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第二十八話 作戦会議 恵梨香とエミリ

 光一郎の部屋を出て、恵梨香とエミリは隣室に入った。


 恵梨香は光一郎と碧の接触にダメージを受けて、ベッド上に仰向けになって動かない。

顔に光一郎のトランクスを覆いかぶせたまま。


 その様は、まるで外界から自分の世界を遮断するかのようにも思える。


「恵梨香ちゃん。まだ確定したわけじゃないよ。あまり落ち込まないで」


「………………」


「エミリも恵梨香ちゃんも、本気で光一郎君のこと好きだし。エミリにも恵梨香ちゃんにもいいところいっぱいあるし」


「………………」


「女の子の魅力だって、負けてないってエミリは思うよ」


「………………」


 恵梨香は応答してこなかった。泣くとか喚くとか、感情を表に表す恵梨香が無言なのが、受けた痛手の大きさを物語っていた。


「……恵梨香ちゃん」


「………………なに」


 僅かに恵梨香が反応した。


「そのパンツ、どうしたの?」


「…………夕食後、洗濯機から隙を見て取ってきたの」


 説明はあったのだが、恵梨香はパンツを被ったまま顔を見せない。


 エミリが黙って恵梨香の面を隠しているパンツを見つめる。


 恵梨香はその気配を感じ取ったようだ。


「……なに?」


「そういうの、好きなの?」


「あげないわよ。欲しかったら自分で手に入れなさい」


「私は光一郎君の生身にしか興味ないかなぁ」


「ここまで……」


「うんうん」


「ここまでコケにされて……見返さずにいるもんですか。光一郎をオトして、碧の目の前でキスしているところ見せつけてやるんだから」


「でもぅ……」


「でも……なに?」


「さっき言ったことと反対だけど、光一郎君が碧ちゃんに首ったけなのは認めなくちゃって……」


「そうなの……よね。幼稚園の時、年長組からあの大人しい光一郎が私のこと助けてくれた時に初めて女としてトキメいて」


 恵梨香の声音は、遥か遠くを見つめているようだ。


「年頃になってから、光一郎と一緒におじいさんおばあさんになって一緒のお墓にはいるんだって決めたんだけど……」


「けど?」


「光一郎が幸せなら、私たち身を引いた方がいいのかも……ってちょっとだけ思ってしまって」


「どうなんだろ?」


「疲れちゃったかも」


「そうかもね」


「もう、光一郎のこと、恋愛対象と見なければ楽になれるのかな?」


「そう……かもね……」


 二人の夜は更けてゆく。

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