二話 Aクラス
ユート達廊下を歩いていると1Aと書いてある札がぶら下がっている教室を見つけた。ここが今日からユート達のクラスである。
ユートが扉を開けるとすでに結構の人数の生徒が集まっていた。席に指定は無いらしく、知り合い通しで固まっているところもちらほら見える。
ユートは空いてる席を確認する為に辺りを見渡しているとちょうど窓側の最後尾の席が空いていたのでそこに座ることにした。当然ミロクはその隣に座る。
先程まで随分賑やかだったのに対し、今はてんで静かな教室。どうやらユートとミロクにかなりの注目が集まってるらしい。
ユートは特に気にすることもなく窓の外を頬杖をつきながらボーッと見ており、ミロクは居心地悪そうに俯いている。
ミロクはあんな事があったばかりの為、ユート以外の人と接するのがどうにもまだ慣れないらしい。
「おい!そこのお前!」
しばらくすると突然、ユートに声がかかる。ユートはめんどくさいなと言ったような表情でそちらに目を向けるとそこに居たのはユートと一緒に受験していた推薦者の一人、茶髪の少年だった。
「貴様のような平民がこの高貴なる俺と同じクラスとはな……精々恥をかきながら学院生活を送るがいい」
言うだけ言って茶髪の少年はその場から去って行った。ユートは何がしたかったのだろうと言った表情をしており、隣に居たミロクでさえ先程のやり取りを見て呆けていた。やり取りというほどのことでも無いのだが。
「あいつマーク様に目を付けられたのか……終わったな」
「あぁ、僕もあのレーヴィン家の長男で魔法の才も卓越してると聞いてるよ。」
「それは俺も知ってるぞ!確か二属性適正で今年の推薦者の一人らしいな」
「まじかー、同じクラスになった以上、俺ら霞んじまうな」
どうやら、茶髪の少年はマークというらしくこの国の三大公爵の一つ、レーヴィン家の長男だった。
彼は根っからの貴族至上主義者でそのせいで平民であるユートに何かとちょっかいをかけるのである。
だが先程の会話をちらほら聞いていたユートは内心驚いていた。
(あのマークとか言う人程度の魔法が卓越してるか……だったらこの学年でらあの王女様以外は期待できないかな……)
確かにマークの魔法を見た時はユートもまあまあ感心していた。だがそれはあくまでその年でそれなりの力を持っているなと言う話で実践で行使するにはあまりにもお粗末過ぎるものだ。恐らく三年間ここで技術を磨けば英雄級くらいにはなれるとユートは考察していた。
そんな事を思っていると、教室の扉がガララと開いた。
入ってきたのはまさにユートが今一番期待してる人物、王女様ことアイラ・ハウード・ミレニアムその人だった。
アイラが入ってきた瞬間、教室にいた人達は一斉に黙りこくりそちらに視線を向けた。そしてアイラを見て皆一様に見惚れていた。
それもそのはず、長く伸ばした琥珀色の髪をなびかせながら歩くその姿は王女と呼ばれるにふさわしい気品を兼ね揃えており、キリッとした目つきからは少々キツいイメージがあるがそれが逆に彼女の美しさを際立たせていた。
アイラは特に迷う事なく空いている席に座る。その席はユートの席から斜めに前だった。
アイラが席に座ったと同時に教師と思わしき青年が教室に入ってきた。
「皆さんこんにちは。このクラスを受け持つ事になりましたレイフォン・トラジストです。宜しく」
「「「宜しくお願いします」」」
「では今日は簡単なガイダンスから始めて明日はいよいよ君たちの実力を試す個人戦がある。心してかかってほしい」
レイフォンはそう言って爽やかに笑う。どうやら女子には受けが良かったらしくキャーキャー言いながら盛り上がっていた。逆に男子達からは怨嗟の視線が向けられているが。
レイフォンは特に気にした様子なく説明を初めて言った。
この個人戦は上位五人に入ると一ヶ月後に行われる学院対抗戦の出場権が獲得できる。これは毎年一年生のみが行うイベントらしく、魔法学院の質を各学院に見せる為に行われるらしい。
このイベントには国王も来席する為、生徒にとっては実力のアピールをする良い機会なのである。宮廷魔法師の目に止まれば学院卒業後、入団することもできる。
とまぁこんな感じで入学早々かなり大イベントで生徒達も皆入学したばかりなのに浮かれてる者は一人もおらず寧ろ気合が入っていた。
そんな中ユートは特に興味ないと言った風に窓を眺め、ミロクは最初から諦めたように落ち込んでいた。
だがこの時のミロクは思いもしなかっただろう。今の自分の実力がどれほどのものかを。そしてそれを分かっているかのようにユートはミロクを見て口の端を吊り上げた。
レイフォンの話も終わり、ユートとミロクが帰ろうとすると突然声がかかる。
「ねぇ、そこの君!」
「?僕のこと?」
「そうそう、黒髪の君!その髪といい瞳といい黒色なんて珍しいね」
声を掛けてきたのは甘栗色でショートカットの髪をした活発そうな女の子だった。
「えーっと、君は……?」
「ボクの名前はリラ・クラネルだよっ!宜しくね」
「あ、うんリラさん宜しく。僕はユート、こっちがミロク」
ミロクはユートに紹介されてペコリと頭を下げる
「リラでいいよ!ボクもユートとミロクちゃんって呼ぶから!」
「分かったよ、リラ」
「私はリラさんのままで」
「それで何の用?」
「えっとねー、実は明日の為にユートくん達にボクの練習に付き合ってほしいんだ」
「練習?なんで僕に頼むんだ?」
「それはユートが一番強そうだからだよ!」
「え?」
「ボクそういうの何となく解るんだよね!だからお願い!練習に付き合って!」
「ま、まぁ付き合うくらいなら構わないけど……ミロクもそれでいい?」
「私も構わないです」
「二人ともありがとう!宜しくね!」
リラは手を出してくる。
「あぁ、宜しく」
ユートはリラの手を握り、握手をする。
ユートは内心驚いていた。
ユートの今の実力は本来の十分の一にも満たない。それは自身に⦅身体劣化⦆を掛けているからである。よって今のユートは学院長であるデュッホやエリエル、シルフと言ったような絶対的強者のオーラは出ていない。なのにリラはユートの実力を見破った。正確には見破った訳ではないのだがリラはユートが強いと解ったのだ。
(ただの直感か……あるいは……)
ユートは目の前のリラという少女に僅かながらの警戒をしながら彼女の後についていった。




