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第七話 申し訳ございません……

「お二人には恐縮至極、祝着至極に存じ奉りあげますが……不肖わたくしに置きましては、お二人とも魅力的な方でどちらか一方を選んで、一方を拒絶するという訳にもいかず……」


 廊下を歩いている時から考えていたセリフを口に並べたてる。


 二人が氷点下の目線で、「「それで?」」とその先を促してくる。


「取り合えず、お二人とお付き合いをしていただいてから、どちらかのお方を選ぶ時間を頂ければと……。切に、切に、お願い奉り申し上げる次第で……」


 ひゅうと、俺と二人の間に冷めた風が吹いた。気がした。


「光一郎は、私とエミリの二股かけて天秤にかけようっていうんだ。ふーん。いい御身分ね」


「光一郎君。私だけじゃなくて恵梨香ちゃんとも付き合うんだ。そうなんだ。もてもてだねー」


 お二人の声が寒風のごとく俺の身を縮め上がらせる。


 俺は答えることが出来ず、恵梨香とエミリも押し黙る。


 じっとした時間が教室に流れ……


 ふうと、恵梨香が緊張を切らしたという息を吐いた。


「しかたないわね。まあ、切り札はあるから焦る事はないわね」


「しかたないっかー。まあ、最終手段的なモノはあるからどうにでもなるっかー」


 とエミリも続けてきた。


 息をひそめて成り行きを見守っている様子だった教室の面々が、おーと安堵とも驚嘆ともとれる声を上げる。


「ははーーっ」


俺は、その二人に向かって深々と頭を下げた。


そののち、頭を上げてから打って変わってラフな口調を二人に向ける。


「で、追加なんだが」


「なんか、いきなり馴れ馴れしいわね。本気で二股かけたことを反省してるの?」


「反省はしているが、やむを得なかった事態だとも思っている。で、その切り札とか最終手段という力業的なものは取り合えず勘弁してほしい。お互いのいい所を見て仲良くなってゆくのがいいと俺的には思う」


「うーん……。二人同意の元に結ばれるのが理想なんだけど。光一郎が私を選ばないとなったら強硬策を取るけど、取り合えず初めは普通に恋人同士のお付き合いからというのは賛成するわ」


「私も同意かな?」


「でも、エミリ。あなたの最終手段ってなんなの? 私が負けることはないけど、ちょっと気になるかも」


「そういう恵梨香ちゃんの切り札ってなに?」


 二人の間に、沈黙が訪れる。


「まあいいわ。エミリには申し訳ないけど、この勝負、もう決着はついているのよね」


「私は勝確なんですが。光一郎君は恵梨香ちゃんの誘惑や乱暴には理性全開で抵抗してね。そしたら、エミリがなんでもさせてあげちゃいますから」


 にこっと天使の微笑を浮かべるエミリ。


 じろりと恵梨香がエミリに細目を注ぐ。


 なんでこんな状況になってんだ!


 いや、生徒会室での二人への応対からは当然考えられる事態だったが、最悪のコースを進んでいる。


 二股をかける宣言をした俺と、その二大美少女の予想外の承諾に混乱を極める教室。俺は天井を仰ぐばかりなのであった。

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