十七話 エリエルvsイルミナ ③
エリエルとイルミナの対決は佳境に入っていた。
「どうした……この程度か?」
イルミナは無機質な声でエリエルにそう告げる。
声帯、というか身体はユートの物の為、その姿は普段のユートからは想像できないような違和感のあるものであるが。
「はは、流石に参ったなぁ〜」
エリエルの惨状は酷いものだった。
いつもの美しいスカーレッド色の髪は焦げた跡やら砂埃やらで濁っており、身体中の至る所から血が溢れ出ている。
だが虚勢なのか、それともまだ余裕なのか、エリエルの口調はいつもと全く変わらずフランクなものである。
だが実際には、エリエルに全く余裕などなかった。
それはイルミナの状態を見れば一目瞭然である。
イルミナはエリエルの攻撃をまだ一撃足りとも受けていない。
否、この世界においてイルミナがダメージを負う事は万に一つもあり得ないのだ。
イルミナの⦅創世⦆はその名の通り、世界を創造する魔法である。
イルミナが創造した世界ではイルミナが絶対であり唯一神である。
故にイルミナ自身に不利益になる事象は絶対に起きない。
「くぅ……」
エリエルは予想だにしない攻撃を受けて苦悶の声を漏らす。
この領域ではエリエルの能力も思うように発揮されない。
エリエルはただ一方的にやられる以外なかった。
だがイルミナの手が休まることはない。
「⁉︎」
イルミナがパチンと指を鳴らせば何もない平地から蔦のような植物が畝りながら飛び出してくる。
無数もの蔦はエリエルを見るとまるで獲物を見つけたかの様にエリエルを襲おうと迫ってきた。
「それは私が創った植生物の"ウィップギドラ"……なんでも食う雑食だけど食べた物の力を吸収して己の糧とする事ができる」
本能がまずいと思ったのか、エリエルは考えるよりも先に目の前の蠢く蔦から距離を取ろうとする。
しかし、
「しまっ……このっ……⁉︎」
エリエルは迫り来る蔦に牽制で魔法を使おうとするがイルミナによって消されてしまう。
焦ったエリエルはそのまま跳躍して後方に飛び退こうとしたが地面から足が離れた瞬間、蔦が迫り来る勢いが増しエリエルの足に巻きつく。
エリエルの足に巻きついた蔦はそのまま螺旋状に巻き付き、エリエルの胴体まで蔦を這わせた。
蔦は逃れようとするエリエルを下に惹きつけて地面に叩きつける。
ゴォォォンと鈍い音が辺りに響き渡った。
「ぅぐ……」
蔦によって身動きを封じられていたエリエルはまともに受け身を取ることもできずに肺の空気を吐き出す。
ミシッと嫌な音が聞こえたのは恐らくエリエルの身体の骨が何本か折れた時の音だろう。
「今のお前を見たら人類は絶望するだろうな」
イルミナは一方的に劣勢を強いられているエリエルへ視線を向ける。
エリエルの四肢は蔦によって拘束されて宙に浮いている。
もはや力が入らないのか、腕はぐったりとしている。
痛々しく至る所から血が流れているところをみれば普段のエリエルからは想像もできないほどだった。
(はは、これは本当にダメ、かも……)
すでにエリエルにはこの状況を打開する術がない。
能力を使えないエリエルがイルミナ、魔神に勝つなど到底不可能だからだ。
「今に楽にしてやる……あいつもすぐにそっちに逝くだろう……」
イルミナは身動きが出来ないエリエルに向かって指を突きつける。
突きつけた人差し指からは魔力が収束して行く。
そして十分に溜まったエネルギー弾をエリエル目掛けて打ち込んだ。
ーーーゴォォォォォォン
けたましい音が辺りに鳴り響く。
それはエリエルの死を想起させるもの。
だが……
そうなることは無かった。
「え?」
エリエルもそしてイルミナですら予想だにしない事が起きた。
エリエルはその状況に驚き目を見開いている。
「なんでここに来たの⁉︎ミーナ!」
エリエルの前にいたのは同じ神話級で共に来たミーナ・スペラその人だった。




