強制です。流石に同じ神相手に効き目はありませんが、それ以下の存在なら選択した結果を強制的に行わせる効力があります。

 一例として、コイントスで生死を賭けて死の結果になれば、その場で即死します。問答無用です。ぐちゃぐちゃのバラバラです。

 バラバラ死体を防ぐには、死に方まで選択肢で明示してくださいね。



 ご利用は計画的に、だな。

 初めはお店の食べ物とかで慣らすか。


 次へ、のボタンを押すと文字が切り替わった。



 どうせ初めは簡単な選択肢で試そうとか思っているでしょうが、そうはいきませんよ。

 これでもペナルティですからね、転生の準備をコインとサイコロで決めてもらいます!



「うわっ、読まれてる」



 では早速始めましょうか。転生先の君はどちらかな?


 表:美少年

 裏:美少女


 因みに、そのコインは絵柄が表で数字が裏だからね。

 はい、やって。

 やらないと私が面白いと思った方を強制させるからね。



「マジか……。でも、なるほど。そういう明示の仕方もアリか」


 まさにチュートリアル。

 まぁ物は試しだ。


 俺は手に持っているコインを親指に乗せ、弾いて真上に飛ばした。

 子気味良い音を立ててクルクルと回転しながらコインは上昇し、勢いが無くなると重力に従って落下を始めた。

 丁度胸の辺りに落下したところで格好をつけながら掴み取り、手の平を上にしてゆっくりと指を開いた。


 結果は――“数字”が上を向いていた。


 つまり、裏である。

 それを俺が認識した瞬間、コインと体が同時に光り出した。

 腕が見る見るうちに変わり始め、男らしかった腕が細くしなやかなものになった。

 着ていた黒い甚平の胸元は膨らみ、ズボンがきつくなった。特にお尻。

 髪も長くなった。後ろがやたら長い。膝まである。


「……マジかぁ~」


 溜息混じりの呟きも、すっかり綺麗な女性の声になってしまっている。

 俺も男だから女体には非常に興味がある。だがしかし、望んでもいないのに性自認が一致しない状態になるのは精神的苦痛でしかない。


「振り直しは?」



 そうそう、もし結果が気に食わなくても振り直しは認められないからね。それに美少年または美少女だけど、髪とか肌とか瞳の色はランダムだから。

 あっ、鏡出しておくね。



「くそっ、完全に読まれてる……!」


 思わずウィンドウを叩いたが、拳がすり抜けるだけだった。

 怒りをぶつける場所が無く、再度溜息を吐きながら隣にいつの間にか出現していた大きな姿見の前に立った。


「これが俺か……いや、もう私と言った方がいいか」


 私の姿は、それはもう大層な美少女だった。

 無駄に長くて膝まである黒髪はストレートでサラサラしている。

 瞳は青く澄んでいてサファイアを思わせ、肌は染み一つ無い色白で、演技次第ではアイドルをやれるレベルの美貌だ。

 体の方は、甚平の上から触ってみれば漫画やアニメのような理想的な体型をしていた。胸もしっかりとあって満足である。


 次へ、のボタンを押した。



 容姿の確認が終わったら、次は服だね。

 サイコロで六つの中から選択してもらうよ。


1.庶民服

2.ドレス

3.メイド服

4.バニー衣装

5.下着のみ

6.奴隷服


 はい、振ってね♪



「……何故にバニー?」


 というかこれ、他の選択肢を考えるとまともなのは実質二分の一だ。

 あと音符がムカつく。


「四と五と六にはなりませんように……ころりんちょ」


 なんかフラグ立ててるなと思いつつ、てきとうな掛け声で床に軽く投げると、サイコロは不規則に跳ねながらコロコロと転がって止まった。


 結果は――“四の目”だった。


 そんなことだろうと思ったよ、ちくしょう!


 サイコロと着ていた甚平が光ると、一瞬にして私はバニーガールの格好になった。色は黒だ。


 バニーガールは確かに好きだけど、着るのは違う。

 全っ然、これっぽっちも、嬉しくない!


 私は忌々しい結果のサイコロを拾い上げると、慣れないハイヒールながらも見事なフォームで投球姿勢を取り――ぶん投げた。


「せいっ!!」


 暗い空間とサイコロの小ささでよく見えなかったが、かなりの距離を飛んだように思う。


「――いてっ」


 少しは気が晴れた直後、頭に何かが当たって床に落ちた。

 それを確認すれば投げた筈の白いサイコロだった。


 おいおい、マジで戻って来るのか。

 怖いよコレ。


 無暗に投げないようにしようと思いつつ、ウィンドウを確認すれば文字が変わっていた。



 着替え終わったみたいだね。

 次に転生特典だけど、その衣装に付与されているよ。

 衣装ごとに性能は違っていて、実はそのバニースーツ――カジノとか専門のクラブとかだとバニーコートと呼ばれるそれは、超高性能で大当たりなんだよね。

 性能を表記しておくよ。



 ウサ耳ヘアバンド

  広範囲をその耳で感知します。

  感知方法は聴覚・気配・生命力・魔力で行われる。

  髪を保護します。燃えません、傷みません。状態を維持します。

  ヘアバンドはどんなに振ってもズレ落ちません。


 バニーカフス

  筋力と魔力が凄く上昇します。

  魔法の媒体として機能します。


 バニーカラー&蝶ネクタイ

  経験値効率が凄く上昇します。

  蝶ネクタイに触れながら念じることで、衣装全体の色を変えられます。


 バニーストッキング+網タイツ

  耐熱・耐寒仕様で、体全体に適用されてどこでも快適です。

  防刃仕様で、かなり頑丈です。


 バニーハイヒール

  脚力が凄く上昇し、移動力も上がる。

  長時間履いていたり、走っても疲れにくくなる。


 バニーコート

  物理・魔法の防御力が凄く上昇します。

  物理・魔法の耐性が凄く上昇します。

  あらゆる状態異常の耐性が凄く上昇します。

  谷間が無限アイテムボックスとなっています。

  これを着用している間、体力と魔力を自動回復します。


 バニーインナー

  ヌーブラとTバックです。

  これを着用している間、排泄行為をしなくて済みます。

  尿意と便意も無くなります。

  老化を防ぎます。


 バニー衣装共通効果

  衣装は全て破れたり壊れても自動再生します。

  使い込むほど体に馴染み、性能が上昇します。

  譲渡不可。他者からの着脱不可。



「どれだけ私に着せておきたいんだよ」


 完全なチート装備じゃん。

 でもこれ、地味にヤバイ文言がある。

 特に老化防止と体に馴染む……行き着く先は不老で着脱不可か?


 恐ろしさと便利さで私の中の天秤が揺れ動いたが、どちらにも傾かなかった。

 結局、今のところ着ていても人目が恥ずかしいだけでデメリットは無いので判断は保留にした。


 次へ、のボタンを押した。



 いよいよ大詰め。転生特典はあげたけど、それだけじゃあどこにでもいるただの転生者だ。だから私――賭け事の神が特別な力を与えようと思う。

 それは『イカサマ魔法』だ。

 特殊な魔法で、魔力感知に引っ掛からず、魔法を阻害する状況でも問題無く使うことができる。

 何故なら、イカサマ魔法は過程を全部すっ飛ばして結果だけを発現する。魔法を使う為に魔力を集めて構築する必要が無い。

 この魔法は想像を現実にする。

 使い方は、奇術師の真似事をすればすぐに理解できる。

 それじゃあ、私の力を受け取るといい。



 読み終わった直後、ウィンドウから光の玉が飛び出して私の体に入り込んだ。


「イカサマ魔法ねぇ……」


 私は丁度欲しい物があって、試しにそれをイメージしながら軽く握った左手の中に右手の親指と人差し指を入れた。

 その瞬間、普通なら無い筈の物が指に触れた。


 ……本当に出来るのか。


 半信半疑が確信に変わり、私はただのバニーガールでいるよりも恥ずかしくないという思いで奇術師らしく声を上げた。


「――はいっ!」


 右手を引き抜けば、一着の衣服が出て来た。

 広げて見れば私がイメージした通りの、シースルーの燕尾ジャケットだった。

 それを羽織ってボタンを留めると、バニーコートによく似合った。


「あとはハットにステッキで、一応は奇術師だな」


 その二つは荷物になるので今は出さない。


 次へ、のボタンを押した。

 


 これが最後。本当は降り立つ場所とかも選んでもらおうかと思ったけど、こうして文章を書き残すのも面倒だからランダムで行くね。着地位置はちゃんと平坦な陸地にしてあるからご安心を。

 で、最後は転生先の世界のことについて軽く教えておくよ。

 君の次の生きる世界は剣と魔法のファンタジーだ。

 魔物が跳梁跋扈していて、人間たちは塀や堀に囲まれた街や村で暮らしている。

 詳細は現地で調べて。書くのめんどくさい。

 冒険者ギルドがあるから、刺激的な人生の為に加入するといいよ。

 かなり大雑把で簡素だけどゲームっぽいステータスを魔法で表示することができるから、覚えると便利だよ。

 あと、言い忘れがあったけど、転生すると異世界言語が自動で身につくから、本から魔ぶのもアリだよ。高いけど。

 それじゃあ、頑張ってね~♪



 読み終わった直後、足元が急に光り出して私はそのまま落下した。



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