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絆創膏

智絵里の乗った車が見えなくなるまで手を振ったあと、私はエレベーターホールに向かい、RINEを開いた。


『智絵里家に上がらないで帰っちゃったから出掛ける準備しましょ』


『うん』


返信はすぐに届いた。

エレベーターもスマホをしまってすぐに到着したので、少し気分が良かった。



ピンポーン

少しウキウキしながら、普段鳴らすことのないチャイムを鳴らしてみる。


「はーい」


電子音に変換されても可愛い声がドアチャイムから響き、そっと耳をすませば、とたとたと軽い足音が家の中から聞こえてくる。

そして。


「おかえり、竹宮さん」


「ただいま葵ちゃん」


ドアノブに手をかけて笑顔で私を見上げる葵ちゃん。

その顔はやっぱり可愛かった。

先ほど別れたばかりなのに私にはもう葵ちゃん分が不足していた。

「まあ家に帰れば葵ちゃんがいるしな」

金言である。

そしてぱっと全身を見る限り、傷もなかった。

回復魔法まで習得したのね…。


「回復魔法はどうだった?」


家に上がりローファーを脱ぎながら葵ちゃんに聞いてみる。

葵ちゃんは廊下の左側にある客間に半ば体をずらし、私が通れるように空間を空ける。

男の子のときのクセなんだろう。今の体なら全然通れちゃうのにね。


「やっぱり時間かかるね……。壊すじゃなくて治すだからかな」


さらっと言ってくれた。

魔法少女委員会の中でも私は物覚え悪いみたいだけど、葵ちゃんすごいなぁ。



葵ちゃんはすでにクリーム色の寝間着から白の丸襟シャツとデニムのショーパンに着替えていた。

が。

ブラ買う時間がなかったとはいえ、これは……。

私は廊下を挟んで反対側の洗面所に葵ちゃんを連れていった。そして洗面台の鏡に葵ちゃんの体を正面に向ける。


「葵ちゃん、これどう思う?」


そう言って私は葵ちゃんのシャツを胸元に押し当てる。

当然シャツの布地は胸の形を浮き彫りにしてー


「あっ」


「これはさすがに恥ずかしいよね……」


ふくらみの頂点で小さいながらも存在を主張する突起物。

これを目立たなくしないと。


「これで良いかな?葵ちゃんこういうの好きでしょ?」


私は絆創膏の箱を持ってくると、葵ちゃんに手渡した。


「私も着替えるからその間に準備してね」




oooooooooo




僕は手渡された絆創膏の箱を受け取った状態のまま、固まってしまっていた。

分かる、分かるんだけど、女子に理解されてるのと、自分にするというのは、すぐには頭に入ってこない。

それでもしないと。

このままだとまた昨晩のように竹宮さんにいいようにされてしまう。


シャツを着たままだとやりにくい。僕は意を決してシャツを脱いだ。

当然鏡に女の子の上半身が映し出された。

僕は極力意識しないように絆創膏を取り出し、片側のシールをはがすと、鏡を見ながらふくらみの頂点に当てようとする。


「ふぅ……ふぅ……」


ゆっくりと頂点にガーゼ部分をあてる。

そしてテープ部分を貼るため、撫でるようにテープ部分を胸に押し付ける。

そしてもう片方のシールもはがそうとするとき、つい下を見てしまった。

柔らかい二つのふくらみが僕の視界の下半分を妨げている。

その片方の頂点に絆創膏が半分貼られ片側が浮いている。

僕は無性に恥ずかしくなって慌ててシールをはがし、テープ部分を乱暴に撫でつけた。


そして顔を上げると、そこには真っ赤な顔をした女の子が僕を見つめていた。

片方には絆創膏を貼り、もう片方は見えちゃっている。


「……」


そのあともう片方もなんとかやり終えた。

シャツを着る前にもう一度鏡を見たが、えっちな女の子にしか僕には見えなかった。

見るだけの側だった男の自分と、見られる側になった女の自分。

自分の中でその二つが渦巻いて気を失いそうになったので、なんとかシャツを着て僕はその場に座り込んだ。


この気持ち……つらいな。


竹宮さんが洗面所をノックするまで、僕はその場に座り込んでいた。

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