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俺と除霊とブラックバイト  作者: ゆずさくら


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96/103

(96)

 星? いや、筒の出口に違いない。

 俺は両腕に力を込めた。

 近づくと明るい部分は大きくなり、周囲が照らされ、筒状の壁もはっきりわかるようなってきた。

 と同時に、敵の姿も見えてきた。

 明るい部分に、黒い影がいくつか現れた。意志を持って動く物体の影。

 1、2、3…… 12の影が見えた。

 一番近くにいた影から、光が伸びてくる。

「?」

 それが何かを認知した時は、避けるには遅すぎた。俺は両手をその光の方に向けて霊弾を撃つ為の力を込めた。

 俺の拳の先にあった霊弾の光が、影から伸びてきた光を弾いた。

 よく見ると、十二の動く影も、俺と同じように二つの光を放ちながら、この空間を動き回っていた。

 霊弾の光の反動を利用して動いている、ということだ。

「それなら!」

 立場は同じのはずだ。先に霊弾を当てれば倒せるに違いない。

 両手の先に霊弾の光をともし、空間を縦横に移動しながら、その十二の動く影を狙う。

 動きの遅い、影を見つけ、素早く回り込むと、右手をピストル風に構えて人差し指を伸ばす。

 霊弾が俺の指先からビームのように伸びていく。

 体は反動で逆方向に流れる。一方の手にも霊弾の光をともしてその反動を抑える。

 影を俺の霊弾が貫く。

 影は光を放ちながら、はじけ飛ぶ。

「ひとつ!」

 俺は思わずそう言っていた。

 すると、別の影が霊弾をいくつも放ち、近づいてきた。

 その弾の合間を縫うようにして、影の正面に向かう。そして、衝突する寸前でかわして、影の背後から俺の霊弾が貫く。

 はじけて消えていく影が放つ光で、俺の姿が闇に浮かび上がる。

「ふたつ」

 複数の霊弾が俺に向かって放たれる。

 その霊弾の光跡に重ねるように俺も霊弾を放つ。

 こっちにあたるか、という寸前で避けると、それを撃った影は俺の霊弾に抜かれて、はじける。

「みっつめ」




 斜めなった天井に、映像が表示されている。

 そこには九鬼と戦う一人の男が映っていた。

 指令室と思われるその部屋の一段高い場所に、腹の出た指揮官が座って戦況を確認している。

 そして、同じくその映像を見ながら、戦場と連絡を取り合う部下へ言った。

「もう三鬼もやられたのか」

「はい。相手は戦いに慣れているようで、この空間で戦うのが初めてとは思えません」

「初めてでも初めてでなくともかまわん。わざわざこの空間に引きずり込んで、我々にチャンスが回ってきたんだ。さっさと処理するんだ」

「はい」

 腹の出た男は、鬼の配置と敵の映像を見ながら、言った。

「鳥かご作戦だ」

「……」

「すぐ指示しろ」

「はい!」

 部下は、付けているインカムを口に下げ、急いで指示する。

「鳥かご作戦、決行せよ」




 俺は、ぐるぐると立体的に動く影に取り囲まれ始めた。

 動きからすると、俺が球の中心に相当するようだ。

 俺が動くと、全体が引っ張られるように動いてきて、また円運動を始める。

「そこっ!」

 正面に回ってきた敵に霊弾を放つと、上下、または左右をとっている影の二機から霊弾が放たれる。

 その霊弾から俺が逃げた方向に正面に回った敵が撃つ。

 つまりは俺の動きを限定して、その先読みをしよう、という作戦のようだった。

「円運動してるなら!」

 影の一機をじっと追えば、移動する先に霊弾を放てるはず。俺は体を回しながら影一機の動きを追った。

「?」

 敵の影が、弾かれたように俺の視界から消えた。

「どういうこと?」

 言っている間にも、霊弾の挟み撃ちが始まり、俺が避けると俺の進行方向にも霊弾が飛んでくる。

「くそっ!」

 どうにもならないその動きにイライラしてきた。

 俺は何度か動きを見ながら、俺を取り囲む円運動と、交わった瞬間に角度を変えて動き出す、を繰り返していることがわかった。消えているのではなく、こちらの予測と違う方向に動き始めるから、俺の視界から消えるのだ。

 敵の霊弾を避けながら、俺はその動きの規則性を考え続けた。しかし、どうにも結論が出ない。

 俺はやけになって、霊弾を撃つのをやめ、頭上に飛び続けた。球の中心である俺がスピードを上げると、囲むように合わせてくる連中の円運動が歪み始めた。

 その瞬間、俺には影の二機がぶつかって角度を変える場所が、ぶつかるより先に見えた。

「そこだっ!」

 まだ何もいない空間に向かって人差し指を向けると、思い切り霊弾を撃ち込んだ。

 影の二機は俺の霊弾に吸い寄せらるように重なり、俺の霊弾が貫いた。

「五つ」

 重力はなかったが、息が出来たので、空気はあるようだ。

 撃ち抜かれた鬼が光りながら散っていく時、轟音があたりに響く。

 その光に照らされる、他の鬼の姿が見えた。

 目は頭の方に一つだけ。その目はライトのように光っていて、縦、横と十字に動くようになっている。体全体は黒く、背中と足に霊弾の光がともされ、前後や上下左右へ移動できるようになっていた。手に持った長筒から霊弾を発射し、こっちを狙ってくる。

 突然、俺の頭に、どこからか声が届いた。

「……だれ? 何? スカート付きって…… あの鬼のこと?」




「影山くん!」

 と冴島麗子が叫んだ。

 麗子と橋口の力で、前の部屋に居たエア・エレメンタルを倒したのだ。

 そしてやっと影山が入っていった部屋に来たところだった。

 麗子が呼びかけた先の空間には、誰もいない。

 麗子は橋口かんなの方を振り返る。

 かんなは両手を広げて、首を横に振る。

「ここの部屋に入ったのは間違いないんだケド」

 この部屋には扉がない。行き止まりだ。

「いない…… ということは、ここに、なにか罠がかけられていた、ってこと?」

「単純に考えれば」

 麗子の目が吊り上がった。

「単純ってなによ。しっかり考えたらどういうことが分かるのよ」

「……」

 橋口はトレンチコートの前を開け、サマーセーターの胸元を少し開いてパタパタと風を入れる。その下には大きな胸とその谷間がのぞく。

 麗子はそれを睨みつけながら近づく。

「黙ってないで何か言ってみなさいよ」

 橋口がつつくように指さす。

「あれ。机の上で、一つだけ転がっている試験管があるでしょ。(すす)でもついたように真っ黒。あれなんか怪しいんじゃない」

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