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プロローグ5 目覚め

「くそったれぇぇ!!!」


 化け物を全力で殴り続け、そのたびに殴りつけた箇所から虹色の光が煌めいていく。

 殴りつけた箇所から次第に体の色が緑色から薄い赤色に変化していく。

 感触は初めて殴った時から変わらない。スライムみたいな見た目だというのにしっかりと撃った衝撃があり、その反動がこちらの体力を奪いに来る。


「はっ…!くっ…!」


 小さな唸りが僕の口から零れる。

 そろそろ体力が切れてきた。

 当たり前と言えば当たり前。

 僕は今何がなんだか分からないまま、全力で化け物を殴り続けている。そしてゴールは見えない。

 この小さな女の子の体を動かすのは初めてで、限界も分からない。ここまで化け物に何もさせずに攻戦一方で戦い続けられていることを褒めてあげたい。

 元の僕の体は今の体より一回りも二回りも大きいがここまで戦い続けることは出来ない。


「くたばれぇ!!!」


 思いっきり体を殴り飛ばそうと右手を大きく後ろに引き、渾身の一撃を化け物に叩き込んだー


 と思いきや、僕の手は何も捉えることなく空を切った。


「!?」


 目の前には化け物がいるというのに。

 いや違う、化け物は僕の拳が通り抜ける場所だけを器用に凹ませていて。


 次の瞬間、僕の体は化け物の中に取り込まれてしまった。


 くそっくそっ


 ぬめぬめとした生温かい感触を体中で感じる。

 目なんて開けていられない。

 口に入ってこようとした物体をすんでのところで口を閉じることでカバーする。

 幸いそこまで息苦しくない。どうしてなのか、とそこまで考えは至らなかった。

 スカートや服やらがじっとりとした重さを持ち、手足は気持ち悪い物体に巻きつかれ絡め取られ、動かすことすら叶わない。

 手足が拘束されると今度は体を拘束しようと化け物の内部が蠢き始める。

 首、脇、胴体、股間ー

 とにかく気持ち悪い。

 おぞましい。

 ネットで見つけた女の子が触手に絡まれる画像を思い出す。見る度とてもドキドキしていたあの時の自分をぶん殴りたい。

 される側の気持ちになってみろ!!

 気持ち悪い!!

 こっちは必死なんだ!!

 無我夢中で拳を握りしめ腕を振り回そうとするが衝撃も反動もない。これは無意味なのか………。


 そこでふと一つ疑問を抱いた。

 そもそも僕はどうやってこの化け物にダメージを与えていた?

 おそらくは拳から発する虹色の光だろう。

 だけど今まで生きてきて体から光を発する経験はなかった。ありえないはなしだ。それはさすがに当たり前が過ぎる。

 衝撃から目が覚めてこの方、不思議なことが次々に起こっている。

 女の子になったというのが最大の驚きだけれども、こうやって化け物と対等に戦えているというのもおかしい話だ。


 そして虹色の光。

 この化け物にすらダメージを与えられる光はどうやって出るのか?

 青い彼女と光の柱からは同じ波動を感じた。

 僕の中にも何かあるんじゃないのか?

 この虹色の光を生み出す力が。

 自分の中に何かないか、意識を集中させようとして


「ぐあっ!!!」


 全身に与えられた激しい痛みに集中が途切れてしまう。

 まるで皮膚が溶けるような嫌な感触が体中を覆う。

 体中が痛くてもがくけれども四肢の拘束が緩まることはない。


 ヤバいヤバいヤバい


 これ以上ここにはいられない。

 一か八かでもう一度集中を試みる。

 絶え間なく全身から痛みのシグナルが発せられるがここは我慢するしかない。


 我慢出来る、我慢出来る、我慢出来るー


 体を動かすのを止め、とにかく自分の中へ潜っていく。


 あった。


 心臓が在る部分に光があった。


 波動を感じる。


 彼女とは違う波動。


 白く穢れなく煌々と輝く光。


 僕はその光を全身に行き渡らせるようにイメージしー


 全身から光を放ち、自爆した。

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