初めてのお風呂2
これから毎日18時に定期更新出来るようにしていきます。
やはりというかなんというか、洗面所も広かった。
着ているのは竹宮さんに借りたTシャツとコンビニで買ってすぐ履いたパンツ(猫さん)だけだ。すぐに全裸になる。
竹宮さんの洗濯カゴに自分の洗濯物を一緒に入れていいのか一瞬迷うが、すぐにアホらしいと考えてぽいと放り込んだ。
ふと振り返ると大きな洗面台が据えられており、そこの鏡に写った銀髪の美少女にしばらく目を奪われた。
「おお……」
背が低いためか胸元は見えない。そのためいやらしさよりも芸術的な美しさを感じてしまう。
自分が手を振ると鏡の中の美少女も手を振ってくる。
よく考えなくてもこれは僕の今の外観だ。
何この美少女?
現実に存在するの?
ゲームのキャラクターメイクでもここまで出来ないよね?
長い銀髪がサラサラと揺れる。
温和な顔立ち。優しげな眉。整った目鼻立ち。唇はぷっくりとしている。
パッチリと開いた目は右目が茶色、左目が青色。
これはレアキャラすぎる……。
「こういう瞳はなんて言うんだっけか。んーと」
「オッドアイね」
鏡の前で自己陶酔と問答をしていた僕の後ろに、いつの間に入ってきたのか竹宮さんが胸元に衣類を抱えて立っていた。
「そうそう、それだ!」
合点が行って竹宮さんに向き直る。
そんな僕を見て竹宮さんは僕の全身を見て深く頷いた。
「藤宮くん、ようやく自分の美少女ぶりを理解出来たみたいね」
「あはは……」
竹宮さんの指摘に返す言葉がない。
僕は右手で胸を、左手で股間を覆い、マンガやアニメで見るような裸の女性が自身の裸体を隠すポーズを取った。上手く隠せているだろうか。
先ほどまでの竹宮さんの怪しい雰囲気に何やら不穏な空気を感じていたが、当然だろう、この美少女ぶりは男女関係なさそうな気がする。
「セクシーポーズ取ってないで早くお風呂入って欲しいんだけど。私脱げないじゃない」
「ごめんなさいっ」
僕は慌てて浴室に逃げ込みガラス戸を閉めた。
浴室の中は乳白色で統一されていた。
出窓にはルーパー窓。七階建ての最上階ともなると覗かれる心配は皆無だろう。
湯船にはオレンジ色のお湯がすでに張られており、暖かそうな湯気とゆずの匂いが僕を誘う。
アクリル製っぽいバスチェアと同じシリーズであろう洗面器が隅に置かれている。
シャワーの横には棚があり、たくさんのボトルが並べられている。家の浴室に置かれているよりも多い。
佳奈もあれでお洒落だと思っていたが、高校生ともなるとさらにアイテムが増えていくのか。
「ととっ、かけ湯しないと。竹宮さん?」
家のとはタイプが異なるのでシャワーの使い方が分からない。ここは住居人に素直に聞くべきだろう。
洗面所にいるはずの竹宮さんを呼ぶ。
「なに?」
浴室の向こう、磨りガラスの向こうから竹宮さんの声が聞こえる。
「シャワーの使い方が分からなくて」
「あー、人の家だとそうだよねー」
そう言って上半身にブラジャーを着けただけの格好で竹宮さんが浴室に入ってきたので慌てて下を向いて目をつぶる。やっぱり大きい。
竹宮さんはカラカラと音を立てると僕をゆっくりと座らせた。
「ちょっと待ってね、髪はこう……よし」
目をつぶったまま、竹宮さんが背後に回った感覚が伝わる。
僕の髪をたくし上げるとタオルでまとめていく。
「お湯出すよー、はーいお姫様、お湯加減は如何ですかー?」
楽しそうな声で竹宮さんが僕の体にお湯をゆっくりかけ、軽く手で撫でてくれる。
その手心地が気持ち良くてつい
「満足ですわー」
と悪ノリしてしまった。
竹宮さんはクスクスと笑いながら
「ゆっくり寛いでね」
と言って浴室のガラス戸を開閉し洗面所に戻っていく音が聞こえた。
そっと目を開けると僕はシャワーの鏡の前に座っていた。
髪は軽くまとめられていて、これなら湯船に浸かっても問題ないようだった。
「はふぅ」
ゆっくりと湯船に肩まで浸かると自然と息が漏れた。
体を存分に伸ばす。
小さい体が素晴らしいと感じたのは初めてじゃなかろうか。
湯船の中で手足を伸ばして余りある。
実家では手足を伸ばして湯船に浸かるには体が成長してもう出来ない。
精神的疲労がゆっくりと解きほぐされていくようだった。




