第三十七話 エピローグ
「さようなら、綾瀬さん」
「バイバイ、会長」
「今日も一日お疲れさまでした、恵梨香さん」
一ヵ月が経ち、俺たち四人は能力を失って元の日常に戻っていた。
学園の生徒たちも、それぞれ思うことはあるのだろうが、俺たち四人の騒ぎを過去の事として流してゆこうとしているように思える。
皆、自分自身の歩み、未来に向かって進まなくてはならないのだ。
そしてクロぼう。
『ふふん。今回は失敗したけど、また能力与えに来るからよろしくね。人間、能力の欲望からは簡単には逃げられないって証明されてるからね』
と、動揺の面持ちは全くなく言い放って去っていった。
あのクソ猫許すまじ。
今度来たら必ず三味線にする。
「さようなら、ごきげんよう。山口さん」
「それでは、高橋さん」
「彩音さんは、帰り道、気をつけてくださいね」
そして恵梨香が懲りもせずに一言発する。
「彼氏が欲しいわ……」
あからさまに俺に要求する声音。
「エミリもちゅっちゅするお相手さんが欲しいですー」
こちらも欠片も堪えていない様子。
「そうだな……」
俺の同意の返答に、二人の顔色が変わるが。
「恋人、欲しくなったな」
俺は二人を気にする素振りを見せずに、ちらと、並んで歩いている碧を見やる。
「そうね。私も一人が長かったから恋人は欲しいわね」
碧も阿吽の呼吸で視線を返してくれる。
目と目で二言三言会話を交わしてから、遠くの彼方に視線を向ける。
雲一つない空が、心に染み込むように青かった。
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