終わった世界と世界を繋ぐトンネル
カムラスに連れられてカムラスのいた世界へとこの白い部屋ごと転移した。そして白い壁や床が透明になり、辺りを見渡せるようになった。
そこに広がっていたのは、僕の想像を超えた光景だった。まず大地が無かった。どこまでも広がる真っ黒な光景に、黄色く光る電子粒子が漂っていた。その電子粒子の明かりに照らされている、謎の浮遊物がゆっくりと移動していた。
「あの漂ってる物体がバグノイザーさ。まあ、雑魚中の雑魚、例えるならその辺を飛んでる小蝿の糞程度のレベルさ。バグノイザーの大群はもうこの世界を喰い尽くしたから別の世界へと、そう、君たちの世界に向かっているんだ」
「いったいどのくらいで僕たちの世界にやってくるんだい?」
1人の少年がカムラスに質問した。
「君は確か天宮透だったね。そうだね、大体1年かそれよりもっと速いかぐらいだね。奴らは別の世界へと瞬時に転移する能力は持っていないから、世界と世界の繋ぎ目にあるトンネルワールドを通ってくるんだ。君たちの世界に近づけば近づくほど君たちの世界にも何らかの形で変化が起こる。君たち選ばれた人間、特異点と呼ばせてもらうよ。特異点はその変化に敏感なんだ。ノイズが聞こえたのもそのせいなんだ。他にも変化に敏感なのは電子機器だね。奴らは電子機器のある世界に引き寄せられる傾向があるんだ」
「言われてみれば、最近携帯の調子が悪かったね。それが原因か、なるほどねー」
天宮透という少年は納得した素振りをしながら言った。
僕はこの天宮透の雰囲気に違和感を覚えていた。どこか余裕を持った態度で、この世界の有り様を見た時の反応もそれほど驚いていなかった。
そういえば、もう1人、他の人とは違う反応をしていた少年がいたな。確か、浅井勇人とか言う名前だったはず。彼の驚き方は、サプライズプレゼントを受け取ったときのような、わくわくした様な驚き方だったな。非日常にでも憧れているのか?まあ色んな人間がいるもんだ。
「さて、じゃあ次は奴らの通り道であるトンネルワールドへと転移するよ」
「え、もう戦うんですか?」
僕はそう言うとこくりとうなずいた。
「まあ戦うと言っても最初だし雑魚からだけどね。まだ一度も変身してないしね」
そう会話している内にトンネルワールドに転移したらしい。僕たちは部屋から出るとそこにはおとぎ話に出てきそうな幻想的な空間が広がっていた。ピンク色の空に謎の植物、物理的にあり得ない建築物。不思議の国のアリスとかが好きそうな人にはたまらない独特の雰囲気だ。
「おや、もう来たみたいだね」
カムラスが指をさした方向を見るとそこにはとても生物とは思えない、黒いうねうねと動くピクセル状の身体に赤く光る瞳をした物体がこちらを見つめている。
「初戦闘だね。どんな変身姿になるか楽しみだね」
まだ僕らが世界を救う役割を担うという実感が持てないまま、バグノイザーとの初戦闘を迎えるのであった。