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双神の御子  作者: 南瓜遥樹
第二章 禁忌の銀姫編
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五話 盗賊

 翌朝、ユートとミロク、そしてレイラは日が昇る前くらいに王都を発った。


 ユート達はジータが用意した馬車を使い、黒狼の森がある南に進んでいく。


「このペースだと到着まで後二日ってところか……」


 ユートは手綱をひきながらそんなことを考える。


 ちなみに三人の中で馬車を操縦できるのはユートのみだった為、この旅間はユートが御者をやることになる。

 ミロクとレイラは荷台の中で話に花を咲かせているようで外にいるユートの方まで声が聞こえてくる。


 しかし、ミロクとレイラの方からは外の音が聞こえてくることはない。

 それはユートが張った結界によるもののせいであった。


 なぜ音を遮断する結界など張ったのかといえば……


「……やはり、か……」


 ユート溜め息をつきながら半目でその方向を見る。


 するとユートの視線の先からはぞろぞろと数人の男達が姿を見せた。


「へぇ……王都からこんな辺境にくるとはなぁ、気を付けねぇと……ここは通行料がかかるんでな」


 集団の中から一番ガタイの良い男が目をギラつかせながらユート達の方に向かってくる。

 おそらくこの男がこの中のリーダー的存在なのだろう。


「どこにでも盗賊なんてものは湧いて出てくるんだね……それより、ここを通してくれない?今なら見逃してあげるけど」


 ユートがそう言うと、盗賊達はプッと吹き出しながら笑い出す。


「おいおい!このガキ何を言いだすかと思えば、まともな命乞いすらできねぇのかよ!」


「大方、魔法を覚えたてのお坊ちゃんが背伸びしているだけだろ!世間の厳しさを俺たちが教えてやろうぜ!」


「「「「ギャハハ!」」」」


 盗賊達はユートの忠告にまるで耳を傾けずに寧ろ小馬鹿にしたようにして挑発する。


「オメェら……あのガキをやっちまえ」


 頭がそう言うと、盗賊達は一切に武器を構える。

 中には杖らしきものを持ってるものもいる為魔法使いも数人いるのだろう。


「はぁ……しょうがない……」


 ユートは手綱を離し、馬車からおりた。


「死ねぇぇ!」


 そして突貫してくる男の首を目にも止まらぬ速さで跳ね飛ばした。


「は?」


 盗賊達はその異様な光景を見て、思わず硬直する。

 あんなただの少年が自分達が反応できないくらいの早さで仲間を殺したこと。

 さらに言えば殺し方もあまりに奇妙であった。


 ユートは今、剣を持っていない。

 だがユートが横薙ぎにした手には血が付着しており、指先からポタポタと垂れている。

 そこから推測できることは……


「おい……あいつ……まさか手刀で首を跳ねたのか……?」


 ユートは盗賊の言う通り、手刀で盗賊の首をはねたのである。


「お前達は僕の忠告を聞かずに剣を抜いたんだ……だから、殺されても……文句はないよね?」


 ユートの声はいつも以上にトーンの低いものだった。

 ユート吸い込まれそうな黒い瞳で外敵を見つめる。

 今のユートは魔法学院で過ごしているいつもの穏やかさは無く、神話級のユート・ラルシエールそのものだった。


「ひっ⁉︎」


 盗賊達はユートから放たれる重圧(プレッシャー)に思わず悲鳴じみた声を上げて後ずさる。

 盗賊達のミスはユートをただの子供だと思い込み、無謀にも襲いかかってしまったことだ。


「がっ⁉︎」


 音も無く、前に出ていた盗賊達が一人また一人と首から上が無くなり、その場に倒れていく。


「くそっ⁉︎てめぇら!撤退だ⁉︎」


 頭はユートのことを危険だと判断し、やむなく撤退を促す。


 しかし、もう遅い。


 一度外敵と認識したユートがみすみす逃すわけも無く、


「ぐわっ⁉︎」


「がぁっ⁉︎」


 ユートは、背を向け一目散に逃げていく盗賊を次々に殺していった。


 数分前まで数十人といた盗賊も今は頭ただ一人となった。


「……何処へ行く……」


「あぐっ⁉︎」


 ユート走り去って行く盗賊の頭の前に立ち、頭の首を掴む。

 ユートと頭には十センチ以上の身長差があるにもかかわらず、頭は首を掴まれ、足が宙に浮いていた。


「っぐ……く、そ……はな、せぇ……」


 苦しそうにもがきながら、その丸太のように太い腕でユートの細腕を掴み、抜け出そうとするがビクともしない。


「先に突っかかってきたのはお前たちだ……」


 ユートはさらに手に圧を込める。

 すると、ミシミシッと首の骨が砕けるような音が周囲に鳴り響く。


 かなり大きい音が鳴り響くが馬車の中にいるミロク達には音声遮断の結果のおかげで聞こえることはない。


「が……あ、がぁぁぁ!」


 頭はいよいよ呼吸が出来なくなるくらいまでに至り、獣のような声しかあげられなくなる。

 それでもユートは止めようとはせず手に力を入れ続けた。


「あ……あ……この……人の皮を被った()め……」


 頭は最後にそう言いのこしガクンと力無く項垂れる。手足をブランブランさせ、白目を向いていることから頭の死が確認できる。


「……」


 ユートは手に持っていた頭の死体を放り投げて辺りを見渡す。


 そこには何十人もの首から上が無くなった死体が転がっており、綺麗な緑の平原であったはずの場所に既にその面影はなく、辺り一面血の池が広がっていた。


 ユートはその光景を見ると、まるで何かに取り憑かれたように呻き始める。


「う"ぅ…………殺……した、い……こんなんじゃ……足り、ない……」


 ユートは頭を抑えながら苦悶の声を漏らしている。

 よく見ると、ユートの髪の色は所々青く変色しており、瞳の色も黒から銀へと点滅しを繰り返している。

 こういったユートの変化は前にも起きている。

 それはユートがイルナギと同調する時と同じ現象だった。

 しかし、今のユートはその時とは一転様子がおかしい。


 まるでユートの身体を乗っ取る様なそうな、感じが見受けられる。


「がぁ……⁉︎こわ……せ……なにも、かも……」


 ユートの身体の変化が徐々に目に見えるくらい変わり始めて行く。


 しかしその時、


『……ト…………お、い……ユート⁉︎』


 ユートの中からイルナギの声が聞こえてくる。


「……⁉︎……ぐっ……頭が……」


 すると、ユートは徐々に正気を取り戻し始めて行く。

 やがて変化していた瞳と髪の色もいつもの黒に戻った。


「はぁ…………はぁ……あれ……?僕はなにを……」


 本来のユートの意識が戻り、息が絶え絶えの様子でユートはその場にへたり込んだ。


『ユート、意識は戻ってきた?』


(イルナギ……?う、うん……一体なにが……?)


()()の感情が暴走したんだよ……ユートが久し振りにスイッチを切り替えたせいだね』


(そうだったのか……じゃあ僕の身体は一時的に乗っ取られていたんだね)


『うん、こっちの方でなんとか抑え込んだけど……いつも以上に手強かったよ……やっぱり昨日のことを根に持っていたのかな』


 溜め息混じりのイルナギの声がユートの脳内に響く。


(昨日のこと……?)


『ああ、いや……こっちの話……それよりもまた彼女の暴走があるかもしれないからユートも気を強く持って』


(うん、わかった)


 と、そこでイルナギとの会話を切る。


「……ミロク達の前でああなる訳には行かない……気を付けていかないとな……」


 ユートはそう呟きながら顔を引き締めて、馬車の元へ戻って行く。

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