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初めてのお風呂3

もう少し続きます

 湯船で僕がのんびりしていたのは10分くらいだったろうか。

 洗面所からは水音が時々聞こえていた。

 その水音すら気持ち良くて僕は目を閉じて浴槽の縁に頭を置き心底寛いでいた。

 だから


「お待たせ葵ちゃん」


 と言ってバスタオルを体に巻いた竹宮さんが僕の下の名前を呼びながら入って来たときも、一緒のお風呂に入るのに今まで通りの『藤宮くん』だと色々意識するんだろうなぁ、とのほほんと考えスルーした。


「髪洗ってあげるから上がって?」


 と言われて目を開け顔を上げ、竹宮さんがバスチェアを準備しながらバスタオルをはだけたのも、濡れたら困るから取るんだろうなぁ、と視界いっぱいに広がる肌色を見てスルー……出来なかった。


「ちょ、ちょっと竹宮さん!」


 僕はバシャバシャと慌てて竹宮さんに背を向け目を瞑る。


「どうしたの?」


「バスタオルつけるって話はどこへ!?」


「入るときはバスタオル巻いてたよ?」


「そう言う言葉遊びでなく!」


「もー私もゆっくりお風呂に入らせてよー」


 そう言われると弱い。

 ここは竹宮さんの家だ。

 彼女も今日が初めての戦闘で、そのあとも僕を色々助けてくれた。

 多少竹宮さんの言うことを聞くのもいいんじゃないか?

 それに彼女は僕の髪を洗ってくれると言う。

 女の子の髪の洗い方なんて全然知らない。

 今日覚えて明日からは別々に入ればいいんだ。

 そう自分に言い聞かせる。


「分かったよ竹宮さん」


 なるべく見ないように湯船から上がったが、ちらりと視界に竹宮さんの足の付け根が視界の端に映りこんでしまった。見たんじゃない、見えてしまったのだ。


 黒。


 さすがに同級生の裸をここまで見てしまうというのは普通ではない。確かに今の僕の状態は普通と言う言葉では説明出来ないけれども。

 内心あわあわと狼狽えながらも冷静にバスチェアに腰掛けた。


 あれ?


 ふと自分の体に違和感を覚え、下を見る。

 胸も気にはなるが後回しだ、足の付け根を見る。


 何もなかった。

 いつもぶらんと所在なげに佇んでいた相棒の姿はそこにはなかった。


「タオル取るね」


 竹宮さんが僕の頭のタオルを取ると髪が重力に従って落ちていく。

 長い髪が顔を擦ってくすぐったいがそれどころではない。


 これがつるんぺたんか…


「まずはブラシを髪の先からかけていきます」


 スッスッと竹宮さんが慣れた手付きでブラシを使って髪を梳いていく。

 少しずつブラシが上に上がってくるがひっかかることもなく頭頂部までブラシがかかる。


 いや、ぺたんじゃないから、つるつる…か


「シャワーかけるよ」


 シャワーから頭にお湯がかかる。

 それでようやく意識が現実に戻ってくる。

 あまりにもむちゃくちゃな体は僕には刺激が強すぎたらしい。

 竹宮さんの話を聞いて自分だけで入れるようにならないと。


 むにゅ


 ?


 竹宮さんがシャワーを僕の髪全体にかけようと手を動かすと、時折背中に時々柔らかいものが当たることに気づいた。


 これは……竹宮さんのお、おっ……


「ちゃんと髪全体にたっぷりお湯を行き渡らせてね」


 竹宮さんは「ちょっとごめんね」と言って僕に抱きつくくらい体を密着させると左手でシャワーヘッドを壁にかけ、そのままたくさんのボトルが置いてある中から一本を取り出した。

 が、僕はそれどころではなかった。


 柔らかい。

 特にむにゅりと存在感を感じさせる大きな二つの


「シャンプーは掌で軽く泡立たせて髪全体につけます」


 竹宮さんの体が離れていき、掌で優しくシャンプーを髪につけていく。


 ダメだ、竹宮さんの話が全然頭に入ってこない!

 見えない背中からの刺激なので自然と敏感になってしまう。

 冷静に、冷静にー


 むにゅん


 ふにゅん


「洗うときは髪同士を擦らないように、爪を立てずに指の腹でね」


 竹宮さんの髪の洗い方はとても気持ち良かった。


「葵ちゃん、どこかかゆいところはございませんか?」


「左耳の後ろかな」


 こしこしこし


「どう?」


「気持ち良いよー」


「そうでしょうそうでしょう。修学旅行で私の洗髪は皆に好評だったんだから」


 竹宮さんが鼻歌でも歌い出しそうなくらい、楽しく僕の髪を洗っている。

 こんなに献身的に僕のために尽くしてくれているのに、当の僕はえっちなことばかり考えているなんて……!


 幸いだったのは相棒が消えたことでえっちなことを考えていてもバレないことか。



 そのあとは何も考えずただ竹宮さんに洗われるがままになっていった。

 最初から話を聞いていても僕では一日ではとても理解出来ないであろうことも分かった。

 男だったときは使うのはシャンプーとトリートメントくらいでがしごし洗って五分もかからずに終わっていた。


「はい終わりー」


 竹宮さんがそう言ってすすぎ終わった僕の髪をまたタオルでまとめていく。


「女の子は大変だね……」


 なのでどうしても感想はこうなってしまう。


「長いとどうしてもね。でもせっかくこんな綺麗な銀髪なんだからちゃんとお手入れしないとね」


「竹宮さんありがとう」


 そう言って立ち上がろうとした僕の肩を竹宮さんは押さえてバスチェアに再び座らせた。


「え?」


「やだなぁ、体も洗わないとね?」


 そう言って竹宮さんが僕の肩に顎を乗せささやく。


「しっかり丁寧に洗おうね?」


 竹宮さんの顔は見えなかったがなんとなく蠱惑的な表情を浮かべていたに違いない。


 僕の心臓はまだ持ってくれるだろうか。

次でお風呂編完!

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