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双神の御子  作者: 南瓜遥樹
第一章 学院対抗戦編
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八話 ユートの実力

「力を貸してもらうよ、イルナギ!」


 瞬間、ユートからとてつもない魔力が奔流した。


「ぐっ……⁉︎なんだそのオーラは……?」


 男は変貌したユートに驚き目を見開く。

 ユートが変化したのは雰囲気だけではない。

 その黒い髪には紫色が加わり、瞳の色も黒から琥珀色に変化していた。


「今から死ぬあんたが知る事ではないよ」


 ユートは淡々と男にそう告げる。


「くそっ!だが、色が変わったくらいで強くなったつもりか?」


 男は短刀を構え直し、再びユートへ迫る。


「死ね」


 男は先程とは数段速い斬撃を繰り出す。

 今のユートには避けられまいと踏んだ怒涛の攻撃だ。


 しかし、男の攻撃はユートに届くことは無かった。それどころか何故か男の脇にその短刀は刺さっていた。


「は?」


 男は何が起きたのか理解できず、自らの脇を見る。そこからは真っ赤な血がどくどくと止めどなく流れてきている。


「くそっ!」


 男はこのままでは危険だと判断し後方へ飛び退く。


「逃すと思うか?」


 しかし、それにいち早く察知したユートは男を逃すことなくビッタリと張り付いたまま剣を振り抜く。


「ぐあぁぁぁ!」


 ユートの剣は男の肩から腰まで斜めに斬り裂く。

 流石にこれには堪らず男が苦悶の声を上げる。


 致命傷を受けた男は立つこともままならずその場に膝をつく。

 そんな彼をユートはまるで虫けらを見るかのような目で見下ろしていた。


「はぁ……はぁ……くそ、まさかこんな化け物を相手にするとはな……」


「……」


「なるほど、貴様もその手を相当血に染めたな」


「ただの学生じゃない……貴様はもっと悍ましい人ならざる……」


 ーーーシュパッ!


 男の言葉は最後まで続くことは無かった。


 ユートは男の首を跳ね飛ばしその返り血を浴びる。

 全身から漂う膨大な魔力を帯び、血を浴びた姿はまさしく"鬼"そのものだった。


 その頃、ミロクはひどく怯えていた。

 それは目の前で繰り広げられていた本物の殺し合いから来たわけではなく、目の前に移る、一人の少年からだった。


 ユートの雰囲気が変わった時、ミロクはユートの人格が豹変したと感じた。

 しかし、それはある意味では正解である意味では間違っている。

 そう、ユートは人格など変わっていない。あれもれっきとしたユートの素顔なのだ。


 それでもユートを普段の一面しか見ていないミロクは戦闘中のユートに恐怖し、拒絶する。


「あっ」


 ユートはそんなミロクの反応を見て、胸に棘が刺さったような思いをする。

 今のユートを見て受け入れてくれる人は恐らく神話級のメンバーのみだろう。それはユートにも理解できていた。


 ーーー()()()()()()()()()()()()()()を理解できるはずもない。


 ユートの髪や瞳がスーッといつもの黒色「戻っていく。

 ユートは痛む胸を押さえながらミロクに近づく。

 近づいてくるユートにミロクはビクッと肩を震わせた。


「ミロク……」


「ひっ……!」


 ミロクはユートの声に怯えたような声を上げる。


「君が僕を怖いと言うならもう君には関わらない」


「⁉︎」


「元々僕に君とある資格なんて無いから……今日でお別れだよ」


 ユートはそう言い残し、その場を後にしようとする。

 だが不意に後ろから服を摘まれ、その足を止めた。

 ユートが振り返ると、震えた手で涙を浮かべたミロクが服を摘んでいた。


「いや……です……ユート、さんが居なくなるのは……」


「でも……僕にはそうするしかないんだ……」


「確かにっ!……さっきのユートさんはまるで人が変わったようで恐ろしかったです……今も震えが止まりません……」


「だったら……「でもっ!」」


「ユートさんが怖いだけの人ではない事は私が知って居ます!」


「そんなこと……」


「私を助けてくれました」


「え?」


「もう無理だって諦めてました……またあの時の苦しみを味わうんだって……そう思ったら何もかもが私の中から抜け落ちたようで……そんな私の心を救ってくれたのはあの時駆けつけてくれたユートさんなんですよ」


「……怖くないのかい?……僕のこと……」


「怖いです……でも……ユートさんが居なくなる方がもっと怖い」


「⁉︎」


「だから……一緒にいましょうユートさん。私はユートさんから絶対に逃げません」


 そう言った彼女、ミロクの顔は先程までの怯えた表情など微塵も無く、ユートの心を晴れやかにするような満面の笑みだった。


(あぁ、あったかいなぁ)


 ユートの目から自然と涙が溢れる。

 それは嬉しさからくるものだった。


「ありがとうミロク。これからもよろしく」


「はい!」


 ユートは袖で目を拭いそう返した。


 この光景を見ていたユートの中にいるイルナギは感慨深いような声をもらす。


『ユートもようやく()()()()()なってきたなぁ』


 この呟きが今のユートに届く事は無かった。


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