閑話休題ー食事のあとでー
全然書けてません
「藤宮さん頭を上げて下さい。…お互い協力していきましょう」
小林さんがそう言って頭を上げた父さんと手を取る。
「小林さんよろしくお願いします。父さん母さんありがとう」
僕はそう言って頭を下げた。
「良かった良かった!さ、ご飯食べよう!」
佳奈が陽気な声で鬱屈した空気を吹き飛ばす。
その後僕たちはいつもより少しだけ静かな食卓を囲んだ。
「はいお嬢様、お話は良い方向でまとまりました」
食後、母さんが食器を洗っている間(僕は料理を作ったのでいいと断られた)フラフラしていると、廊下から小林さんの声が聞こえてきた。
お嬢様と言っているから電話中で、相手は西園寺さんだろう。
「葵ちゃん」
電話を終えたらしい小林さんが僕に気付いて声をかけてくる。
「お料理美味しかったですよ」
そう笑いかけてくる。
「お口にあって良かったです」
僕は直接褒められて少し照れてしまう。
普段学校に持って行く弁当ですら、友人たちに僕の手作りだとはあかしていない。
普通に考えれば母親が作ったと考えるだろう。
精々肉が多くていいな、くらいだ。
「何こんなところで話してるの?」
普段皿洗い担当の佳奈が廊下の突き当たりの角のトイレから出てきた。
「葵ちゃんの料理が美味しいって話です」
「あー」
佳奈は納得したように頷く。
「朝ご飯と私たちのお弁当も葵ちゃんが作ってるんですよ」
「ほぼ毎食じゃないですか!」
佳奈の言葉に小林さんが驚く。
「テスト前や受験前、母さんが休みの日は作ってくれるので」
「良いお嫁さんに……あ!ごめんなさい!」
小林さんは無意識に女の子を褒めるように言葉を紡いで、相手が僕だということに気付いて慌てて謝った。
「いえいえ、いいんですよ」
女の子になってまだまだ一日。
自分にとって声こそ違えど、意識しなければ変声器やマイクを通した声に慣れてしまうように、違和感もあまりなく慣れてしまう。
視線の低さや腰の低さ(腰こそ低いけど足は長い……)はまだまだ慣れないけど、他人から見れば普通の女の子だろう。
間違えるのは当然だろう。




