表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双神の御子  作者: 南瓜遥樹
序章 学院入学編
8/62

七話 打ち明け

累計PV1000を超えました!皆様ありがとうございます!

 王都生活二日目。

 まだ日が昇り始めて浅いがユートは家の庭でいつものように剣を振るっている。身体を鈍らせないように鍛錬は欠かさない。


 鍛錬を終えたユートは、朝を流すためにシャワーを浴びてから朝食を作ら始める。


「今日はどうするかな?流石にあの子を一人でにするわけにもいかないしな……」


 そんな事を考えながら少女の部屋へ向かう。「もう起きてるかな」と思いながら扉をノックして開けようとすると、ユートの手を待たずにその扉は開いた。


「お、おはよう」


「…………おはよう…ございます」


 ユートは一瞬当惑するが直ぐに立て直し、少女に挨拶をする。少女も間があったが挨拶を返す。


「「…………」」


 しばし無言が続く。

 ユートはあまり人と関わった事がないせいでこう言った時、どうすればいいのか分からない。少女も同じようなものだ。

 なんとなしに気まずい時間が流れ、やがてユートの方が会話に切り出す。


「と、取り敢えず、朝食摂ろうか」


 ユートの問いかけに少女はコクッと頷く。


 朝食を摂ってる時もその状況はさして変わらなかった。寧ろ悪化している。少女は何故かユートに顔を合わせようとしない。着々ユートの顔を盗み見るような形をとるのだがその視線に気付いたユートが少女の方へ顔を向けると少女は慌てたように顔を俯かせてしまう。


 そんな反応を繰り返されたユートは「やっぱ避けられてるなぁ…」などと思いながら小さく溜め息を零した。


「あ、あの……」


 突然ユートに声がかかる。ユートは一瞬誰の声かと思ったが直ぐに目の前の少女だと気づく。少女は意を決してユートに目線を合わせる。


「……助けていただき…ありがとうございます」


 少女はそう言ってペコリと頭を下げる。


「あ、あぁ、気にしないで。たまたま通りかかっただけだから」


「いえ、それだけでは無く…傷も治していただいて…………」


「それも大した事じゃないよ。それよりもう大丈夫?」


「はい…身体の方はなんともありません…」


「身体の方は、か……」


「え?」


「い、いやなんでもないよ」


 そう言ってユートは誤魔化す。

 確かに身体の傷は癒せても心の傷までは癒すことはできない。それはユートが一番よく分かってる事であり、少し悲しい表情を見せる。


「もし言いたくなかったら言わなくていいんだけど…何があったのか、教えて欲しいんだ」


 ユートは少女にお願いする。少女は少し悲しい顔を見せたがポツポツと何があったのか語り始める。


 少女は母と父の三人で平和な暮らしをしていた。決して裕福な家庭ではなかったが少女にとっては幸せな時間だった。

 一ヶ月前までは…

 その日はいつもと変わらない時間を過ごしていた。だが急に誰かが家へ訪ねてくる。訪問者は二人。どちらも黒いローブを見に纏った怪しい男達だった。そんな男達を不審に思った父は直ぐに追い返そうとしたが、その男達は腰に控えていた剣で父を刺した。そんな光景を目の前にして少女は何も考えられなくなってしまう。やがて母が刺された時、それが彼女の最期の記憶だった。

 そして少女の地獄はここから始まった。

 意識を取り戻した時、少女は天井から吊るされる鎖に繋がれていた。必死に逃げようと試みるが何故か身体に力が入らない。そして自分の首に首輪が付けられてる事に気付く。暫く経って一人の男がその部屋へ入ってくる。その手に鞭のようなものを持って。男は少女を嬲る為だけに誘拐した。自分の欲求を満たすだけのためにーーー

 それから毎日少女は苦痛を味わうことになる。殴られ、蹴られ、鞭で叩かれて…

 食事も三日に一回、水とカビたパンのみ。

 そんな日が続けば少女が壊れるのも時間の問題だろう。

 はじめの頃は、もうやめてと泣き叫んでいたが次第に少女はなんの反応も示さなくなり、そんな少女に面白みを見出せなくなった男は少女を廃棄する為に外へ捨てた。


「……以上です…」


 少女はこれまでの経緯を語っていたが途中から涙を流していた。


「……そっか、そんな事があったんだね…ありがとう、教えてくれて」


 ユートはお礼を言いながら少女の頭を優しく撫でる。すると今まで溜め込んでいたのか少女はユートに抱きつき大声で泣き叫びはじめた。

 ユートは少女が落ち着くまで胸を貸し、優しく撫で続けるのであった。


 〜〜〜


 少女が泣き疲れて眠ってしまった後、ユートは自分の膝に少女の頭を乗せて座っていた。


「家族…か」


 先程の少女の話を思い出す。


 ユートにも家族は()()。もう昔の事だがあの頃はユートにとっても幸せな時間だった。だから家族がいなくなり天涯孤独となった少女の悲しみはユートにも理解できる感情だった。


 〜〜〜


 久し振りにこんなに感情を表に出した気がする…こんな誰かに正直に話をするなんて二度と来ないと思っていた。だから今はすごく不思議な感覚だ。

 そういえばなんでこんなにこの人は安心できるんだろう?それに彼の事を思うと何故か胸が熱くなる…この気持ちは一体…?


 彼女がこの気持ちに気付く日はそう遠くないーーー


少女の名前は次回でます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ