表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と除霊とブラックバイト  作者: ゆずさくら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/103

(48)

 そして俺たちの位置を確認すると、大きな口を開けて走り出した。

「逃げて!」

 口を開けた火狼が、橋口さんに襲い掛かる。

 俺はしっかり橋口さんの身体を捕まえて、ぐるり、と回転した。

 火狼のあごが勢いよく閉じ、ガチッと、歯がぶつかる嫌な音がする。

 寸前で俺も橋口さんも、火狼にかみ砕かれずに済んだ。

 いや、そんなことよりも…… 俺の腕には橋口さんの柔らかい胸の感触が伝わってきていた。

 すると、俺が触っている橋口さんの胸から光があふれ始めた。

「えっ? 眩しい……」

 火狼は、光を恐れて飛び退く。

 そこに冴島さんが霊弾を浴びせ、火狼はじりじりと下がっていく。

 あふれだした光が収まると、まぶたを閉じていた橋口さんが目を覚まし、自らの足でしっかり立ち上がった。

「ふう…… おかげで、火狼の呪縛が解けたわ」

「……」

「ん…… いつまで触ってるの?」

 俺は慌てて手をひっこめた。

「その杖を貸して」

 GLPから出した『鉄龍』を橋口さんに渡す。

 火狼が再び俺たちの方へ走り出す。

 大きく開けた口に噛みつかれるか、と思ったタイミングで、橋口さんは杖を押し出すように霊弾を放った。

 杖は火狼の開いた口目がけて飛んでいく。

 とがった先がのどを貫くかに見えた瞬間、火狼は体をひねり、口の脇をかすかに切って鉄龍は飛んでいった。

 火狼の足が俺の頭に振り下ろされ、俺と橋口さんは火狼の体に押しつぶされた。

 右の拳を握りこんで、火狼のしたあごを突く。

 仰向けになった火狼の腹に、左の拳を打ち込むが、すぐに前足で反撃されてしまう。

「うわっ……」

 火狼も慌てて立ち上がって距離をとった。

 冴島さんが連続で霊弾を打ち出し、火狼はさらに後退する。

 俺は頭を切ったらしく、血が目にかかってくる。

「大丈夫?」

 橋口さんが俺の血を拭ってくれた。

「痛くは…… 痛いですけど、大丈夫です」

 すると、今度は火狼が冴島さんに向かって牙を向けた。

「麗子!」 

 橋口さんが霊弾を放つ。

 俺は『鉄龍』を回収するために走った。

 霊弾を次々と打ち込まれ、火狼は避ける一方だった。

 転がっている『鉄龍』を拾い上げると、火狼は再び遠吠えする。

「えっ? 大きくなってく」

「マズイ……」

 冴島さんがそう言ったのが聞こえた。

 俺は慌てて、二人の元に戻る。

「なんで大きくなったんです?」

「あたりにいた強力な霊を吸い込んだんだわ」

 橋口さんが言う。

「屋敷くらいに大きくなってる」

「こんなに大きい怪物、どうしたら……」

 冴島さんは無言で両手を振り上げ、同時に振り下ろした。両手の指の数、つまり十発の霊弾が同時に発射された。

 霊弾が輝きながら火狼目がけて飛んでいき、すべてが到達した。

 同時に、火狼はまぶしい光に包まれる。

 光が収まると、そこにはかすり傷一つない火狼の姿があった。

「霊弾全部食われてるんだケド」

「く、食ったんですか?」

 橋口さんはうなずく。

「食ったというのはあれね。どっちかというと吸い込んだ、と言った方がいいかしら」

「あのくらいの大きさになれば、霊弾状態の霊を取り込むこともできるわね」

 突然、袖をひかれた俺は、後ろを振り返る。

 そこには、ショートカットで、つややかで真っ赤な唇の女性が立っていた。

 俺は思わず大声を出していた。

「美紅さん!」

「もう無理よ、あいつにはかなわないから、早く逃げて」

「この女、敵よ! さっき火狼と一緒にいた奴」

 橋口さんは至近距離から指を向け、霊弾を撃とうとする。

 俺は慌ててその手を跳ね上げる。

「橋口さん、やめてください。俺の知り合いなんです」

 美紅さんが言う。

火狼(あいつ)はこの場の霊を吸い込めるだけ吸い込むつもりよ」

「吸い込めるだけって、この霊圧なのよ、全部なんか吸い込めるわけないじゃない……」

 冴島さんが呆れたように言う。

「そうか。そうですよね。じゃあ、おれがヤツの口をあけっぱなしにするから、冴島さんと橋口さんで霊弾をありたけぶち込んでください」

「だから、火狼(あいつ)は霊弾を取り込めるんだケド」

 俺は笑った。

「無限に食えるわけじゃないでしょう?」

「確かにどんどん霊を取り込んで、霊圧が高まれば体が破裂するわね。けど、どうやって口をあけっぱなしにするの?」

 俺は『鉄龍』を掲げた。

「これで」

「?」

「一か八かやってみましょう。行きます! 援護よろしくです」

 そう言って俺は火狼に向かって走った。

「待って、危険よ、待ちなさい!」

 そう叫ぶ冴島さんの声が聞こえる。

「指示が効かない……」

「無駄よ、麗子。さっき何か外れたように見えるケド」

「……」

「火狼! 俺を食らいやがれ」

 ニヤリ、と狼がまるで人のように笑って見えた。

 一瞬で間を詰められ、開いた口が上からかぶされた。

「うわっ!」

 上下に、牙がくると思って構えていたのに、かぶさるように襲い掛かられ、牙が前後になった。

 慌てて地面に倒れ込み、下あごに鉄龍を挿してそこに足をかけると、俺は上あごに両手をついた。

「これで口を閉じれないはずだ」

 火狼は強く下あごを押し上げてくるが『鉄龍』が刺さっていて閉じることが出来ない。

 慌てて、開こうとすると俺が身体を伸ばすから、やはり『鉄龍』は刺さったままだ。

「うわっ!」

 たまらず火狼は頭を振った。俺は火狼の口の中で激しく左右に振られる。

 強く腕と足を突っ張ることで、なんとか振り飛ばされるのを防いだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ