十話 それぞれの心情
「あれ?知りませんでしたか?」
「知らないわよ!魔法学院に通っているのに魔法が使えないなんて前代未聞だわ!」
「はぁ……」
魔法学院において評価されるポイントは座学でも無く、戦闘技術でも無い。どれだけ凄い魔法が放てるかと言う点に尽きる。
わかりやすいところで言えばアイラやマーク、それにミロクやリラなど現場一年生の中ではトップの実力を持っている彼女らは既に中級魔法を取得しており、その点を評価されている。
「確か貴方、個人戦の時の試合全てを一瞬でかたをつけていたわよね……あれはどうやったの?」
「はい?普通に⦅衝撃波⦆を使っただけですけど?」
「え?あれが⦅衝撃波⦆……ですって?⦅風弾⦆の間違いではなくって……?」
⦅衝撃波⦆は無属性魔法の一つで大気中の空気を振動させて前へ押し出す、主に護身用の魔法である。殺傷能力は高くなく、せいぜい相手の身体を後ろに押し退ける程度なのだが、あの時ユートの放った⦅衝撃波⦆はその程度に留まらず相手を吹き飛ばし意識を刈り取るくらいの威力があった。その威力は風属性の中級魔法⦅風弾⦆に引けを取らないほどの威力だった。
ユートは先生があまり信じてなさそうだったのでその場でもう一度⦅衝撃波⦆を放つ。
それを見た先生はさぞ驚いていたが、納得したような表情をした。
「なるほどね……じゃあやっぱり貴方が学院長に見定められた子だったのね。その魔力量は確かに素晴らしいものだわ……適正魔法があったなら……」
その瞬間、周囲からどよめきが起こる。
「まじか!あの学院長に……⁉︎」
「伝説級の方に見定められたとか……⁉︎」
周囲にいた生徒は各々の感嘆の声を漏らしながらユートへ羨望の眼差しを向けていた。
その光景を見て何故かミロクが誇らしそうに胸を張っていた。
だが、中にはユートを妬む様な視線を向けている者もいた。
「平民風情が……いい気になりやがって!適正魔法もない落ちこぼれが魔法学院にいる資格なんてねぇんだよ」
そう言うのは茶髪の少年、マークだった。
彼は事あるごとにユートを目の敵にしている。今回も自分の魔法を見て回りは賞賛を送っていたがユートのせいでその興味は全て逸れてしまった。自己陶酔してる彼にとっては相当な屈辱なのだろう。
普段からマークとつるんでいる貴族の息子達もユートに嫌悪の視線を向けている。
そしてそのほかユートに送る嫌悪の視線を向けている人物には意外にもあのアイラだった。
「……最初から全て持ってて……これだから天才っていうやつは……私達凡人の気も知らないで……」
アイラは不満を隠そうともせずにユートに向けてそう言い放つ。
彼女は才能に恵まれなかったために、ユートの持つ、膨大な魔力量に嫉妬していた。
周りに囲まれながら質問ぜめにあっていたユートの耳にもアイラの声は届いていた。
それを聞いたユートの表情は少しばかり曇っていた。
(天才、か……そうであったならどれだけ良かったか……もしそうだったならあの時も……)
アイラは知らない。
ユート・ラルシエールと言う少年は決して天才なんかではない事を。
ユートには人にもてはやされる様な力なんてなに一つ持ってなどいなかったのだから。




