魔王様、お城に拉致られる。
前作『魔王様、勇者に選ばれる。』を読んでいないとよくわからないかもしれません。
次作『魔王様、剣の修行をする。』を投稿しました。(2019年8月29日7時)
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勇者の剣なるものをあっさり抜いてしまったクラウディオ。だらだらと冷や汗を流しながら、そっと聖剣を鞘に戻し逃亡を図ろうとして……捕まったのだった。
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「陛下にご報告を!!」
「勇者を城へ!!」
そう言って慌ただしく動き始める彼らを尻目に、クラウディオはそっと逃げ出そうとした。そう。した、のだ。つまりそれは叶わなかった訳で。哀れなクラウディオは騎士に捕まり王都へと連れて行かれてしまった。
「ちょっ……俺買い物に来ただけだからっ!奥さん待ってるからっ!!うちに帰してーっ!!」
クラウディオの切実な願いは切って捨てられ、2週間に及ぶ王都への旅が始まった。その間勿論クラウディアに連絡出来る手段などない。そして勇者が現れた事に浮かれている騎士達にそんな心遣いが出来る筈もなく、クラウディオの強制的な王都への旅が始まると同時にクラウディアの不安に覆われた日々は始まったのである。
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クラウディオが拉致されたその夜、クラウディアは泣きそうな顔で呟く。
「ディオ……何かあったのかしら……?早く帰ってきてくださいな、旦那様……」
クラウディアの願いも空しく、その日クラウディオがクラウディアの元に戻ることはなかった。
ふたりが再び出会えるのは一体何時になるのやら……
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王都への旅の間、クラウディオは騎士達に延々と国王への賛辞に王女への美辞麗句、そして魔王がどんな悪事をしているのか等という評判を聞かされウンザリしていた。自分達のあらぬ噂で『耳に胼胝ができる』なんて体験したくなかった。表情には出さぬまま心の中で悪態を吐くクラウディオであった。
クラウディオが拉致された先、それはこの国の中枢である。そう。王城だ。聳え立つ大きな城門。その奥には剛健さをも兼ね備えた優美な城があった。城下町には活気が溢れ、クラウディオは一瞬目を奪われた。クラウディアと観光出来たならどんなに良かっただろうか。何故隣に最愛の嫁が居ないんだ、何故両脇をガチムチの騎士に固められなければならないんだ、とクラウディオは心の中で血の涙を流したのであった。
クラウディオを連れた騎士達は城門をくぐり、王城の中を進む。案内された先は所謂謁見室。威圧感すらも感じさせるその部屋の奥、豪奢な玉座に座すはこのストーリア王国の王エドガン・グレイ・ストーリア。エドガン王はクラウディオに向かって歓迎の言葉と、勇者への期待、報酬を語った。
「ようこそ、勇者よ。近年我が国は魔王の率いる魔物によって被害が増えている。その聖なる剣を使い魔王を斃し魔物を蹴散らして欲しいのだ。魔王を斃せば報酬としてお前にこの国で最も美しい我が娘と爵位を下賜しよう。どうだ、やってくれるな?」
否定を許さないその言葉にクラウディオは項垂れた。エドガン王のそばに控える美しい王女は頬を染めクラウディオを見つめている。そう、この男見た目だけは極上なのである。内心の苛立ちなどは綺麗に覆い隠し、クラウディオはただ一言も口にすることなく礼をし謁見室を後にした。
贔屓目で見ずとも美人で可愛い嫁が居るのになぜそれに劣る女を押し付けられなきゃいけないんだ。勘弁してくれよ。そもそも魔王は何もしていない。とんでもない濡れ衣だな。まさか反逆者が出たか?面倒な。
既にクラウディオの脳内にエドガン王や王女のことなど残っておらず、自分達夫婦の部下から反逆者の割り出しをしていた。しかし、クラウディオの物憂げな瞳は周りからこの国と王女を憐れむものだと勘違いされていた。クラウディオがクラウディアの待つ家へと帰れる日はまだ遠いようだ。
読んで下さりありがとうございました!
続編はまた気が向いたら書きます。一応既に書き始めてるのでエタりはしないと思います。
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以上、譲葉でした!