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リビングにて

 話もまとまり夜も更け、家の外に西園寺家の車(普通の高級車)が竹宮さんと小林さんを迎えに来た。


 ピンポーン


 母さんが玄関に行きドアを開けると、そこには西園寺さんの執事である中島さんが立っていた。


「はじめまして。私西園寺智絵里様の執事、中島と申します。

 そしてこちらが主である西園寺智絵里様です」


「お初にお目にかかります。私西園寺智絵里と申します。この度は藤宮くんのことで協力させていただきます。どうぞよろしくお願いいたしますね」


「あ、あらあら。私葵の母でございます。どうぞ家の息子をよろしくお願いいたします」


 中島さんが西園寺さんを紹介し、西園寺さんと母さんが自己紹介を行う。

 環さんは姿が見えない。おそらく運転席に座っているのだろう。


「それではまた明日の夜にお伺いしますね」


「葵ちゃん、今日はごゆっくりね」


 小林さんと竹宮さんが玄関で靴を履き終わると、僕たち藤宮家は家族総出で二人を見送る。


「小林先生よろしくお願いします。竹宮さん、葵がお邪魔しますがビシバシ躾けて下さい」


 父さんも竹宮さんに免罪符を与えてしまう。

 今夜は夜通し封鎖結界の練習だ!


「……お手柔らかにお願いします」


 形ばかりのお辞儀を竹宮さんにする。


「お見送りは不要です。それでは失礼いたします」


 西園寺さんがそう言って家から去っていく。

 誰もいなくなった玄関の鍵をかけていると、車のエンジン音が遠ざかっていった。





「葵、話をしようか」


 家族だけとなった藤宮家のリビング。

 佳奈はお風呂に行ったので、ここには両親と僕の三人しかいない。

 いつもの席から父さんが話しかけてきた。


「うん」


 僕は居住まいを正す。


「葵、大変だったな。昨日家に帰れなくてすまない」


 そう言って父さんと母さんが僕に頭を下げる。


「何言ってるの。二人が働いてくれているおかげで僕と佳奈を育ててもらっているのに」


 二人が共働きしているのは僕と佳奈を育てるためだ。

 それが分かっていて、誰にもどうすることも出来ない女の子化の話なんてしない。

 そもそも問題は女の子化だけではなく、魔法少女になったこともあるのだ。

 この二つの問題を相談出来るのは竹宮さんしかいなかったし、いない。


「お前がどんな姿になっても私たちの子供だからな。万が一、男に戻れなかったとしてもそれは変わらない。それだけは覚えておいてくれ」


「そうよ。だから思いつめる必要もないわ。もちろん甘やかす気もないからしっかりなさい」


 父さんと母さんがそう声をかけてくれる。


「ありがとう」


 僕は両親に頭を下げた。

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