表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LP学園野球部のキセキ  作者: 砂糖
6/18

大会新記録

俺はLP学園の部員たちと一緒に、甲子園で高校野球の大会を観戦していた。部員たちに甲子園の雰囲気を味わせて、モチベーションを上げさせようとした。


初めて野球を生で観る部員もいたし、みんな楽しそうだ。いつの日か、俺たちもこの舞台に立てるだろうか。


さて、俺たちが見ている試合で大会注目のスラッガーがいる。中田奨樹という選手だ。この選手は、今大会で既に4本のホームランを放っており、一大会で5本の大会記録に迫っている。


中田選手は、キャッチャーとしても鉄砲肩として名を馳せている。ウチのキャッチャー古屋が熱視線を送っている。


この試合でも、中田選手は盗塁を刺していた。噂通りの鬼肩だな。


打順では4番に入っている。第一打席でいきなり魅せた!


細身だが、シャープなバットスイングだ。元プロ野球選手の俺から見ても、良いバッターだな。

カッキーン、金属バットの快音が聞こえた。


高々と舞い上がった打球は、浜風にも乗ってレフトスタンドに飛び込んだ! これで今大会5本目のホームランで、大会記録に並んだ。甲子園の観客は大喜びだ。


ウチの4番候補の山本も驚いている。山本は体重90キロの巨漢で、チームNo. 1の飛距離を持っている。

「監督、あんなに細い選手が打てるなら僕にもホームラン打てますよね!」

この長距離砲は、チームNo. 1のポジティブ思考であり気分屋でもある。


俺は、この気分屋にも警鐘を鳴らした。

「今のお前だったら、甲子園で外野フライも打てないぞ。力任せに打ってもボールは飛ばないんだ。しっかり下半身を使って、体の回転でボールを飛ばすんだ。中田奨樹選手の形をよく見ておけよ」


高校生だから仕方ないが、表面的な部分ばかりに目が向いている。まだまだこれからだな。


試合は、9回裏同点で中田選手に回ってきた。観客は、サヨナラホームランによる大会記録更新を期待している。


野球小説のような展開は、まさか起こらないだろう。中田選手の2打席目と3打席目は連続三振だった。俺がピッチャーだったら、ストレートで追い込んでフォークで打ち取る。

ウチのエース候補山川に聞いてみた。

「お前ならどうやって仕留める?」


山川は少し考えて、

「僕なら変化球、特にカーブを使います。ストレートは見せ球にします」


ほぅ、その意図を聞きたい。


「中田選手は1打席目でホームランを打ってから、大振りになって2打席目と3打席目は三振しています。9回だし、大会6本目のホームランで記録更新とサヨナラの両方を狙っていると思います」


「だから、ストレートは危険だと思います。カーブでタイミングを外します」


俺とは違う考えだな。正解はどっちだろうか?


ピッチャーが投げたボールの軌道を見た。変化球、カーブだな。


中田選手のタイミングはドンピシャだった。中田選手は、冷静に配球を読んでいた。打った瞬間、それと分かる打球がバックスクリーンに飛び込んだ! 6本目で大会新記録であり、この試合のサヨナラホームランになった!


甲子園は興奮に包まれている。ウチの部員たちも大きな声を出している。


「監督、カーブでしたね。僕が投げても打たれていましたね」

山川は少しガックリしていた。


「そうでもないさ。打たれたり、抑えたりっていうのは結果に過ぎない。今は結果よりも、しっかり考えてバッターに向かう事が重要だ。その上で、腕を振って投げたら結果は後からついてくるさ。お前が言ったカーブ勝負は必ずしも間違いとは限らないさ」


「はい、勉強になります!」

山川は、大きく頷いた。


俺は、ウチの小さなエースが楽しみになった。コイツならきっと、LP学園の背番号1が似合う男になってくれるだろう。


甲子園での観戦は有意義だった。みんな収穫を持って帰れそうだ。しかし、帰り道でちょっとした事件が起こった。


甲子園を出て、国道43号線の高架の下を歩いていると、あるオジサンから声を掛けられた。


「君たちは、まさかLP学園の生徒なのか? 野球部は無くなったんじゃないのか?」

オジサンは、部員が持っていたLP学園と書かれたバッグを見たんだ。オジサンは、かなり酔っ払っているようだ。俺たちはイヤな予感がしたので、軽く会釈して立ち去ろうした。


しかし、オジサンは大声で、

「天下のLP学園野球部じゃないか! サインくれよ」


LP学園の監督になって苦労する事の一つがこれだ。昔の黄金時代を知る人に時々からかわれる。オジサンが大声でLP学園と言ったのて、周りの人たちも俺たちに注目している。


面倒だなぁ。オジサンに俺の巨人時代のサインでも渡して、適当に帰ってもらおう。そう思ってペンを取り出そうとしたが、ますます人が集まってきた。今でもLP学園の人気は、潜在的に健在なんだ。かつて、このチームに青春の輝きを見た人は多い。


しかし、騒ぎになると部員たちが動揺する。部員たちは、このような状況に慣れていない。


さあ、困ったな、どうしよう……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=319197083&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ