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LP学園野球部のキセキ  作者: 砂糖
11/18

LP学園対大阪南 その2

キャプテン古屋が盗塁を刺した事でチームは盛り上がった。一回裏のLP学園の攻撃だ。


大阪南高校のピッチャーは、ストレートが速いと噂だった。俺はLP学園の選手に指示を出した。

「相手ピッチャーのストレートは速い。追い込まれるまでは、ストレートにタイミングを合わせて狙っていけ。空振り三振でもいいから、とにかく振っていけ」


相手ピッチャーのレベルは、全国的に見れば、普通ぐらいだろう。しかし、今のLP学園打線を考えると苦労するだろうが、俺は部員たちの粘り強さに期待したい。


1番バッターはサード新井だ。粘り強いバッテングが信条でなかなか足も速い。しかし、相手のピッチャーのコントロールが良くて、2球で追い込まれてしまった。ここからが新井の真骨頂だ。


速いストレートに振り遅れながらも、何とかバットに当てている。


「いいぞー、食らいついていけ!」

ベンチからも大きな声が飛ぶ。


ピッチャーはカーブも投げてくるが、それでも新井はファールで粘る。フルカウントから10球目がきた。ストレートだ。


「ストライク、バッターアウト!」

空振り三振に倒れた。新井はガックリしてベンチに帰ってきた。


「オッケー、良く粘ったぞ!」

みんなで新井に声をかける。キャプテン古屋を始め、よく声が出ている。


2番バッターはショートゴロだったが、3番に座ったキャプテン古屋がストレートを捉えた! 三遊間を破って、レフト前ヒットだ。チーム初ヒットにベンチは湧いた。


ツーアウト一塁だ。ここで俺は古屋に盗塁のサインを出した。俺が古屋にキャッチャーを任せた理由の一つに、観察眼の良さがあった。盗塁のサインを出したのも、相手バッテリーに対する観察眼を期待していたからだ。


古屋のスタートは良かった。俊足とはいえないが、スピードに乗ればそれなりに速い男だ。


セカンドベースにヘッドスライディングだ! 判定はセーフ!


よし、得点圏にランナーが進んだ。俺は4番山本を呼んで、指示を出した。

「ピッチャーのストレートは速いから、振り回すなよ。しっかりボールを見極めて、コンパクトにスイングするんだ」


「はい、今日は絶対に勝ちたいから、先制タイムリーを打ってきます!」

山本は、力強く言ってくれた。


山本は練習で、大振りする事が多いが、この試合では、ちゃんと状況を考える事ができるはずだ。


ピッチャーはカーブから入ってきた。山本のタイミングは合っているようだ。カーブを読んでいたのだろうか。


セカンドの頭上をライナーが抜けていった。二塁から古屋がホームに帰ってくる。LP学園が1点を先制した!


ベンチは早くもお祭り騒ぎだ。俺は喜びつつも、

「点を取った次のイニングは集中してゼロに抑えるんだ。引き締めていけ」


LP学園の山川はストレートとカーブで有利なカウントを作って、フォークボールで打ち取れている。2種類のフォークボールも効果的に使えている。


相手ピッチャーも2回以降調子を上げてきて、山川との投手戦になった。それにしても、大阪南高校は守備力が非常に高い。やはり良いチームだな。


LP学園は、なかなかチャンスを作れない。相手ピッチャーのストレートに力負けしている選手が多い。1対0 でリードを保ったまま最終回に入った。この回を抑えたら、対外試合初勝利だ。


山川に疲労はあるが、ボールはまだ力強かった。キャッチャー古屋も、大きな声で山川を励ましている。俺は、ベンチから部員たちを信じて見守っていた。コイツらだったら、必ず何とか凌いでくれるだろう。


簡単にツーアウトを取ったが、3番バッターに右中間の三塁打を食らった。最後の大ピンチだ。


俺は、タイムを取ってマウンドに行った。

「今日のお前の調子だったら大丈夫だ。自信のあるフォークボールで三振を取りに行け!」


「はい! 完封します!」

山川の声は力がみなぎっていた。


次は4番バッターで今日はマルチヒットだ。最も、警戒すべきバッターだ。


まず、浅く挟んでカウントを取るフォークボールでワンストライクだ。バッターは見逃している。


バッターは何を待っているのだろうか?キャッチャー古屋はどうリードするのか?


2球目のストレートに対しては強振してきた。大きなファールだ。勝負球のサインに対して、山川は大きく頷いた。


しっかりと右腕を振って投げたフォークボールが、よく落ちている。バットが空を切った。三振でゲームセットだ!


1対0 で勝った! みんなハイタッチで大喜びだ。俺はベンチでみんなを出迎えた。

「おめでとう! 素晴らしい試合だったぞ!」


山川が嬉しそうに、

「監督、ウイニングボールです。僕たちは、みんなで決めていたんです。今日は必ずウイニングボールを監督にプレゼントするって」


「今日の勝利は監督のおかげです。ありがとうございました!」

キャプテン古屋も言ってくれた。


俺は思わず、涙してしまった……

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