いつものベッドで
『藤宮くんおはよう
うちに入るためのマンションのパスワードは○○××
客間をそのまま使ってね』
『葵ちゃんおはよー!(*゜▽゜)ノ智絵里です!
これ私のRINEだよ!!
準備出来たら教えてね、環に迎えに行かせるから!』
女になって三日目の朝。
二日ぶりに自分のベッドで寝ていた僕は、朝早くからのRINE着信に起こされることになった。
時計を見るといつもならもう起きている時間だ。
昨日こそ竹宮さんより早く起きれたけど、あれは慣れない場所で枕が違ったからかもしれない。
今朝は僕以外はずっと慣れ親しんだ自分の部屋だったからこそ、寝過ぎたのかもしれない。
相変わらず胸にかかる二つの重さには慣れない。
タオルケットの中で体を横にすると下になった腕の上に胸がのしかかってくる。
顔には銀髪が流れ落ちてきてくすぐったい。
僕は手の中のスマホを見て、これからの予定を考える。
今の僕の外観は一目見たらウワサになるレベルの目立ちようだ。
僕だってこんな女の子見かけたら夕食時の話題にする。
うちは閑静な、というか田舎の住宅街で、ほとんどのご近所さんと顔見知りだから、こんなに目立つ子がいれば口を塞ぐことなんて出来ない。
立て板に水のようにあっという間に町内の話題になってしまうだろう。
だから、少なくともこの姿の僕の立ち位置が社会的に確立されるまでは、この姿で家の出入りはNG。
どうやって社会的に立ち位置を確立してくれるのかは分からないけど、西園寺家には何か策があるらしい。
昨晩は本当に助かった。
僕たちだけじゃ父さん母さんに信じてもらうことなんて出来なかっただろう。
感謝してもし足りない。
けど、どうして助けてくれるんだろう、という素朴な疑問だけは拭えない。
『クラスメートだから』助けるよ、とは西園寺さんの言葉だったけど、今まで特別仲が良かったことなんてない。
これから仲良くしていけるのかな。
そして竹宮さんの家にしばらく泊まる。
こちらに関しては一昨日があまりにも刺激的すぎて感覚がマヒしているのかもしれない。
多分大丈夫じゃないかな、と楽天的に考えられる。
それはもちろん竹宮さんとは魔法少女として共通の秘密があることも大きい。
竹宮さんはすごい。
あれだけ大量の魔法関連の本を全て読み込んでいた。
どのページにも書き込みがされていて、ノートは試行錯誤の跡が読み取れる。
だから一昨日の封鎖結界の失敗は本当に恥ずかしかったんだろうなと思う。
あれだけ勉強して努力して最初の一歩目でつまづいたのだから。
でも昨日はトドメをしっかり決めてくれた。
もっと色々魔法を竹宮さんに学びたいな。
竹宮さんは「まずこの参考書を読みなさい」って言いそうだけど。
「お兄ちゃんそろそろ起きないとダメだよー!!」
ベッドの中で色々考えていると、部屋のドアが勢いよく開いて制服姿の佳奈が大声とともに部屋に入り込んできた。
「ごめん、おはよう佳奈」
「あっ、葵ちゃんだった」
佳奈はもう僕が女の子になっていたことを忘れていたらしい。
僕もそうやって忘れて体が元に戻ればいいんだけど。
「もう起きるよ」
「ご飯冷めちゃうよー、んじゃ」
そう言ってくるりと僕に背を向けるとドアを開けたまま佳奈は階段を降りていった。
しばらくすると階下から「いってきまーす」と声が響いた。
僕もそろそろ朝の準備から始めるか。
ベッドから足を降ろすと僕は部屋を出て階段を降りていった。




