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女の子は可愛いものが好き

 智絵里のお父さんは脳外科医だ。

 さすがに性転換について詳しいわけではないと思うけど(世界中にもいないと思う)、憶測だけで話をするよりかはずっといい。


 私たちのような子供だけで葵ちゃんのご両親にお話してもなかなか信じてもらえないだろう。

 もし力添えいただければとてもありがたいと思う。


 ただ、凄腕の先生でとても忙しくろくに顔を合わせていないと智絵里がよく愚痴を言っている。


 葵ちゃんのご両親は今夜家に帰っていらっしゃるとのことなので、今からでは間に合わないだろう。

 そのことを智絵里に話してみると


「確かに難しいかも~?でも試すだけ試してみるよ~」


 スマホを取り出すと、するすると手慣れた手つきで操作すると、スマホを中央のテーブル(この車には座席と座席の間にテーブルがある!)に置いた。


「これで出来ることはやったよ~。これからはどうするの~?」


 智絵里が考えをまとめるように言う。


「佳奈ちゃんと~みんなで葵ちゃんの~ご両親の説得方法を考えて~、夜お話だっけ?」


 こてっ、と首を横に傾げて私に聞く智絵里。

 ……まあ本来葵ちゃんの話ではあるけど、葵ちゃんに確認はすれど提案は聞かないのはバカにしてるわけじゃなく、単純に愛でる対象なんだろうなぁ。

 ……おや、なんでだろう、智絵里の気持ちが分かる気がする。


 葵ちゃんは魔法少女としての決断と判断はスゴいけど、女の子としてはどうしてか弱々しい気がする。


 佳奈ちゃんに対してはお兄ちゃんとして振る舞ってた。

 私に対しては女の子初心者って感じでずっと弱かった……そうか。


 普段から暴力的でもなく優しい気弱な男の子だったから、女の子になって分からないことだらけで萎縮してしまっているのか。

 分からないからますます気弱になる。

 可愛くなる。


 魔法少女に変身しているときは、男女性別関係なく敵と戦うから意識してないのでは。

 今のところ魔法に関しては天賦の才を発揮している。

 戦えるから自信がつく。


 やっぱり自信を持つって大事。

 早く葵ちゃんにも女の子としての自信を持ってもらわないと。

 すごく可愛いんだって!


「その前に葵ちゃんの洋服買いに行く予定よ」


 智絵里の質問に答えると智絵里は「わぁ!」と大喜びした。

 さりげなく長島さんも頷いている。

 ……コンビニで買った間に合わせの服なのであまりいじめないで欲しい。


「だったら~佳奈ちゃんも呼んでぇ、葵ちゃんのお洋服を買いに行かない~?」


「それなら相談も出来るし葵ちゃんのお洋服も買えるし一石二鳥にゃあ!」


 環さんが「いえーい!」と右腕を上げピースする。

 環さんは自由奔放だなあ……そう思っていると、智絵里が


「環、葵ちゃんの家に向かいましょ~」


「イエスマム!」


 私が口をはさむ間もなく、目的地と目的が決まってしまった。


「ちょ、ちょっと智絵里!?」


「善は急げだよ~、桃華ちゃん」


 智絵里はこう見えて頑固だ。暴走することもある。


「葵ちゃんに可愛い服買ってあげるよ!」


 興奮する智絵里を見て私は内心ため息をつき、葵ちゃんを守る決意を固めた。




 oooooooooo




 西園寺さんがとびきりの笑顔で僕に笑いかけている。

 すごく可愛らしくてドキドキするけど、その内容がいただけない。


 この外見にメロメロな人がまた増えた……。

 自分ですらこの外見にはドキドキする。でもそれは元男子だからだとも思っていた。


 だから竹宮さんの反応には驚いたし焦ってしまってた。

 でも竹宮さんは可愛い女の子が好きなんだろうなと割り切って考えていた。


 だから西園寺さんが怖い。

 増えたよ?

 この外見にメロメロな人が。


 さらに佳奈も来ると言う。

 これはもう女の子特有の着せ替え大会が始まるに違いない。

 憂鬱だ……。

 でも誰も悪気がないのがまた、つらい。

 そこまで頑張られると、逆にうちの親に自分を説明するのが難しくなりそうだ。


 魔法の勉強、楽しかったな……。

 だから僕は現実逃避を図ったのだった。

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