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強制アルビニズム化計画 3

「パッと見刑務所のようだが、地下には縦横五百メートル程の空間が広がってるな」


 研究施設はほとんどが地下に作られている。万が一の時、被害を押さえるためにそのような対処がとられている。


「探知でざっと確認すると、警備兵は二百五十人。鳥の種族からして、平均ステータス値は10000くらいか。といっても敏捷性に優れてるだけだがな」


 この研究施設の所有者は鳥の亜人族。亜人の中でも敏捷性はずば抜けている。容姿としては、背中に羽が生えていたり、手がそのまま羽になっていたりと、様々だがいずれもスタイルは抜群にいいとの事。


「ふん、容姿などどうでもいい。邪魔するなら殺すだけだ」


 大地の意志は固い。容姿などではつれないということだ。


「正面突破だ。根絶やしにしてやる」


 満を持して出撃。真っ正面からゆっくりと歩いて研究施設に近づいて行く。


 そんなことをすれば当然相手側に気づかれるわけで、


「誰だお前。ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ」

「黙れっ」


 一人の亜人がその命を散らした。一筋の稲妻が亜人に降り注ぎ、一秒にも満たない時間で、殺された。


「お前、何してる」

「見張りの警備兵をどうした」


 稲妻の音で気づかれてしまったようだ。わらわらと十人近くの警備兵が出てきた。いずれも下級の警備兵だ。


「邪魔をするな。殺すぞ?」

「ふん。中坊が。亜人をなめるなよっ」


 敏捷が自慢なだけあって、速さは大地を上回っている。しかもそれが十人も。パワーだけじゃ亜人族には勝てない。


「スピードだけで勝てると思ってんのか?」


 瞬間、亜人たちは、ダンッと地面に叩きつけられた。大地は動いていない。ニヤリと笑うその表情は亜人たちに恐怖を抱かせる。


「何をした」

「衝撃波を連続して上から使っただけだ」


 つまり、上から何度も連続で衝撃波を起こすことで、とてつもなく重たい重力を受けているような状態になるのだ。


「逃げないのか?なら」


 十人もの命が次々に失われた。自慢のスピードも、今のようにされるとまったくとして意味をなさない。大地の戦闘技術は一般の生命体を凌駕している。


「さてと、中にはどんな惨状が広がってるんだろうな」


 不適な笑みを浮かべ研究施設に入る。


 中は外見とは異なり小綺麗で、すこし明るい。


「ここが研究施設とは。ぜんぜんそんな感じはしないがな」


 研究施設内の様子にはあまり触れず、さっさと中を探索し始める。


「階段はないのか?まぁ、いい。壊せば関係ない」


 手っ取り早く破壊。大地の癖になりつつある。超電磁砲(レールガン)で地面を貫通させる。案の定、穴の向こうには空間が見える。


「ここが研究施設の本命か。なるほど。七百の反応が探知から読み取れる」


 穴から降り、地下の様子を確認。壁には松明(たいまつ)がかけられており、中は不気味に明るい。


「お前、なんでここがわかった」

「知ってどうする?」

「殺すしかないだろっ」


 勢いよく大地に直進してくる。しかし、所詮はスピード任せの無謀な攻撃。大地の重力もとい衝撃波には敵うはずがない。


「がっ」

「雑魚が」


 また一人。亜人が死んだ。


「お前何してる」

「俺たちの仲間に何をしたんだ」

「殺されても文句はないな」


 地下にいた総勢約二百五十人が大地を睨み付ける。


 しかし、睨み付けられてなお大地は不適な笑みを崩さない。


「何がおかしい」

「あんまり舐めてると殺」


 殺すぞ。そう言おうとしたのだろう。だが残念なことに、言い終わる前に亜人は命を落とした。


「速いなんて言っても所詮はその程度、初速から秒速七キロの超電磁砲には敵わないってわけだ」


 いくら速くても秒速七キロ以上で移動できる生命体はいない。超電磁砲発射された瞬間に避けたところで死は免れない。


「さてと、ここには鉄格子や鎖が異常なほどある。超電磁砲を撃つのに不足はない」


 瞬間、大地は超電磁砲を連続で撃った。一秒に二回ほどのスピードだが、確実に亜人を撃ち殺していく。


「逃げ」

「待っ」


 どの亜人も短い悲鳴をあげ、どさりと地面に倒れ込んだ。


「残りは百といったところか。超電磁砲は魔力をくうからな、これ以上は撃てない」


 撃とうと思えば撃てないことはない。ただ後のことを考え、激しい魔力消費は避けなければならない。


「こっからは肉弾戦だ。十二倍っ」


 確かに、普通の状態の大地では亜人に追い付かないが、十二倍にすることで亜人達を軽く上回ることができる。ただし、代償として体の臓器が破損する。吸血鬼なのですぐに治るが。


「ふんっ。はっ。くっ。やっ。おらっ」


 秒単位で亜人が死んでいく。逃げようとする者は最優先で殺し、強い奴から順に殺して弱い者へと殺していった。


「ぐっ。十二倍は厳しいな。超電磁砲の後だと特に」


 なんとか全員殺し終えた。後は監禁されていた亜人を開放し、施設を破壊するのみとなった。


「はぁ。超級、雷殺(れいしゃ)


 一気に建物を破壊した。破片は弾丸のように周囲に飛び散り、木々に深々とめり込んでいた。


「あと、十一ヵ所」


 急ぎ次の場所まで向かう。そこも亜人が監禁されているが、警備兵は魚の亜人との事。


「水辺か。まあ、余裕だろ」


 目的地に向かう途中、魔力補充のため走りながら食事。帝国で買った果実を二つほど食べ終わる頃には、大地は目的地に到着していた。


「樹海に河が流れてたのか。匂いからして海水をここまで流したのみたいだな」


 樹海の中には海から引き入れた海水でできた河が流れており、幅およそ三十メートルといったところか。色は意外と澄んでおり河の底には施設が見える。


「河の底に施設か。面倒なところに建ててくれたもんだな」


 魚の亜人のため、水中でも息ができるというわけだ。そのうえ、水中となれば他の種族も迂闊には中にはいれない。完璧な防御だ。


「こざかしい。俺は忙しいんでな。さっさとやらせてもらうぞ」


 河の底に見える施設に向かって威圧をかける。こうすれば恐怖に圧力に耐えきれなくなり出てくるだろう。


 案の定、施設内からはおびただしいまでの亜人が出てきた。容姿は人魚と言ったほうが伝わりやすいだろう。


「出てきたか。殺される準備はできてるだろうな?」

「誰だ貴様」

「何様のつもりだ」


 水辺から出られないのは欠点と言えるだろう。水面から上半身のみをだし、大地を威嚇する。


「だまれ。用があるのは監禁されている亜人だ」

「なんで部外者のお前が知っている」

「俺達を殺すってのはどういう事だ」

「黙って死んでろ」


 大きな水柱が発生した。大地が足元に落ちていた石を強化二倍で水面に叩きつけたのだ。


「潜れ。水中なら奴は身動きがとれない」

「殺したいなら潜ってこい。殺してやるけどな」


 亜人たちは次々に水中へと潜っていく。水中なら大丈夫というのは正しい判断だが、はたしてそれが大地にも通じるかどうか。


 水中に潜った亜人たちを見ると大地は、何を思ったか河の両端を樹海の大木で塞いだ。


「水がなければお前らは何も出来ないだろ?」


 ニヤリと笑う大地の顔によろこびの色はなく、ただ深く黒い色に塗りつぶされていた。


「超級、焔」


 熱すぎる炎は海水を一気に蒸発させていく。徐々に減っていく水位を見て、さすがの亜人も焦ったのか大地に魔法を放ってくる。


「邪魔をするなっ」


 残り少ない水位にも関わらず高い水柱があがる。大地お得意の超電磁砲だ。亜人は一人天へと葬られた。


「雑魚は引っ込んでろっ」


 大地の圧倒的な力に亜人は唖然とするばかりだ。


「お前ら。怯むな。奴は一人だ」

「まだ諦めるな。勝機はある」


 まだ諦めていない亜人達は、懲りもせずに大地に魔法を放ち続ける。


「うるさいっ」


 五本の大きな水柱があがる。いずれも超電磁砲によって起こされたものだ。秒単位で五発連続超電磁砲。勢いよくあがる水柱に巻き込まれ十数人が天に召された。


「雑魚共が」


 言い終わる頃には水はほぼなくなり、大地の足首程度の水しか残っていなかった。


「水の中にあっただけあって、コケやら海草がすごいな」


 河の底の研究施設に入ってみると、そこにはコケやら海草やらがついていて潮の匂いが半端ない。足首程度の水には魚も泳いでいる。


「反応は七百。この奥か」


 魚の亜人、捕らわれていた亜人を発見。鳥の時と同様、鎖で繋がれていて酷い扱われ方である。


「全くだな。この世界は糞の掃き溜めだな」


 軽く愚痴をこぼす。一人ずつさっさと鎖を壊し開放。鳥のときも同様にしたが皆大地を恐れるように逃げていった。


「はぁ、そろそろ世が明ける。時間がたりない」


 イリスたちのもとへと戻る。やはりまだ眠っている。ユサユサと肩を揺らし、起床を促す。


「んんんん」

「んっ」

「スー・・・・・スー」

「スゥゥ・・・・・スゥゥ」


 全く起きない。まだ夜は明けてないので当たり前だが、最近はイリス達が寝過ぎているせいで不健康なのではないのかと不安になる大地。


「寝過ぎは良くないぞって聞こえてないか」


 とりあえず大地も、一晩戦い漬けで体が疲弊しているので就寝ということに。


(大地。がんばりすぎなんじゃない?)

(レイアか。いいだろ。俺の体だ)

(大地が死ぬと私も死んじゃうんだよ)

(死なないさ。イリス達がいるからな)

(私は大事じゃないの?)

(触れないのならどうしようもないだろう)

(大地のバカ)


 レイアは、大地の命を媒体とした幽霊のような存在だ。よって、見聞きは出来ても触ることは出来ないのだ。


(私も、大地にさわれたらな)

(なんか言ったか?)

(・・・・・なんでもない)


 レイアの表情は暗く、悲しみに満ちていた。大地に近づきたくても触れない。近くにいるのにどこか遠い存在。レイアの不満はその小さな胸に蓄積していった。




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