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アリア

「アァアアァアァァアッ」


 全身触手のような国王もどきは、ヘドロのようなものを大地に飛ばす。


「風壁」


 得体の知れないものを触るのを避けるため、風壁で防御。そのまま、反撃に出るつもりだったが、


「なっ」


 ヘドロと風壁がぶつかった瞬間、風は一気に汚染され、消えた。


「フフフ。それは猛毒ですよ。触れば溶けてしまうので、お気をつけて」

「ほんとに化け物じゃねぇか」


 吐き出されるヘドロに注意を払いながら、高速で飛ばされる触手を避けなければならない。


「ふんっ」


 避けきれない触手は切り落とした。だが、それでも触手はすぐに再生されてしまう。


 大地の額に汗が滲む。レアをどうにかする前に、この国王もどきにどうにかされてしまいそうだ。必死に案を練っていると。


「アッ」


 一本の触手が大地の腹部を貫いた。


「くそ、放っ電っ」


 触手を振り払うため、触手を伝って電気を流す。さすがの国王もどきも、電流には耐えられなかったようで、急ぎ触手を離した。


「紅蓮」

「アァッァアアァアアアァァ」


 どうやら効いていないようだ。全身燃えながらも大地に触手を放ってくる。


 放たれる触手を、壁や天井を駆使してかわしていく。


「天井に張り付けるんですか。すごい能力ですね」

「放電で建物の中の鉄を使って磁石っぽくしてるだけだ」


 さすがのアリアも、立体に逃げられることは想定していないようで、多少驚いているようにも見える。


(イリス達がそろそろ起きる。もう戻らねぇと)


 そろそろ時間だ。イリス達が起きて、大地がいないことに気づけば、またイリス達に迷惑をかけてしまう。大地としては、それはなんとしてでも避けたかった。


「どこに行くんですか?」

「邪魔をするな」


 離脱しようと、窓から飛び降りようとした大地だが、窓を国王もどきが塞いでしまう。こいつを殺すのは、今は不可能だ。


「邪魔だぁっ」


 衝撃波を光線状に国王もどきに放つ。圧縮された衝撃波は、威力を増し、弾丸のように国王もどきの体内へと突き刺さった。


「破裂しろっ」


 体内に衝撃波が入り込んだところで、大地は衝撃波を一気に破裂させる。


「アッ」


 腹部が一気に破裂する。ビチャビチャと飛び散る肉片が体にまとわりつくが、そんなのはお構い無しに窓から飛び降りる。


「アッ」


 最後の抵抗と言わんばかりに、国王もどきは大地の体に着いた自分の一部を一気に腐食させた。大地ごと一気に。


「ぐっ」


 体の至るところが溶け、毒が体内に入り込む。吸血鬼でも、体内に入り込んだ毒を除去するのは時間がかかる。


「ちっ。早くしねぇと奴が再生し終わっちまう」

「アァッァアアァアアアァァ」

「もう終わったのか」


 窓から体を乗り出す国王もどき。高さ的には百メートルはあるのではないだろうか。その高さからヘドロを吐き出した。


「ヘドロか。しまった」


 百メートルもの高さからヘドロのようなものを落とせば、空中で分解され粒上になって降り注ぐ。つまりは、ヘドロの雨だ。


「放電」


 再生が終わらないかぎり、体は動かせない。だが、スキルは使える。放電を自分の周りに何重にも張り巡らせる。


「ギリギリか」


 なんとかヘドロは防いだ。それと同時に体の方も再生を終えたようだ。


「お土産だ」


 チタン合金構え、一直線に国王もどきをぶち抜いた。


人間超電磁砲(にんげんレールガン)


 ギュンとその場から立ち去る。胴体をぶち抜かれた国王もどきは再生を終え、大地に向かって咆哮をあげていた。


「ぐっ」


 国王もどきとの予想外戦闘により、疲れがたまった大地は、着地に失敗。弾かれるように浜の上を転がる。


「風呂に、入らねぇとな」


 イリス達まだ起きていない。恐らくそろそろ起床するであろう。


「今のうちに入っておくか」


 イリス達が寝ている間に風呂にはいる。


「はぁ。・・・・・アリア。性格が歪んじまったのか?」


 一人、誰に言うでもなく呟く。朝からいろいろな事が起きすぎて、正直整理ができていない。


「アリアが女王。前国王の一部から化け物。帝国はどこに向かってんだ?」


 帝国に対して愚痴が絶えない大地。沈み混んだ表情は湯気に隠れ、曇った大地の心情を比喩しているように見える。


「だーいーちー」


 突然、レイアが入ってきた。もちろん、ここは入浴するための場所なので、服は着ていない。


「レイア」

「もぅ。一人で入るなんて。私を誘ってよ」


 ぷくぅぅ頬を膨らませ、可愛らしく抗議するレイア。もちろん、服は着ていないので見えるところが見えてしまっている。


「そういえば最近レイア二人きりで話してないな」

「でしょでしょ?久しぶりに話そーよ」

「そうだな。たまにはいいよな」


 大地に入浴許可をもらえた事が嬉しかったからなのか、ぱぁぁぁっ明るくなるレイア。もちろん服は着ていないので(etc・・・)


「で、なんで俺の膝の上なんだよ」

「二人で入るならこうでしょ?」

「まぁ、俺は構わんが」


 大地の膝の上にちょこんと座るレイア。水のなかでは月と同じような重力のため、レイアの体重はほぼ感じられないほど軽くなっていた。


「あんまりジロジロ見ないでよ。はずかしぃよ」

「あぁ、悪い」


 無意識のうちにレイアの体を見ていたらしい。頬を赤らめ、華奢な腕で決して恵まれているとは言えない双丘を隠す仕草が可愛らしい。


「レイア」

「きゃっ」


 レイアを抱き締める。急なことで動揺したのか、ビクンとレイアの体が跳ねる。その様子が、大地をさらに誘惑する。


「大地、そろそろ上がらないと、のぼせちゃう」

「出たいなら俺の手を振り払って出ればいいだろ?」


 レイアを抱く力を少し強くする。それにあわせるように、レイアは吐息にもにた艶かしい声を出す。


「ぁっ。ん」

「出ないのか?続けるぞ?」

「だ、だめ。これ以上は」


 レイアの言うことは完全無視。大地の右手はレイアを抱いている。左手は、徐々に下へと、レイアの胸から、腹へ、そして太ももへと撫でるように降りていった。


「んんん。大地、なんか、変、だよぉ」

「嫌なら嫌だって言えばいい。言えるならな」


 レイアが出来ないことをわかっていてやっている。大地の行動はどんどんアクセラレートしていく。


「そこは、だめ、なの」

「お前のダメは、もっと欲しい。だろ?」

「違っ」


 小さなレイアの太ももを、大地はパンをこねるように揉む。弱くも強くもない力加減は、レイアにとっては耐え難い快楽。込み上げるなにかが、レイアを襲う。


「ちょっ。だめ、何か、来ちゃうっ」

「我慢するな。そのまま快楽に身を任せればいい」

「ダメダメ。来ちゃう、来ちゃうぅぅ」


 レイアの体がビクビクとし始め、レイアは快感の最高潮を、迎えられなかった。


「大地ぃぃ」


 イリスだ。大地が入浴中ということなので入りに来たといったところだろう。だが、そこに、レイアを襲う大地の姿があったらどうだろう。イリスは右手に魔法を宿さずにいられるのだろうか。答えは火を見るよりも明らかだろう。否だ。


「何してるの?」


 そのあと、浴場が戦場に変わったことは言うまでもない。


「それじゃ、今日は渡した道具に慣れておいてくれ」

「「「はい」」」

「しょうがないわね」

「重力なんて一瞬よ」


 各々特訓をし始める。イリス達の場合、ただ魔力の量を調節するだけなので、時間はかからない。問題は、


「ふんっ」

「重力重い」


 ラミアとレイアだ。武器は鎌と重力魔法。どちらも高度なものだ。


「ラミア。その鎌と俺の刀で模擬戦するぞ。俺は強化はしない。どっからでもこい」

「強気じゃない。いいわよ。ボッコボコしてやるんだからぁ」


 一撃一撃が火花散らす。金属同士がぶつかるような音に、重量感ある衝撃波。ラミアの鎌によるものだ。


「くっ。当たらない。大地速すぎ」

「鎌の重量を下げればいいだろ」

「言われなくても」


 鎌の重量を下げる。重さにして一tだろうか。それでも十分重いのだが、小枝を振り回すようにブンブン振り回す。


「攻撃は軽いが速い。動きが速い敵になら十分だ。だが」

「あっ」


 常人では避けきれないほどのスピードで振り回される鎌を、大地は一瞬で弾いた。そして、生まれた隙を突き、腹部に二回拳を入れる。


「なん、で」

「超電磁砲の要領だな」


 超電磁砲の要領で刀を電磁加速させ、秒速七キロで刀を振っているのだ。ラミアの鎌を弾くことなど、赤子の手をひねるよりも簡単だ。


「ここまでにするか」

「そうね。大地の電気のせいで手がビリビリするわ」


 両者武器をしまい、旅館へと戻る。


「レアよりも先に、国王もどきをどうにかしないと」


 やることが増え、大地の頭は許容範囲を越えた。疲れきった大地は、ゲームの電源をシャットダウンするように、意識を落とした。

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