表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と除霊とブラックバイト  作者: ゆずさくら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/103

(45)

「……面白いしつけをしているのね」

 橋口さんがそう言うと、冴島さんは腕組みをした。

「当然よ。野生の本能のままなんでもされたら、雇い主の品が落ちるってもんだわ」

 橋口さんが俺の方へ近づき、じろじろと見つめた。

 うしろに回られ、つま先から頭のてっぺんまで、じっくりと、なめるように見られた。

「ふぅん。面白い素材ね。いろいろ使えそう」

「カンナには使いこなせないわ」

「そうかしら。あなたこそ、この子の表面的なところしか使っていないように思えるケド」

 その時、冴島さんの車が上下に激しく揺れた。

「!」

 地震、とかそういうものではない。

 見ると、中で松岡さんが暴れている。

 さっきの説明だと、松岡さんの中の『忠犬』の霊が反応しているということになる。

「気を付けて!」

 冴島さんと橋口さんが警戒して周りを見回す。

 中島さんは急いで車の中に入る。

 俺は……

「俺はどうすれば?」

 身体が宙に浮くのを感じた。

「えっ?」

 首に縄がかかっている。

 縄の先を追っていくと電柱の上にたどり着く。

 ほとんど足場のないところに、黒いスーツにサングラスをした男がいて、縄を引っ張っり上げている。

 冴島さんがが、手刀で切るように手を動かすと、首に絡みついてた縄が切れた。

 俺は落下し、電柱の上にいた男も向こう側に落ちてくる。

「いてっ」

 冴島さんも橋口さんも、電柱の向こうにいる男の方を睨みつけていて、俺が腰を打って道路でのたうち回っていることには目もくれない。

「カンナ、あれが『黒い火狼(ほろう)』ね」

「麗子、気を付けて。連れの女がいない」

 二人は背中を合わせて背後を取られないように警戒している。

 中島さんがしたように、車の中へ逃げ込むべきなのか。

 気がつかれないようにコソっと立ち上がると、俺は車の助手席に向かって走った。

「!」

 目の前を黒い狼が走りすぎてから、俺の方を向いて走ってきた。

「えっ?」

 狼は炎に姿を変えた。

 俺がそれを避けようとすると、そこにも狼がやってきて、燃え上がった。

 いつのまにか、あたりが炎で囲まれている。

「助けて!」

 周りを火で囲まれているせいで、何も見えない。

 息が苦しくなってくる。

「助けて!」

 なんだろう、誰の反応もない。

 俺は身体が動かなくなっていく恐怖を感じた。

 死ぬのだろうか……

「……える」

 かすかだが、声が聞こえた。

「……こえる」

 確かに声がする。この炎の中で、炎以外の、残った何も見えない暗闇の方から声がする。

 俺は探した。

「冴島さん!」

 俺は叫ぶと、囲んでいた炎が、一瞬にして消えた。

「冴島さん……」

 俺の目の前に、冴島さんの顔があった。

「……」

 冴島さんの顔は、俺の視界の水平方向から出てきている。

「よかった。気がついたわね」

 橋口さんの顔が、逆から出てきて、ようやく俺は自分の状況が分かった。

 俺は倒れているのだ。上体を冴島さんに抱えられてるのだ、上から覗き込まれているのだ、と。

「さっきの炎は……」

「炎?」

 橋口さんが、あごに指を当てて言う。

「おそらくだけど、幻覚よ。あなたにとっては本物だけど?」

「……火狼は?」

「ちんちくりんのせいで取り逃がしたわ」

「誰がちんちくりんよ。貧乳のあんたがドジ踏んだせいで、屋敷の方へ入られてしまったんだケド」

 冴島さんと橋口さんのやりとりに笑うところなのかもしれないが、顔が引きつって反応出来ない。

「とにかく、影山くんは一度車の中に」

「だめよ、この子は連れていかないと」

「……」

 冴島さんの表情が曇る。

 何か理由があるのだろうか。

 二人は俺の顔を確認するようにみつめる。

 俺はうなずいた。

「動ける?」

 俺はあらためて自分の手足が動くかを確認する。

「はい」

 冴島さんと橋口さんに手を貸してもらいながら立ち上がる。

 自分の人生の中では経験したことのない、立ちくらみを感じた。

「えっ……」

「影山くん」

 冴島さんがよろける俺の腕をとっさに掴む。

 心配そうな表情で俺をみつめる。

「やっぱり、車に……」

 橋口さんが冴島さんに近づいてくる。

「さっき話したでしょ。屋敷に入るにはこの子の力がいるって」

「大丈夫です」

 何で必要とされているのかわからない。だから、自信なんかなかったが、必要とされているなら、それをやるしかない。ただそれだけだ。

 それに屋敷の周囲で事件が多発していると聞いてから、俺はここに戻らなければならないような気がしていた。

 運命というものに違いない。

「全力であなたを守るから」

 冴島さんは屋敷の方を向いたまま、そう言った。

 俺たちは屋敷の大きな門の前に進んだ。

「この前入ったのは?」

「こっちの通用口です」

 俺は横にある小さな扉をさした。

 近寄ってみると、逃げ出る時に中島さんが扉にした紐がほどけている。

「開いている」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ