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BLUE ZONE―生きたくば逃げろ―  作者: オーメル


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【九十九点】リベリオンズ

 ――戦場に女の声が轟く。

 味方である筈の四家は、何の予定も無い女の声に思わず足を止めてしまった。

 それが自分達の最後になるとは知らず、女が次の言葉を発する前にまるで予定調和が如くに爆発が起きた。

 ARが次々に内側から崩壊する。衝撃と熱と機体の破片が容赦無く兵を襲い、装備ごと彼等の命を奪っていく。生き残ったとしても人体に与える被害は甚大で、痛みに悶えながら死んでいくことになる。

 彼等を助けることを四家はしない。所詮は雇った兵であり、使えないのであればそのまま捨ててしまう。再利用をするに値する人間は極稀だ。

 遠くから聞こえた女の声に悟は聞き覚えが無かった。元々本家の会合に参加する資格も無く、彼の事を特に意識する人間も居なかった所為だ。

 

 彼女の言葉で兵が止まったことは創炎の目で確認が出来ているので、恐らくは予定に含まれていない行動だったのだろう。

 それが結果的に此方側の利となった。逃げる間も無く爆発に飲まれ、全てではないにしろ兵が削れている。更に好都合な事にAR側も武器の斉射が停止した。

 何があったかは定かではないものの、風は間違いなくヴァーテックス側に流れている。

 この隙を逃すことはしない。部下は女の声を聞いてなおARの自爆を続行させている。女の声を敵の声と判断して切り捨て、ただ悟の命令を遂行していた。

 

 流石の忠義と言うべきか、盲目と言うべきか。

 悟は苦笑しながらも続けて爆破に移行し、彼等の平静を奪う。下に居る隊の人間は状況を理解出来ずに混乱している。

 壁に囲まれて見えていない所為であるが、それでも向こうで何かが発生していることまでは理解しているのだ。

 情報を手にする為には建物の上に居る謎の勢力に尋ねねばならないが、それをするのは負けた気がして現場の隊長陣は油断無く構えることだけを指示した。

 緊張が何時終わるかは定かではないが、少なくとも騒ぎは起きている。戦いに発展するまでは然程時間は必要としない。


「例の声を発した機体がどれか解るか?」


 操縦権を奪いつつ、悟は虚空に声を掛ける。

 その刹那、建物の影から滲み出るように黒服の者達が姿を出す。片手には双眼鏡が握られ、今この瞬間にも彼等は目的の機体を探していた。


「通信だけですので判別が付きません。 解り易い動きをしていれば判別も付くのですが……」


「もしかすれば爆破させてしまったかもしれないな。 まぁ、死んだとて予定に変更は無い。 もし見つかれば報告を頼む」


「っは」


 再度相手に視認されないように潜り、爆破は続く。

 ARが爆破されている事実から直ぐに向こうも創炎使用者が干渉していることに気付くだろう。そうなれば逆干渉を起こされ、力の小さい悟の干渉が跳ね除けられる。

 そうなる前に削れるだけ削りたいものだが、彼等の迅速さは舌を巻く程だ。

 そう言った直後、干渉しようと機体に意識を向けた瞬間に弾かれた。叩き出されるような衝撃に頭痛を覚え、けれど諦めることなく他のまだ大丈夫な機体を破壊する。

 そうこうしている内に複数のARがついに迫撃砲のトリガーを押した。爆発とは別の光が弧を描くように空を舞い、そのまま生産拠点目掛けて飛来する。

 ミサイルは壁を狙い、小型のそれらはまるで獰猛な鮫だ。先に激突したのはミサイルの方であり、着弾と同時に強烈な熱と衝撃が襲い来る。

 

 熱は盾が全て引き受け、衝撃によって本体が後退。深く突き刺したことで倒れる事態は避けられたものの、何発も受けていけば破壊されるのは免れない。

 そう思った次の瞬間には生産拠点に迫撃砲が着弾する。此方は防ぐ手立てが無いので回避を選択する他無く、急いで逃げ出した悟の部下達は直撃こそは避けたものの衝撃で壁に叩き付けられた。

 創炎使用者であれば容易に生き残れる状況ではあるも、ただの一般人では壁に叩き付けられてしまえば生き残るのは難しい。

 壁に叩き付けられた者の中にはその場で倒れた者も存在し、彼等は崩落する建物に軒並み潰された。


 解っていたことだ。迫撃砲もミサイルも、一般人相手に使うには過剰だ。

 まともに当たらなくとも余波だけで殺される。なるべく被害を抑えはしても、そもそも一機分の破壊兵器で人は容易く十数人規模で死ぬのだ。

 だからARはなるべく早い段階で全滅させねばならない。味方のARが来る連絡が無い以上、自分達で何とかせねばならないが故に。

 急げ、急げ――ただ急げ。

 一機分に掛かる時間を可能な限り短縮しろ。弾かれたら即座に狙いを変更し、相手が干渉してくる前に全ての設定を終えるのだ。

 

「次、次、次、次、次、次、次…………」


 呟く。

 一言一言を機械的に処理していき、ただでさえ出力の低い創炎を酷使した所為で穴という穴から血を垂れ流す。

 現界を迎えている。止めなければ死ぬまで能力を行使する。その上で、悟は無理を押す己を良しとした。

 此処で踏ん張らないで何時踏ん張る。眼前の敵を倒す為ならば、寿命の十年二十年程度捧げてみせよう。

 全ては新しい世代の為に。人が平等であらんとするのは無理でも、手を差し伸ばして機会を与えることが出来る世の為に。


 超能力者は総じて人類の為に戦った。

 であれば、これは元に戻る為の戦い。過去への逆行と、新たな一歩を踏み出す勇気ある聖戦。

 特別な舞台で踊りの手を緩めるなど言語道断。倒れるその瞬間まで、この下には絶対に向かわせない。

 

 決意が溢れ出る。勇気が表出する。

 感情で人は強くはなれない。限界を超えたと言っても、それは無理をすることを脳が良しと定めたからだ。

 壊れることを前提にすれば人は普段よりも高いポテンシャルを発揮することが出来る。だから、感情という曖昧なもので直接的に肉体が強くなる訳ではない。

 けれど、その感情に触発される存在はある。

 初代の炎が、か細い道を通じて悟の意志を感じ取った。熱く真っ直ぐな勇者の輝きに、彼の炎が手を貸さない理由など無い。

 創炎の大元から発生させる者までの道は、個々人によって広さに差異がある。

 これは才能として現実に表れ、才がある者の方が広い道となるのだ。つまり悟に与えられた道は狭く、供給量もまた少ない。


 その道に炎が殺到する。莫大な熱量が道を溶かして広げ、才の壁を拡張する。

 創炎は概念的人工物だ。怜が作ったが故に、天性のものには該当しない。繋がるかどうかは運勝負になるとはいえ、そこから先は実は彼女に願えば幾らでもカスタマイズが出来る。

 例としては俊樹がその最たるものだろう。創炎としての能力向上に、大元の炎をそのまま使える異能。

 彼女が他の誰かに手を貸すことはないのでカスタマイズはもう無いが、炎には僅かにせよ大英雄の意思が宿っている。

 その意思が、勇気ある者を応援しているのだ。


 瞬間、悟は自身の見える範囲が極端に広がったことを自覚した。

 それだけに終わらず、ARに接続して操縦権を奪う行為をしても余裕がある。時間が無いとはいえ二機目に繋げてみれば、呆気無くも簡単に操縦権を奪えた。

 ならばと弾かれたARに接続を試みる。やはり防壁の感触はあったが、少々力を込めれば簡単に壁は崩れ落ちた。

 スムーズに操縦権が奪える。先程の倍以上の出力を捻り出すことに成功している。

 一体何故だ。どうして、こんな芸当が出来るようになった?


「考えている暇は無いか……ッ!」


 今はまだ彼には解らない。であればこそ、使える内に使い尽くす。

 己の成すべきことを成す為に。主君たる青年に勝利を捧げんが為に。――――その目から銀は抜け落ちた。変わりに芽生えたのは、紅の閃光だ。

 


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