三話 そう言えば使えなかったね
王立ハリオード魔法学院に通う為には入学試験に合格しなければならない。試験項目は筆記、実技の二項目。ユートはこの二項目のテストを合格点以上出さなければならないのだがここで大きな問題が発生していた。
「ユートくんは頭がいいから筆記はおそらく大丈夫でしょう」
「うーん、頭そんないい方かな…?」
「すごく良いわよ。神話級の中で一番頭が良いのだから」
ミーナの言う通り、ユートは頭が良い。というのも複雑な作戦をたてたりメンバーの指揮をとったりするのはリーダーであるエリエルでは無くユートなのだ。自己評価の低いユートは自分はそんなに大した奴じゃ無いと思ってるのだが…
とはいえユートも学生レベルの学力は身についている。試験科目は言語、数学、歴史、魔法学の四教科で例年そんなに難しい問題が出るわけでも無いらしいので筆記テストの通過は間違いないと言える。試験まであと二週間ある。これだけあれば十分余裕を持って望めるだろう。
しかし問題は…
「問題は実技なのよね…」
「実技?」
「えぇ…ちなみにユートくんは実技試験がどんなものか知ってる?」
「いえ、全然」
「そうよね…あそこの実技試験はね、試験官と模擬戦を行なって受験生のレベルがどれくらいか確かめるものよ。」
「?それだけなら大した問題じゃなさそうですけど…試験官の階級は隊長級くらいでしょう。どんなに高くても英雄級だと思いますし」
「そうね。試験官のレベルはそのくらいだわ。ユートくんなら恐らく瞬殺しちゃうでしょうね…ちなみにあそこの学院長は伝説級よ」
「へぇ、学院は伝説級の人が管理してるんですか。それはなんというか、凄い過保護ですね。国も」
ユートは素直に感心する。伝説級が学院を管理しているのだ。滅多なことなど起こるはずもない起こす者もいないだろう。
「で、結局問題ってなんですか?」
「ユートくん…実技試験で受験生が披露するものって?」
「そんなの魔法に決まって…………あっ」
そこまで言いかけたところでユートはようやく気付く。そして徐々に青ざめていく。
「魔法使えないじゃん…」
ユートは魔法が使えないのだ。正確には適正魔法が無い。
魔法には火、水、風、土、雷属性の元素魔法と光、闇属性の特殊魔法、ごく稀にその者しか使うことのできないオリジナル、固有魔法の三種類が存在する。適正魔法というのはこの三種類の魔法で自分が使えることが出来る魔法を指すものである。
例えば元素魔法の火属性に適正がある者は火属性魔法を使用することができる。逆に言えば火属性魔法以外は使えないということになる。これが適正魔法である。
つまり、魔法を使うには自分の有する適正魔法のみである。だが、適正魔法に属していない魔法も存在する。それが無属性魔法、別名汎用魔法と呼ばれるものである。読んで字のごとく誰でも使うことの出来る魔法、それが無属性魔法。誰でも使うことが出来るからこそ適正魔法に含まれていないのだ。
ユートは適正魔法が無い。言い換えれば無属性魔法しか使えない。それでも彼が強いのは他に理由はあるのだがここでは触れないでおこう。
この試験でアピールできる魔法が無いユートにとって合格するには極めて困難なことだろう。そのことが分かり、ユートも顔を歪ませる。
「これは…かなり不味いですね…」
「えぇ、不味いわね…」
2人とも完全にお手上げ状態となる。こればっかりは流石にどうしようもないことなのでユートも入学を断念しようとしたその時、急に扉がバンッ!と音を立てて開かれた。
「話は聞かせてもらったよ!」
まるでタイミングを狙っていたかのようなセリフとともに。
ユートとミーナは驚きながらも扉の方に首を傾ける。
そこに立っていたのは学院に通うように言った張本人エリエルともう一人、耳が長く尖っている金髪碧眼の美青年が立っていた。
ミーナとエリエルの適正魔法は後々出します