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俺と除霊とブラックバイト  作者: ゆずさくら


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91/103

(91)

 記憶も戻らない状態なのに、妹は戻ってきた、というのか。

「蘆屋さん! 大丈夫?」

「ちがうよ。私、さやか」

 音が、微かに記憶にひっかかる。声も蘆屋さんの声ではなくなっている。

「……」

 冴島さんが蘆屋さんの背後に回り、俺に言う。

「話しかけてあげて。さやか、って」

 俺は蘆屋さんであることを忘れることにした。

 記憶は戻ってきていないが、妹を呼ぶ。

「さやか」

「お兄ちゃん」

「さやか、俺を覚えているのか?」

「何を言っているの。あたりまえでしょ」

「俺は覚えていないんだ。ここに居たこととか、お前のこととか」

「大丈夫、一緒に中に入ろう。あの時のことを思い出すよ。だって……」

「だって?」

「ううん。なんでもない。じゃあ、お兄ちゃん、お家の入り方も忘れちゃったのね」

「ああ」

「じゃあ、ちょっとこっちきて」

 俺はさやかに連れられて、冴島さんと橋口さんから離れた。

 そして、家の鍵の開け方を聞いた。

「……さっきの話、ほんとうか?」

「本当よ。私が鍵なんだから」

「……」

 俺は、冴島さんと橋口さんのところに行った。

「ちょっと中に入る支度をするので、こっちで待っていてください。鍵が開いたら呼びますから。見ないでくださいね」

 冴島さんたちを誘導して、玄関から見えない位置まで連れてきた。

 いそいで俺はさやかの元に戻る。

「さやか、本当に間違いないんだな?」

「本当に思い出せないの?」

「……」

「本当よ。ほら、私が扉に立つから、お兄ちゃんが鍵を開けて」

 そう言うとさやかは瞳を閉じて、少し上を向いた。

 唇を見つめながら、本当にこれで開くのかと何度も考えた。

 しばらくしてから、俺は決断した。

 やるしかない……

 俺はさやかの(・・・・)(・・)を開いた。

 ノブを回すと、屋敷の扉が開いた。

「……ちょっと待っていてくれ。冴島さんたちを呼んでくる」

「うん」

 俺は屋敷の角にいた冴島さんたちを呼んだ。

 冴島さんも橋口さんも、何か俺を見る目が変だった。

「俺の顔になんかついてます?」

「……」

「今、何をしたのか。自分の胸に手を当てて良く考えてみればわかることなんだケド」

「えっ? 橋口さん、それどういう意味ですか?」

「……なんでもないんだケド」

「見ないでくださいって言ったはずです!」

 俺が橋口さんを問い詰めようとすると、冴島さんが俺を押し返すようにして言った。

「ほら、いいから早く入るわよ」

 扉で待っていたさやかに合流し、俺たちは屋敷の中に入った。

 窓にはカーテンが掛かっていて、部屋には明かりがなく、薄暗かった。扉の周りを探るが、明かりのスイッチのようなものはない。床は段がなく靴のまま入るようだった。

 中は広く、フロアの中心に大きなシャンデリアが釣り下がっている。正面の階段を上ったところは壁になっていて、大きな窓がはめられている。階段は左右に別れて、それぞれが二階に通じていた。

「かんな、霊圧を調べてみて」

「麗子、それよりこの壁の模様……」

「!」

 冴島さんは何かに気づいたようだった。

 壁に触れている橋口さんは、スマフォをかざして写真を撮っている。

 俺には白い壁以上でも以下でもなかった。

「何が……」

「魔法陣と呼んでもいいかもしれないわ。何か細工が施されている」

「建物の壁にこんな細工をするんだとしたらいくら掛かるのかしら。想像もつかないんだケド」

「かんな、後でその画像くれる」

 橋口さんがうなずいた。

 屋敷の奥の方を向く。

「それ以外は、西洋風の、いかにもなお屋敷ね」

 冴島さんがそう言った。これだけ屋敷の中の様子を目にしても、俺にはここに居たころの全く記憶がな戻らない。せっかく屋敷(ここ)に入れたというのに、何も思い出さないなんて……

「お兄ちゃん、そこだめ!」

 俺は正面の階段を上がろうとして、何かに(・・・・)ぶつかった。

 立ち上がろうとすると、その瞬間にまた何かにぶつかった。

 さやかが来て、俺を後ろに下げてから、立ち上がらせてくれた。

「二階には入れないわ。段階(・・・・)があるの」

「階段じゃなくて?」

「……準備が必要、という意味よ。お兄ちゃん」

「なるほど」

 俺は二階を見上げた。

 準備…… どうしたら二階に上がれるというのだ。

「お兄ちゃん、こっち」

 さやかが、左にある両開きの扉に立って俺を呼んでいた。

「こっちの先に……」

 さやかが扉のレバーを下げようとした瞬間。

「危ない!」

 冴島さんの声だった。

 同時に、俺には命令(コマンド)が入っていて、まったく動けなかった。

 扉からは煙が上がっていて、さやかは、尻餅をついている。

「良く見えてるじゃない」

 扉の向こう側から、女の声がした。

「一人はやれると思ったけど。残念」

 金属が擦り合わさる音がして、声の主が近づいてくる。

 扉から、馬上から使う大きな槍が突き出てきた。

「あ、あたし、いつの間に?」

「さやか?」

「あんたそれ、あたしに向かって言ってる?」

 確かに声がさっきと違う。

「蘆屋…… さん?」

「なんでそんな確かめる口調なの?」

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