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LP学園野球部のキセキ  作者: 砂糖
10/18

LP学園対大阪南

LP学園のエース候補山川のピッチング練習が続く。山川は、俺が巨人時代に投げていたフォークボールを見て、自分も投げたいと思ったらしい。


山川のボールの握り方を見ると、オーソドックスなタイプだ。そして、指が長い。確かにボールを挟みやすそうだ。山川は小学生の頃から、野球以外でも常にボールを持ってフォークを投げるイメージトレーニングをしていたらしい。


これまでも受けてきたが、確かに高校一年生とは思えないほどの落差だ。しかし、まだまだ精度が低い。抜けるボールも多かった。


俺はボールを受けながら、アドバイスした。

「お前のフォークは決まった時は凄いが、抜けた時には危険なボールになっているぞ。そして、フォークは指への負担も大きい。浅く挟むフォークと深く挟むフォークを覚えろ。あと、カーブを使って緩急もつけろ」


山川は、頑張って取り組んでくれた。今はまだ精度が低いが、ストレートとフォークボールを磨けば、勝負できるピッチャーになれるだろう。


山川は、ピッチング練習している時は嬉しそうだ。俺も昔は投げるのが楽しくたまらなかったな。

熱心に投げる山川を見ていると、微笑ましくなってくる。


「監督、僕が山川を倒します。対決させて下さい!」

LP学園の4番候補の山本が言ってきた。


山本は、部員の中では一番の飛距離を持っている。巨漢で大飯食らいだ。弁当箱のデカさは半端ない。お母さんの苦労と愛情を感じる男だ。


山川は小柄なので、2人は同学年に見えない。

人気野球漫画のキャラクターで、小さな巨人里中とドカベン山田のような2人だ。


これから何度も繰り返される「山川vs.山本」のLP学園名物対決の第一回だ。


「さー、来い!」

山本がピッチャー山川を睨む。


キャッチャー古屋の配球はどうするのか?

山川が古屋のサインに頷いた。初球は、アウトコースのストレートだ。山本はバットを出してきた。一塁線への強烈なライナーのファウルだ。


投げたコースは良かったが、まだ球威不足だな。2球目に、浅めに挟んだフォークボールを使ってきた。山本はタイミングが合わず空振りだ。山本は、驚いていた。

「お前、こんなボール持っていたのか! やるなぁ」


勝負球は、どうする? 古屋のサインに山川は首を振った。山川が投げたいボールは何だろう。


山川が投げたのは、フォークボールだ。しかし、高めに抜けてしまった。山本のバットが火を噴いた……かと思うぐらい豪快なスイングの空振りだった。


第一回対決は山川の勝ちだ。しかし、山川は納得いっていなかった。

「勝負には勝ちましたが、監督の言う通り、僕のフォークボールはまだまだ精度が低いですね」


俺は笑って、

「俺が高校一年生の頃は、まだフォークボールは投げていなかったよ。変化球はカーブだけだった。だから、お前はボチボチやれよ」


山本も、

「お前のフォークボールを続けて空振りしてしまった。2球目の抜けたフォークはホームランボールだったな。次回の対決では覚悟しておけよ」


俺は山本に対して

「お前のような打ち気満々のバッターは、タイミングを外されやすいぞ。振り回すんじゃなくて、バットの芯で捉える事を意識しろ」


キャッチャーの古屋も、

「フォークボールに頼りすぎるのも良くないですね。しっかり考えてリードします」


みんなよく考えているな。感心だ。


みんな精力的に練習に励んでいる。部員からは、

「監督、対外試合がしたいです」


LP学園野球部は9人しかいないので、紅白戦ができない。どうしても、実戦練習が不足する。俺は、近辺の高校に試合を申し込んだ。


その結果、大阪南高校と練習試合できる事になった。この高校は公立高校だが、スポーツにも熱心に取り組んでいる。実力的にはLP学園と近いと思われる。ちょうどいい相手だ。


俺は部員たちに、ゲキを飛ばした。

「みんな、今日は勝負にこだわるぞ。絶対に勝つぞ!」

LP学園はこれまで1試合だけ練習試合をやっていたが、負けていた。今日は対外試合の初勝利を目指すんだ。


大阪南高校は、全体的に小粒だが、スピードがある選手が多い。守備も鍛えられているようだ。


初回、先頭バッターがいきなりセーフティーバントをやってきた。LP学園のピッチャー山川も素早くボールを取ったが、一塁はセーフだ。快速ランナーだな。


山川はセットポジションからの投球に少し課題があった。球威が落ちる傾向があった。対外試合をほとんどできていないので、やはりセットポジションにもイマイチ不慣れだ。


牽制球も上手いとは言えなかった。大阪南高校の監督は、山川の弱点をすぐに分かったようだ。ランナーのリードが広い。


山川も何球か牽制するが、ランナーは楽々帰塁している。ほぼ100%盗塁を狙っているな。LP学園のバッテリーはどうするだろうか。


2番バッターの2球目にランナーがスタートした。山川はストレートを投じていた。


キャッチャー古屋は強肩ではないが、フットワークをずっと練習してきたんだ。快速ランナーとも勝負できるはずだ。


古屋は捕球すると、流れるような動作で二塁へ送球した。タッチ、アウトだ! キャプテン古屋が練習の成果を見せてくれた。


これでチームの雰囲気は一気に良くなった!

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