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双神の御子  作者: 南瓜遥樹
第二章 禁忌の銀姫編
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四話 秘める思い

「……それで首尾はどうだ……?」


「あぁ……盤石だ……しかし、こちらは問題が発生した」


 暗闇の部屋を蝋燭一本で照らし、それを囲むようにして数人が対面していた。


「問題……?それは作戦に支障をきたすのか?」


 それぞれの顔には仮面がつけられている為見えない。


「件の禁忌の銀姫が王宮を離れた……」


「なに……⁉︎ちっ……愚王の癖に妙に勘が鋭いじゃねぇか……そんで何処へ行った?」


「どうやら魔法学院に通っている生徒に預けたらしい……現在は其奴の家で匿われている」


「は?なんだそりゃ……魔法師見習いの学生如きに預けただぁ?さすが愚王のやる事は斜め上をいくなぁ」


「奴の行動は読めないが所詮は学生……このまま計画通り進行して問題ないだろう」


「あぁ、それに今回はあの『LasT』に依頼した……多少のトラブルも指して問題ないだろう……そうだろう?」


 男は下座に座る人物に目を向ける。


「あぁ、問題ない……俺たちに失敗はありえない……」


「失敗はありえない……ねぇ……この間とある依頼でヘマした、って言うのを聞いたんだが?」


「……」


「おい、やめろ……今はそんな話をする時間ではない……大金を払っている以上、任務は必ず遂行してもらう。いいな?」


「無論だ……」


「それでは計画を実行する……次に会う時は………………全てが終わった時だ……」


 〜〜〜


「……それで、そちらにいる女性は誰なの?」


 ユートはレイラを連れて王宮を出た後、レイラに認識阻害の魔法を施し、家へ向かった。


 当然、家の中にはミロクがいるのだが、ユートが帰ってきたことを知り、玄関の扉を開けたミロクがユートにしがみつく少女を見ると急に不機嫌そうな顔になり、開口一番がこの台詞だった。


「……なんか怒ってる……?」


「いえ、別に。これっぽっちも怒っていませんよ、ええ」


(すごい怒ってるよね……これ)


 無論、何故ミロクが怒っているのかなど、ユートが分かるわけもないのだが。


 とりあえず家に上がりレイラの事を説明するユート。


「なるほど……状況は分かった……国王陛下が帰るまでレイラさんを預かるということね?」


「まぁ、そんな感じ」


 一通り説明すればミロクも状況を理解し、レイラの事も了承した。


 レイラの方もミロクの事を気に入ったらしく、今は女の子同士で色々対話していた。


「それでレイラさんを狙う刺客の方はどうするの?ここを襲うことも考えられるけど……」


「うん、まず間違いなくここを襲うと思う。王宮内でも一人心当たりがある人物がいるからね……そこで明日から一度王都を離れることにする」


「王都を離れる?」


「一様学院の方にも許可は取ってあるよ。流石にここでどんぱちやるわけにはいかないからね……」


「それもそうだね……」


 ユートの言葉にミロクは同意の意を示すように頷く。

 ユートが神話級と知る人はこの王都内でも限られたものしか知らない。

 この王都でユートが戦っているところを目撃されればユートの素性もバレるやも知れない。


「それで、何処に行くの?」


「行きたい場所があるんだ……この時期にね……」


「?」


 ユートの顔に一瞬だが陰りが出来る。

 何故ユートがそのような表情を見せたのかミロクはこの時はまだ分からなかった。


「僕が行きたい場所……それはここから南に進んだところにある"黒狼の森"の近くだよ」


「え?」


 ユートの行き先はこの世界でも十本の指にも入るような危険な場所だった。


 ーーー黒狼の森


 名前の通り、黒狼が住む森と言われている。

 言われている、と曖昧なのは誰も黒狼を見たものがいないからである。

 いや、見たものがいないと言うのにもやや語弊がある。

 正確に言うと、見たものはいるがその者は既にこの世にいないのだ。

 黒狼を見た者は一人残らず黒狼の餌となっている。

 故にこの森には誰も近づこうともしないしましてや入ろうと思う者もいないだろう。


 この黒狼の森、この名前が付けられたのはつい五年前のことである。

 というのも、それまでは黒狼など存在せず普通の森だった。

 しかし、ある日を境に急に黒狼が現れたというのである。


「そんな黒狼の森に行くなんて正気の沙汰とは思えない⁉︎」


「ミロクは行かなくても構わないよ、レイラが危ない目に会うようなことはないと約束するから」


 ユートの意志は固かった。

 それほどまでにユートの中でそこにはなんらかの思い入れがあるのだろう。


「……私もいくよ……」


「……危険だよ?」


「大丈夫だよ。何かあればユートが守ってくれる……そうでしょ?」


「……⁉︎うん、そうだね」


 ミロクの言葉にユートは苦笑いを浮かべながら頷く。


「それじゃあ、明日には早速出かけるから今日はもう寝ようか」


「うん、おやすみ……ユート」


「あぁ、レイラも今日はとりあえずミロクと寝てくれ」


「ん……わかった……」


 既に眠気に襲われていたレイラがコクコクと舟を漕ぎながらミロクに連れられて部屋に向かう。


 そんな様子を後ろから眺めながらユートはソファにもたれかかりため息を吐く。


「はぁ……あれから五年……あの時とはもう違うんだ……」


 ユートは窓の外に移る月を決意に満ちた表情で眺める。


 その日の月は満月だった。


 〜〜〜


 ここはユートの心象世界。

 真っ白な空間にポツリと一つの人影が存在していた。


「あれから五年……神にとっての五年なんて一瞬なはずなのに、この五年はとても長く感じるね……」


 ユートと契約している神、イルナギは独りごちる。


()もそう思うだろう?君もあの子との時間はとても濃密だったはずだろうからね……」


 イルナギは誰もいないはずなのにまるで誰かと話しているような口調で話す。


 だが、それは違う。

 イルナギの見つめる先には確かになにかいる。

 真っ白な空間であるはずなのにそこだけはまるで闇のように暗い。

 そしてその暗闇からはほんの僅かに小さな光が揺れていた。


「だからこそ割り切らなければならないはずだ……君と同じ、いやそれ以上にユートは苦しんできた……」


『……』


「君がユートを嫌っていることは知っているさ……でも、もう少し彼を見てもいいんじゃないか?きっと見えなかったものが見えてくるさ。ぼくと同じように、ね……」


 そう言ってイルナギは踵を返す。


 ユートとイルナギ……そして…………。

 ユートを中心にして、運命の歯車は徐々に変化を起こしていく。








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