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双神の御子  作者: 南瓜遥樹
序章 学院入学編
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十四話 正体

 あっけない幕引きとなったユートの試験。

 ユート達推薦者三人は無事合格を言い渡され、現在ユートは学院長室にてここの学院長であるデュッホと対面していた。他の二人は試験終了後帰宅した。


「して、ユートくん。無事合格したわけじゃがお主の望みとはなんなのじゃ?できる限りの要望には答えようぞ」


「では単刀直入に言います……この学院に僕が紹介する子を入学させてほしいです」


「ふむ……なかなか厳しい要望じゃな……推薦者である君が推薦した人物、と言うとなかなか融通が利かなくなってしまう……」


「そこで学院長自らが推薦した人物として扱って欲しいんです」


 ユートの狙いはこれだった。ユートが学院に入れたい人物、つまりミロクを学院長の推薦者としてこの学院に入れる事こそユートが望んだ願いだ。

 もともと受験すらしていないミロクを学院に入学させる事は不可能、 なればこそこの学院の中で一番偉い学院長自らが推薦すれば状況は変わってくると言うのがユートの考えだ。だがそれは学院長、つまりデュッホがその話を呑めばの話である。


「確かに儂が推薦すればお主の要望は通るじゃろう……しかし儂にとってそれはメリットになりうるのかのう?」


 デュッホは目を細めてユートを見据える。その目はユートの真意を探っているようである。


(やはりか……)


 予想通りの質問にユートは落ち着いてここでの最適解を出す。


「その推薦する子が、固有魔法の使い手と言えば?」


 その瞬間、デュッホの眉が僅かに動く。


「ほぅ、それは嘘ではなく?」


「間違いないですね。しかし現状の彼女にその力を使える域に達していません。それでは宝の持ち腐れでしょう。故にこの学院で彼女の能力を高めるべく彼女の推薦をお願いしました」


 ユートはデュッホを見据え返す。その目に嘘はないと分かったデュッホはふむ、と頷く。


「なるほどのぉ、確かにそれは今後役に立つであろうな……してその者はそれを望んでいるのか?」


 デュッホは声のトーンを落として鋭い眼光をユートに向ける。僅かながらも殺気が漏れている。

 だがそんな状況においてもユートは物怖じせず平然とデュッホを見据える。この程度の殺気では今まで様々な死線をくぐり抜けてきたユートには威嚇にもならない。


「えぇ、通うのは彼女の意志ですよ。僕はその手助けをしているまでです」


 ユートの言葉を聞きデュッホは殺気を引っ込める。すると先程まで重苦しかった空気が一気に晴れた。


「……儂の殺気にすら物怖じせぬとはな、お主の力はすでに一般教師を超えておるのぉ。わかったのじゃ。その者の入学を認めよう」


「ありがとうございます」


 ユートは素直に頭を下げる。


「しかし二つ条件があるのじゃ。一つはその者とお主のクラスは同じにする。つまりその者の面倒はお主が見てくれ」


「その程度のことでいいならお安い御用です」


「頼んだぞ。して二つ目はお主の正体を明かしてほしい」


「⁉︎」


「お主が只者でないことはあのシルフくんから推薦を受けてる時点で分かっておる。これが呑めないならこの話はなしじゃ」


「……」


 ユートは悩んだ。

 ここで素性を明かせば今後リスクが少なくとも伴われる。今回のことは別に誰かに頼まれたことではない。寧ろユートが一方的にミロクを学院に通わせようとしているのだ。

 普段の彼ならば絶対にこんな事はしない。何故彼はミロクの為にここまでするのか、それはユート自身にも分からなかった。


(そもそも何故あの日、彼女を拾ったんだ……?)


 〜〜〜


 ユートはミロクを三日前、路地裏で拾った。普段のユートならば見て見ぬ振りをしていたかもしれないのに……


(いや……本当は分かってたんだろうな……)


 ユートが路地裏で彼女を見つけた時、ミロクの目を見て何となく自分と照らし合わせていた。

 ユートはその目をよく知っている。

 世を恨み、何もかもどうでもよくなり、死んだ方がましだと言っているようなその目を……

 何故ならユートも同じ目をしていた頃があったのだから。


 その目を見た時ユートはまるで自分を見ているような感覚に陥った。

 五年前のあの日、もし自分があの人に助けられていなかったらきっと今の自分はいなかった。かつて自分を助けてくれた人の言葉を思い出す。


『君はこの世界を憎むかい?恨むかい?それともいっそこのまま死にたいかい?』


『……』


 そう言って彼女は手を差し伸べてくる。


『君がこれまで受けてきたつらみ恨みは私には分からない……だがもし君がこの手を取るのならば、私が君のこれからの人生を導いてあげよう』


『……』


『付いて来い!これからは私と……いや私達と楽しもうじゃないか、この世界を』


 そう言って彼女は太陽のように笑った。

 その時の彼女の笑顔があまりにも眩しすぎて暗闇に沈み返っていた心は徐々に光で照らされていった。その時、僕は彼女に付いていくと決めて、その手を……


 あの時の彼女の様に誰かに手を差し伸べられる、そんな人になりたい。そう思ったからこそユートはあの時ミロクを助けた。


 そこまで考えてユートは結論づける。


(何かの縁だ、最後まで面倒くらい見てやるさ)


 ユートは不敵に笑いながら答える。


「分かりました。僕の素性は明かします」


「良いのか?随分葛藤があった様じゃが……」


「まぁ、いずれ分かってしまうことかもしれないので……遅かれ早かれという奴です」


「分かった、お主がそれでいいなら良いじゃろう」


「はい。ただしこの事は他言無用でお願いします」


「それは保証するのじゃ。生徒のプライバシーを守るのも教師の務めじゃからな」


「では、改めて名乗らせてもらいます……僕の名前はユート・ラルシエール。魔法師階級は神話級です」


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