今更なお話
訓練初日。オルレオ達はモニカの伝手で、衛兵隊との合同訓練を行っていた。
午前中は新兵に混ざっての基本訓練で、午後はベテラン隊員たちとの模擬戦の予定だ。
午前中の基本訓練ではオルレオ、モニカ、ニーナは新隊員と一緒に三人一組の行動方法について一通りの説明を受けて、実際に三人で入れ替わり立ち代わりで体勢を取ってみたり陣形を作ってみたりとやっていた。
午前の終わり、訓練教官から、
『三人一組では単純な前衛や後衛といった立ち位置だけでなく、自分たちの役割を明確化して行動をしなければならない』
『役割は戦闘中だけでなく、移動時や索敵中、攻勢を仕掛けるときや防衛を強いられたときで千差万別である』
『各々が出来ることと出来ないことをしっかりと照らし合わせてこれから精進していくように』
と言われ、オルレオ達は衛兵隊の新兵たちと同じようにパーティーメンバーと車座になって話し合うことになった。
「まあ、オルレオは盾持ってて片手剣使うってだけだからいいとして……」
その初っ端にモニカが言った言葉で、オルレオはあっという間に言うことがなくなってしまった。
「それはそうなんだけど、それを言ったらモニカは両手剣持って突撃するだけってことになるわけか?」
オルレオが聞き返したところで、モニカは軽く手を振った。
「それだけなわけねーだろ? 今まで何を見てきたんだよ?」
と鼻で嗤うように言ってのけた。
「今までの貴女の行動そのままじゃないですか」
が、しかし、そこにニーナがするどくつっこみを入れたことで「うっ……」とモニカは言葉に詰まり、オルレオが胸を張った。
「いやいやいや、それ以外にもあったろ? こう風を纏って一気に距離を詰めたり、風の力で敵勢をぶっ飛ばしたり、竜巻操ったりとかほら、色々!!」
「風の力で敵勢をなぎ倒したりしていたのはわかってたけど、風を身に纏ったりもできるんだ……」
感心したようなオルレオの言葉に、モニカは、ほっ、と安堵したように息を吐いた。
「おう、アタシの魔法は“風を操る”ことだからな! 風を身に纏って速度を上げたり、風を剣に纏わせて切れ味を上げたりだってしてたんだぜ?」
言って、モニカは胸を張った。「どうだ、すごいだろう」と言わんばかりに誇らしげな顔をしているモニカに、オルレオは素直に拍手をして応えた。
余程うれしかったのか、むふん、と鼻息を荒くしたモニカのその横で、今度はニーナが胸に手を当てて話し始める。
「次に私ですね……出来ることと言えば、弓と魔法、特に植物に関する魔法を得意としています。あとは、目が良いことと森の中で獲物を追う技術もソコソコ身に着けています」
そこまでを聞いて、オルレオはおや、と首を傾げた。
「植物に関する魔法が得意ってことは、他の魔法なんかも使えるわけか?」
「ええ。ですが、矢が尽きた時に魔力を撃ちだすような魔法が精々です。他の系統も少しかじってはいますが、効率も悪いですし、使うつもりはありません」
ニーナの返答にオルレオはまたも拍手で応じた。
「そういえば、モニカも風を操る以外のことが出来るか?」
と、オルレオが思い付きを口にしたところ、モニカは笑顔で。
「無理」
バッサリと言い切った。
「人間向き不向きがありまして……モニカは風には抜群の相性を示していたのですが他はまったくで、私も植物との相性が良いほうで他はあまり、といったところなのです」
そこをニーナがフォローして、オルレオはようやく納得した。
「よし! それじゃあ、今更だったけどお互いの情報はわかっただろうし、午後の模擬戦に備えて役割分担といこうぜ!」
パンッ、とモニカが手を叩いて話題を変える。本題はここからだ。