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非モテの俺が初めて作ったハーレムが恐竜だらけだった件について  作者: 如月冥伽
普通の恋愛もしてないのに恐竜少女と出会ってしまった
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1 普通の恋愛もしてないのに恐竜少女と出会ってしまった。

 「あたしはティラノサウルス!!人間、貴様の名前を申せ!」

 

真っ暗な夜道。学校帰りの俺は、何故か白衣しか身に纏ってない女子に押し倒されていた。 

 困惑して冷や汗を垂らす俺を、その女は真っ赤な双眸でギラリと見つめてきた。口元は元気に笑っているが、人ひとり噛み殺せるぐらいの牙がズラリと並んでいた。

  

 おかしい。俺は確か学校帰りだったよな?今日は美術部の活動時間がいつもより遅くなって、それで…

 事が始まる少し前のこと―



   ***


「たっちゃん、たっちゃん。二組の青木、彼女に振られたんだって!」

  

 部活動。絵の具臭い美術室の中で親友の春日が意気揚々と話しかけてきた。よほど興奮しているのか坊主頭の血管が波打っている。

  

「あー、青木ね。それは可哀想に。」

 

 俺は棒読みで相槌を打ち、キャンパスの下描き作業に戻った。春日は俺の様子をつまらなそうに見た。


「つまんないな、もっと反応しろよ。あ、もしや、たっちゃんってモテない系?」


 プププとこちらを嘲笑する春日に俺はこめかみに青筋をたてた。ペチンっ。春日の坊主頭からいい音がした。


「いってぇな、何すんだよ。暴力はダメって幼稚園で習わなかったのか!?」


「お前こそ、人への口の聞き方をもう一度学び直せ。」


 俺がそう言うと春日はぶつくさ文句を言って絵に戻った。俺もため息をついて筆を持った。一つ伸びをしてまた集中する。

 絵を描くことは好きだ。うちの両親は恐竜の研究者であり、家を開けることが多かった。そのため、俺は無駄に広い家で一人で絵を描いて過ごした。友人も春日ぐらいしか特におらず、俺は内向的な性格になっていった。ちなみに何の絵をよく描いていたかというと、恐竜のイラストだった。 

 幼少期、俺は両親から普通の絵本ではなく、恐竜図鑑ばかり読み聞かせられていた。そのためか俺は恐竜大好き人間になり、今もそれが変わっていない。現在、描いているものだって大きな口を開けたティラノサウルスである。


「お前、ガキの頃から恐竜好きだよな。俺、ちょっと子供ぽくて描けねえ。」


 春日が話しかけてくる。


「うるせぇ、好きなものは好きなんだよ。」


 そう、恐竜は大好きだ。春日達のように恋愛に勤しむより、恐竜のことを考えている方がよっぽど充実できる。だから俺は、自分が非モテでも全く気にしない。これからもずっと一人で両親のように恐竜と向き合って生きていく。

 ペチャリ、ペチャリ。二人分の筆の音が美術室に響く。ん?あれ、うちの部活ってあと8人ぐらいいなかったけ?


「なぁ、たっちゃん。」


「…何だ?」

 

「今って、下校時刻だよな?」


 春日が時計を見つめて青ざめている。俺も続けて見た。18時57分。うん、門が閉まるまであと3分。


「やっべぇぇ!!」


 俺は急いでキャンパスと絵の具を片付けた。春日もそれに続く。そして二人で脱兎の如く玄関に向かった。


「畜生!他の部員の奴ら、俺らに声もかけずに行きやがった。」


「大方、俺たちがずっと話してたから怒ってたんだろうな。」


 二人でため息をつくと、玄関を抜け、門まで走る。お、ラッキー。まだ閉まってないや。

 春日と俺は門を潜り、また走り出した。もう日が暗い。早く家に帰って飯をかきこみたい。


「たっちゃん!」


「何だ」


「駆けっこしようぜ。」


「めんど。」


 春日は子供っぽいことを時々言う。それを俺が渋々付き合ってやるのがいつもの流れだ。


「な?いいだろ?」


「あー、はいはい。のってや―」


「じゃぁ、行くぜ」


 俺が言い終わる前に奴は走り出した。畜生、速い。何であいつ運動部に入らなかったんだよ。

 俺は流石に今日は疲れていたので、春日の後は追いかけず、近道を通ることにした。住宅街の間にある狭き道を歩き、その先にある地下道を進む。さすれば我が家だ。 

 俺は住宅街にある近道に走った。ここの角を曲がり、そのまま真っ直ぐいく。そうすれば狭い道が―


「がぅるるるる…」


「え…」


俺は立ち止まった。近道の先に女が倒れていた。真っ赤な長髪を持っており、見たところ白衣一枚しか身に纏っていない全裸であった。


「だ、大丈夫です!?」


 俺は女に駆け寄り、その体を表向きにした。そして、息を飲んだ。


「か、かわいい。」


 女はとてつもない美人であった。外見年齢は俺とさほども変わらなさそうで、ぷにっとしたピンクの唇に長い睫毛。どう見ても美少女である。恋愛に興味のない俺でも少し見とれてしまった。

   

「ん…」


 その時、女が目を覚ました。うわ、瞳がルビーみたいで無茶苦茶綺麗。


「あ、あの、大丈夫で―。うぉ!?」


 気付いたら俺の体は転がされ、女に馬乗りされ見つめられていた。



   ***



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