九話 提案
「ユートさん、朝食の準備が出来ましたよ!」
「分かった、今いくよ」
庭で素振りを行なっていたユートに獣の耳と尻尾を持った少女のが声を掛ける。
昨日ユートが提案してユートの家に住まうことになった獣人の少女ーーーミロクはただ住むだけでは良くないと思い、家の仕事は任せて欲しいと打診した。ユートは気を使わなくてもいいと断っていたのだが、それでもミロクは「何か手伝わせて下さい!」と強く言ってきた為、先にユートが折れて家の事は基本彼女が行なっている。
(なんかダメ人間になってる気がするなぁ……)
ユートは何もしていない自分に後ろめたさを感じながらも汗を拭いミロクの後を追ったのだった。
「そういえばミロクの適正魔法って何?」
パンをちぎり一欠片くわえながらユートはそんな事を口にする。
「私の適正魔法ですか?えっと…元素魔法の火属性と……一様、固有魔法に焔狐というのがあります」
「ぐふっ!こ、固有魔法だって⁉︎」
ミロクの返答を聞いてユートは驚きむせた。
ユートが驚くのも無理はない。なにせ固有魔法とは数にしておよそ一万人に一人いるかいないかと言われるほど貴重なものである。
(それにしても炎狐……恐らく獣人族の個性から稀に発現する獣化の能力…一回だけ見たことあるけど確かにあれは凄まじい能力だった……)
ユートは過去の自分の記憶を思い出し、冷や汗をかく。
「どうしたんですか?ユートさん」
ミロクは急に黙りこくったユートを怪訝そうに見つめる。
「い、いや、なんでもないよ。それにしても固有魔法なんてすごいね!」
「い、いえ!そんな大した事じゃないです!それに火属性魔法だって初級魔法の【火球】程度しかできませんし……そもそも固有魔法なんて持ってるだけで使えた事がないんです……」
「そうなの?」
「はい…」
ミロクはそう言ってしゅんっと項垂れる。
(まぁ固有魔法が使えないのはしょうがないと思うけど)
固有魔法はその名の通り自分にしか使うことのできないオリジナルの魔法である。これは本人の実力に依存している。だからこそ、固有魔法を使うに値する実力が伴っていないと発動すら出来ない代物である。
(もし、ミロクがその実力をつければ……)
ユートは彼女の才能を高く評価していた。そしてその力はとても強大になるであろうと確信している。
そこでユートはミロクに提案する。
「ミロク、もし良かったら魔法学院に一緒に通って見ない?」
「私が魔法学院にですか⁉︎」
唐突なユートの提案にミロクは素っ頓狂な声を上げる。
「いやいや!私才能無いですし無理ですよ……」
しかし、自分に自信のないミロクはまたもや顔をうつむかせてしまう。
そんな彼女にユートは、優しく語り掛ける。
「大丈夫だよ。ミロクは凄い才能を持ってる!だからもっと自分に自信を持って」
「私に…才能ですか……?」
「あぁ!間違いないよ。僕が保証する」
そう言って胸を張るユート。
そんなユートを見てミロクはクスッと笑う。
「分かりました。ユートさんがそういうなら行ってみます。でも勉強とかしてないので受からないと思いますよ?」
「そこは大丈夫!僕がなんとかするよ」
「なんとか……ですか?」
ミロクは訝しげにおうむ返しをするがユートは大きく頷く。そんなユートを見てミロクは詳しいことは聞かずに納得する。
そんなこんなでミロクは魔法学院に通うことを決めたのだった。
次回から学院行きます




