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グランセルネールの遺産  作者: 佐田祐美子
酷似の仮面
8/22

オマケ。早起きの得



 リーンは朝五時に目を覚ます。


 二度寝なんてもってのほか。ぱちんと目を開けたら、レオンを起こさないようにベッドから這い出す。リーンのベッドがない訳ではないが、貧乏暮らしで燃料をケチり、家族でくっついて寝ていた生活が長かったために一人で眠れなくなってしまった。


(そういえば、初日にレオンが悲鳴上げてたっけ)


 寮暮らしの初日のことである。どうしても一人で眠れなかったリーンは、レオンが熟睡しているのをいいことに、こっそり隣に潜り込んだ。翌日、先に起きたレオンが驚いてベッドから落ちた。その後リーンはめちゃくちゃ怒られた。


(懐かしいなぁ)


 小さく笑いながら身支度を整える。部屋を出て食堂に出向き、コックに食材を分けてもらう。貴族が幅をきかせる食堂は、元平民のレオンにとって針のむしろ。なのでリーンはいつもこうして食材だけもらって部屋で調理する。

 そんなリーンの姿を見て真似する人が増え、時々同期に出くわしては「お前今日もちっさいな」と失礼な挨拶をされたりもする。


(あ、そろそろかな)


 朝食が完成する六時頃、レオンがもぞもぞと目を覚ます。リーンはこの瞬間が一番好きだ。


「おはよう、レオン。ご飯もうできるよ」


「んー……」


『雷帝』などと呼ばれているレオンだが、非常に朝が弱い。半身を起こしたものの、そこから全く動かずうつらうつらしている。


「ほら、しゃきっとして。うわあ寝癖すごいな」


 手櫛で梳いてやると、手を掴まれる。


「ちっちゃい……」


「そりゃあ、きみに比べたらね」


 鼻先に持ってかれてすんっと匂いを嗅がれた。


「いい匂い……」


「さっきパンを切ったせいかな? きっと小麦の匂いだね」


「可愛い……」


「えへへ、ありがとう」


 どうやら寝ぼけている間は、思ったことを口にするかどうか一度咀嚼する機能が低下しているようで、しょっちゅう口説かれる。しかししばらくすれば意識がしっかりしてくるので、その後自己嫌悪に陥りうだうだするまでがセットだ。


「………? っ!!!???」


 ぱっと手を離して布団を被る。自己嫌悪に入ったらしい。大きい卵みたいだ。リーンはコンコンとノックする。


「ほら、今日は七賢議会があるんでしょ。早く朝御飯食べてよ。レオンはお腹が空くと機嫌が悪くなるの、自分で気づいてる?」


「……はい」


 小さな返事がして、卵が孵る。目を合わせて微笑んだ。


「それじゃ、今日もよろしくね。レオン」






お疲れ様です。

この作品を書いていた当時は、まだ書くのが楽しかったのだと改めて思いました。また気が向いたら書きます。

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