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第十四話 作戦会議 その1 続き

 昼のお弁当タイムの時はどう対応してよいかわからず、恵梨香とエミリに困惑しか返せなかったのだが、今碧と一緒にいると安堵というか安寧というか不思議な安心感を感じる。


 なんというか母親に包まれているというような、温かさと心地よさ。


 不思議な娘だと思う。


 何を考えているのか、昨日まで全く見せてこなかった女生徒。


 端正でとても綺麗な造形なのだが、言動がクールすぎて取っつきにくかった女の子。


 それが今、自分の味方になってくれて嬉しさと心強さをも感じさせてくれる。


 いったいこの娘はどんな女の子なんだろう、と興味が湧きおこってくる。


 目の前で視線を絡ませている、印象的な黒髪、意志を感じさせる瞳の女生徒。


 クッキーそっちのけで吸い込まれそうになりそうになっている自分を感じながら、俺はちょっとしっかりしろと自分を叱るのだった。


「で、頼みもしないのに俺に能力を与えたヤツはクロぼうっていう夢魔なんだけど」


 正直、ちょっとドキドキしながら間接キスの紅茶を一気飲みしてから俺は続ける。

 自然な感じで碧との作戦会議が始まった。


「俺が能力者だと恵梨香とエミリにはばらさずに二人の恋人役をしている。どっちかをそのうち選ぶという契約で。恵梨香とエミリのどちらか一方のアタックは防げるが、残りの運命パートナー契約は防げない」


「状況を整理しましょう。現状、能力を使えるのが卯月君と恵梨香さんとエミリさん。卯月君は恵梨香さんとエミリさんからアタックを受けたくなくて恋人のフリ。恵梨香さんの『鉾』とエミリさんの『鉾』。対して、卯月君の『盾』は一つだけ。いまここ」


「俺が恵梨香にアタックして、二人とも無能力になる。碧がエミリにアタックして……碧もエミリの無能力。みんなの武器がなくなって、無事平和が訪れたとかにはならんのか?」


「私は能力者じゃないわ」


「え? そうなの!?」


「ええ。こちらにも色々と事情があって、ね」


「なら、俺が誰か他の女の子が好きっつーか、他の女の子に浮気したら、恵梨香とエミリは浮気した俺に激怒するか呆れるかして俺の事を諦めてくれるんじゃないか? 恵梨香とエミリは他の誰かに能力を使うかもしれないが、はっきり言ってそこまでは面倒を見きれない。このゲームの範疇を超える部分だと思う」


「そうね。そう諦めがいい人たちじゃないと思うけど、卯月君が無事なら私の目的も一定レベルで達せられるわ。完全勝利ではないけれど、判定勝ちをいうところかしら」


「なら、やってみるか?」


「楽観はできないけど、やってみる価値はあるわね」


「浮気かー。あいつら学園の三大美少女だし、俺たちはこんな状況で、巻き込む女の子に申し訳ないと思うが背に腹は代えられない。水瀬さん。誰か協力してくれる心おおらかな女子、心当たりない?」


「あるわ」


 即答が返ってきた。


「よかった。解決の方向で進みそうな感じがしてきた」


「でも……」


「でも?」


「卯月君にとっては災難よね。校内はさらにざわつくだろうし、憎悪と嫉妬に狂って軽挙妄動に走らない男子がいないという可能性も無きにしも非ず」


「…………え?」


「だから……」


 碧がふふっと楽しそうに可笑しそうに目を細める。


「その卯月君の浮気相手の女生徒が、私だという事よ」


「え? え?」


「卯月君は恵梨香さんやエミリさんと二股かけているんだけど、その二人には満足できずに私に手を出すの」


「俺、物凄い悪もんじゃん!! 学園中のヘイトを一身に浴びるよ、それ!!」


 思わず声に出さずにはいられなかった。


 それくらい傍若無人な振る舞いをするという作戦だったのだ。


「そうね。ゲームの勝利の為には仕方ないわね」


「俺、恵梨香やエミリに刺されかねないじゃん!! いや、冗談じゃなくて!!」


「卯月君に協力してくれる都合のいい女子なんてそう簡単にいるわけもなし。私も学園の三大美少女の内の一人だから、卯月君、独り占めね」


 今日は天気がいいわねという調子で、碧は会話をつなげてくる。


「俺、詰むじゃん!!」


「やむを得ないわね。卯月君から言い出した作戦でもあるわ。覚悟を決めて、恵梨香さんやエミリさんの前で私といちゃつくの。ちょっと気分がいい……なんでもないわ」


「本音が駄々洩れじゃないかっ!? 俺、マジでヤバイんだけど」


「もう卯月君はここで私とこうしていること自体が浮気、不倫なのよ。『碧ルート』は確定しているのだから、あとはどう解決するだけかのこと」


「ああああああーーーーーーっ!!」


 俺は悲鳴を上げて頭を掻きむしった。


 マジヤバイ。


 でもこのままでもヤバイ。


 どうしよう。


 マジ、どうなっちゃうの?


 俺は、俺の眼前で楽しそうに微笑んでいる天使で悪魔の様な碧様を見つめることしかできないのであった。

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