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俺と除霊とブラックバイト  作者: ゆずさくら


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(54)

 俺がバイト先の駅を降りると、通りは警察車両、と報道関係者らしいカメラやマイクを持った人間であふれていた。その人たちをかき分けながら進んでいき、バイト先のビルの扉から店のあるビルへ入った。

 裏口の扉の番号を入れて、厨房に入る。

 チーフの代わりで、今日は店長が入っているようだった。店長はパーマをかけた髪を肩まで伸ばしている男性だった。店長は大げさに弾くように指を動かし、スマフォ画面をスクロールさせていた。

「おはようございます」

「おう。そと、まだマスコミ連中いたか?」

「ああ、いっぱいいましたよ。何があったんですか?」

「殺人だよ。聞いた話だが、顔が真後ろ向いてたってさ」

 店長がスマフォから目を離さないので、何か書いてあるのかと思った。

「そこになんか書いてあるんですか?」

「いや、ついさっきの話だから、あんまし情報ないな」

「じゃ、それなにやってるんですか?」

 俺はかけてある自分の前掛けをとり、紐を結びながら店長に近づいた。

「おっ、見つけた。ほらっ」

 店長が見せた画面には、膝をついて胸を地面につけているのに、顔が空を向いている男の写真があった。

「こんなのすぐ消されちまうからな。保存保存」

「気持ち悪いっすね、消したほうがいいですよ」

 俺は店を開ける支度をしに店内に入った。

 そのシャッターを開け、入り口の自動ドアのカギを開け、電源を入れた。

 急に、自動ドアが開いた。

「すみません誰かいますか?」

 入ってきたのは警察官だった。

 俺はどうしよう、と悩んでから、何か勝手に話す前に店長を呼ぶべきと判断した。

「ちょっと待ってください。店長呼んできます」

 チーフがいなくて良かった、と俺は思った。チーフはだったらいきなり犯人にされそうだ。

 しかし、店長をしみじみと見た時、こっちもそれなりに怪しいと思った。

「店長さんですね。私は渋山署の佐々木というものですが。お話伺ってもよろしいですか」

「いいよ、いいよ。なんでも聞いてよ。ほら、立ち話もなんだからそこ座ってくださいな」

「そこの通りで殺人事件がありまして……」

 警官二人と店長で話を始めていた。

 端的に言えば、目撃情報を探しているようだった。

 目撃情報でなければ、不審者とか、このストリートでの情報。それもなければ、外の防犯カメラの映像の提出の話、と進んでいく。

「防犯カメラか…… そうだ、たしか一つだけ外が映るのがあったかな」

 店長が店内で机や椅子の準備をしている俺を見てきた。

「おい。お前防犯カメラの映像見る方法わかるか?」

 初日にいきなり説明された時、俺はなんのバイトをするためにやとわれたのか悩んだのを覚えている。

 まだ二日目だったが、それが役に立つとは思わなかった。

「昨日教わったので、分かると思います」

「あいつについて行ってください」

 俺は二人の警官の視線を同時に受け、すこしビビった。

 俺は店の隅にある小さい扉を道具を使って開け、小部屋に入った。警官もそれに続いて入ってくる。

 狭く、機械の熱気がこもっていた。

「これです。いつぐらいの映像を見ますか?」

 俺はリモコンを持って、画面を切り替えていた。

 外が取れるのは一台しか設置していない。暗視カメラではないから、外が暗くなれば、荒く、ぼやけた映像になってしまう。

「じゃあ、始めは今朝かな。日の出…… 六時くらいかな」

「六時ですね」

 俺は再生を行った。

 店のシャッターが映っている。通りにトラックが入り始めている。たまに人も通行しているが、画面の隅なので歪んでしまっている。そもそも、リアルタイムに映像を記録していないから、普通に再生しても一時間の流れが十分ぐらいで見れてしまう。

「……それでは、昨日の夕方ですね。ここは閉店何時ですか?」

「二十一時半です。人がいなくなるのはその一時間後ですけど」

「じゃあ、二十時半から一時間」

 俺は警察の人が言うままにセットして再生を行った。

 さっきの映像とは違って、かなり人通りがあって、いろんな人が流れていくのが映っている。

 髪を剃ったのか、抜けたのか、頭の地肌が見えている男性が店の前を行ったり来たりしている。スマフォで話をしながら、連れの男と入ってくる。連れの男は皮の上下を着ているが、体つきは随分スリムで、華奢な男だ。

「……」

 さらに映像が進むと、窓の外にたまり場として集まり、店内を覗き込む男が何度も映る。店員の質が売りの店だけあって、たまにチーフが出ていって人を散らすが、しばらくするとまた集まってくる。

「なんですか、このジェルでべったりした頭の男は」

「あっ、それは店のチーフなんです。店の前に男の人が溜られるとお客様が入ってこなくなっちゃうんで、追っ払っているんですよ」

「ここは良く通報いただきますよね」

 チーフが追っ払っても窓の外にしつこく覗き込む奴が居る時は、警察に電話をしているのだ。

「はい」

「あっ、そこで止めて」

 画面にまたさっきの髪のない男と、皮の上下を着た男が映っていた。ちょうど店を出るところだ。

「?」

 腕に違和感があった。GLPが何かを知らせようとしているのではないか、と思うのだが、それがどういう意味なのか、いつもわからない。

「……」

 警察官も二人でモニタをずっと見つめている。

「なんか変だ」

「……う〜ん。なんだろう。変だとは思うんだけど」

「すみません、映像のコピーを頂いていいですか昨日の夕方ぐらいから」

「えっと、店長に話してもらって良いですか?」

 俺はとりあえず言われた映像が消えないようにプロテクトの設定をする。

 そして、小部屋を出て店長のところへ行く。

「店長さん。映像のコピーを頂きたいんですが」

「ああ、良いですよ」

 店長は間髪入れずに俺の方を見て言う。

「コピーしといて。どれくらいかかる」

「コピーしたことないからわからないです」

 店長は警察に向かって肩をすぼめる。

「申し訳ない。とりあえず、午前中にはやっときますよ。午後になったら取りに来てください」

 店長が言うと、警官二人は店長に敬礼をした。

「お願いします。では失礼します」

「ご協力ありがとうございました。失礼します」

 俺は店長にトン、と手で押された。

「何が映ってた?」

「ハゲのおっさんと、その連れ? っぽい男です」

「ハゲのおっさん? ちょっと見せてみろ」

 店長が言うので、俺はまたさっきの小部屋に戻って店長に映像を見せる。

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