十六話 対抗戦 ③
小休憩を挟み、対抗戦の二回戦が始まろうとしていた。
二回戦は勝ちあがったもの達からランダムに対戦カードが組まれた。
どうやら、今年の生徒は実力が高い為、対戦カードの組み分けを変えざるを得なかったらしい。
「それでこの組み合わせか……」
ユートは渡された用紙に目をやり、その組み合わせを確認した。
二回戦は全部で六試合。
ドルップ魔法学院のカシューを除く選手達が組み分けられている。
カシューはその実力からシード権を得たようだ。
「一試合目に僕でミロクは四試合目……対戦相手は……⁉︎」
そこまで目にしてユートは驚きの表情に変わる。
「アーゼル……確かあの金髪の……」
ミロクの対戦相手はユートが懸念していた、あの金髪の少年だった。
二回戦もユートは特に苦戦する事なく勝利、マークや二回戦から参戦したアイラも三回戦へと駒を進めていた。
そしてミロクはというと……
〜〜〜
時は少し遡り、二回戦第一試合の終わった直後。
「おめでとう!ユート」
「ありがとう、ミロク」
控え室に戻ってきたユートにミロクはタオルを渡す。
一回戦同様、一瞬で試合の終わったユートはこれといって疲れてるわけではないがミロクの好意だったのでありがたく受け取っていた。
「私のつぎの相手はアーゼルという方だけど……どんな選手だったかなぁ?」
ミロクは次の対戦相手のことをあまり覚えていないのか、首を傾げて悩んでいた。
「その事なんだけど………………ミロクは次の試合に棄権してほしい」
「え?」
ミロクは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。
しかし、ユートの顔を見てすぐに真剣な顔をしてユートに尋ねる。
「理由を聞いてもいい?」
「そのアーゼルって言う奴は危険かもしれない……根拠は……僕の勘」
「そっか……じゃあユートの言う通りにするよ」
「いいの?」
「うん……本当はリラちゃんの仇をとりたかったけど……ユートが言うならそれに従うよ。だって二回も助けられたんだからね」
「そうか……ありがとう」
ユートは安心したように笑った。
四試合目はミロクの棄権により、アーゼルの不戦勝となった。
これには観客も不満の声や怒声が飛び交っていたが、ミロクの体調不良という事でかたがついたのだった。
〜〜〜
「さぁ!続く三回戦の第一試合!一回戦に無類の強さを誇っていたカシューくん対、ここまで一撃で相手選手を倒してきた謎の少年、ユートくんの試合だぁ!」
三回戦、観客のボルテージも最高潮まで上がっており、カシューの戦いということもあり、今日一番の歓声が上がっていた。
闘技場のフィールドでは仁王立ちで佇むカシューとカシューよりも一回り小柄なユートが互いに視線を交わしていた。
「……ユートといったか……お前、強いな?」
カシューは半目でユートを見つめながら静かに口を開く。
この時のカシューには一切の隙もなく、圧倒的にオーラが漂っていた。
「……どうだろう?僕は自分が強いなんて一度も思ったことないからね……君の期待に答えられるか……」
「……戯言を……」
ユートは大したことないといった風に首を横に振る。
カシューはそれ以上何も聞こうとはせずに試合に集中した。
「それでは三回戦第一試合……開始!」
開始の合図とともに、カシューは魔法を詠唱する。
「お前は油断ならなそうだからな……はなから全力で行かせてもらう!
大地を持って矛を沈めよ!⦅不落の要塞⦆!」
カシューが両手を地面につける。
すると地面から黒い壁が形成られていく。
「出ました!カシューくんの大技!⦅不落の要塞⦆だぁ!」
司会も初っ端からカシューが全力なのを見て、興奮している。
「上級魔法を詠唱短縮……やっぱり一般生徒とは比べ物にならないね……」
ユートは聳え立つ壁を見上げながらカシューに称賛の声を上げる。
だが、と。
「……ここで負けたらミロクとリラに顔向けできないからね……悪いが勝たせてもらうよ」
「ふん、破れるものなら破ってみろ」
ユートは腰に携えている鉄剣を抜き取り、まるで槍を投げるような態勢をとる。
「……何?」
ユートの行動に理解できないカシューは眉を寄せて怪訝そうに見つめる。
だが、その顔は数秒もしないうちに驚きの表情へと変わることとなる。
「いくぞ……っふ!」
ユートは右手で鉄剣を振りかぶり壁に目掛けて投擲する。
投げられた剣は人間が投げたとは思えないような速度で壁目掛けて飛んでいく。
あまりにも早すぎるその剣は観客の目を置き去りにしたまま壁に直撃した。
すると、
ーーーバリイイィィン!
壁はけたましい音を立てて剣が直撃した中心からボロボロと崩れていく。
「……っ⁉︎馬鹿な⁉︎」
目の前で起きた事象に理解が追いつかないカシューは目を見開き、戸惑いの声を上げる。
「ありえない……ただの鉄剣がミスリルを含んだ壁を壊すなど……」
カシューの言う通り、ただの鉄剣がミスリルを含む壁を壊すなど普通は絶対ありえないことである。
ミスリルは鉱石の中でもトップレベルの硬さを誇るのだ。そしてミスリルは鉄よりも硬い。ここまで言えばミスリルに軍配があがるのは明白だろう。
だが、
「確かに君の言う通り、鉄じゃあミスリルは砕けないよ……けど僕は別に鉄剣で君の壁を壊した訳じゃない」
「何?」
「鉄剣はあくまでも媒体だよ……僕の魔力を乗せるためのね」
「……っ⁉︎」
ユートがした事は至極単純。
ユートの持つ剣にユート自身の魔力を乗せて投擲しただけである。
つまり剣の形をしたユートの魔力こそがカシューの壁を貫いたのだ。
「ありえない……魔力でミスリルを貫くなど……と言いたいが現実で起きた事だ……認めざるを得ない」
そう言ってカシューは両手を挙げて降参の意を示す。
「完敗だ……この壁を破れる奴に勝つことなんて出来ないからな」
「わかった……君もその歳でその実力は凄いと素直に思うよ」
「……お前に言われると嫌味にしか聞こえないな」
「……はは」
カシューの物言いにユートは最もだと苦笑いするしかなかった。
「えぇっと……何がどうなったのでしょうか?……カシューくんの壁がユートくんの投げた剣で壊されて……カシューくんが降参……?マジでどゆこと?」
司会の女も今起きた一連の流れに困惑を隠せない。
観客もポカンとして未だ現実に戻ってきていないようだった。
「……と、とにかく!カシューくんの降参により、ユートくんの勝利です!」
司会の勝利宣言により、ユートの勝利で幕を閉じた。
ユートの試合が終わり、闘技場の特別席にて。
「ねぇ貴方。あの子……ユートくんだったかしら。面白そうな子じゃない?」
「……確かに凄まじいな……だが……娘はやらんぞ」
「うふふ、貴方ったらそればっかり……」
国王はムスッとした顔で立ち退いていくユートを睨みつけるのであった。




