表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/38

第二十話 キスと修羅場 その1

「おはよう」


「おはようございますー」


 昨日に引き続いて、恵梨香とエミリちゃんが朝俺の家に迎えに来た。


 昨日はいきなりの事で戸惑ったのだが、今日はきちんと対応策を練っている。


 その対応策というか、二人に対しての反撃が問題事なのだが、碧と謀ったからには致し方ない。


 覚悟を決めて、二人に「おはよう」とあいさつを返す。


「光一郎と一緒に登校しようと思って。あとは……」


「あとは……まだ何かあるのか?」


 恵梨香の口から何が出てくるのかという怖さはあったが、聞かないわけにもいかない。


 恵梨香が一歩前に出て顔を突き出してきた。


「おはようのキスをして」


 そのセリフにドキンを心臓が跳ねた。


「学園だと碧がいるし、光一郎は碧に骨抜きにされちゃってるみたいで私たちの事あまり相手にしてくれなくなってくるし。ストレスたまってるの!」


「ストレスはあるのはわかるが……」


「みんなが見ている前じゃなくて、私たちだけのここでならいいでしょ」


 エミリもふるふると身体を左右に震わせてねだってくる。


「エミリにも! エミリにも! 恵梨香ちゃんの次はエミリだからね。確定!」


「女の私からねだるのは恥ずかしーのよ、これでも。でも学園でのおままごとレベルでは満足が出来なくなって。もう一歩情婦の関係に踏み出したいというか」


 上目遣いで頬を膨らましながらねだるように俺を見上げてくる恵梨香の頬が薄っすらと染まっていた。


 俺も男だから、恵梨香に告白され学園で男女の戯れを過ごすにつれ、彼女のことを女の子だと意識するようになっている。


 幼馴染から彼女候補に昇格した、綺麗な娘に成長した娘が恥ずかしながらもねだってくる顔には格別の威力がある。


 恵梨香を見つめているうちに、ドクドクと心臓が高鳴り顔が熱くなってゆく。


 俺の中を駆け巡っている奔流に身体中も熱くなる。


「さすがにそれは……」


 最後の理性でたじろいだ言葉を出した俺だったが、その視線は恵梨香のピンク色をした柔らかそうな唇から離せない。


 前日のカフェテリアの作戦会議で、碧に見とれて少しエロい事を考えてしまったばかりだ。


 俺、彼氏彼女の関係より平和で安心な友人関係の方がよいと思っているつもりだったのだが、思ったよりもエッチな事が好きなのかもしれない。


 恵梨香が顔を下から近づけてきた。


 潤んだ瞳。


 甘い恵梨香の息が俺の鼻孔から奥に入り込み、抵抗する意志を溶かしてゆく。


 恵梨香が目をつむった。


 もう唇が触れる……


 という場面で――


「そこまでにしておいて。卯月君の恋人は私なのだから」


 落ち着いた、子供をたしなめる様な声が背後から聞こえて、「きた!」と思う。


 恵梨香とエミリの目線が俺の背後に向けられてから、二人の表情が石膏の様に固まる。


 俺も振り返ると、予定した通りに碧がそこに立っているのだった。


 ……って、碧、ちょっとその格好はなにっ!


 と俺は慌てふためく。


 碧の登場は昨日練った計画通りで、二人が俺を迎えに来る前に碧は家に来ていたのだが、その碧が……


 バスタオル一枚だけまとった姿で……


 濡れた髪をタオルで拭っていたのだ!


 まるでシャワー上がりのような姿で!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ