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計画

 太陽は燦然と輝き、気温が上昇し出す、昼。大地はイリス達と魔獣狩りをしていた。


「目標まであと百匹だな」

「ここの魔獣弱い」

「目を閉じた状態でも勝てます」

「張り合いがない」

「片手で十分ね」


 表層の魔獣のレベルは20~40と、低いのだ。故にイリス達は魔獣狩りが暇で暇でしょうがないとわめいている。


「ステータス値アップのためだ。殺し続けるぞ」


 現段階での大地達のステータスは以下のようになっている。


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

名前:大神大地 年齢:16 職業:鍛治職人 レベル:???

筋力:19150[+3570]

耐性:19150[+3570]

魔力:19150[+3570]

魔耐:19150[+3570]

能力:鍛治・錬成[+気体]・鑑定[+魔法]・身体強化・夜眼・魔力操作・千里眼

  ・感覚操作・探知・放電・威圧・支配・衝撃波・消失[+魔法]・真眼(しんがん)

  ・思考伝達・視界共有

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


 大地はまたまた強くなってしまった。ステータス値が上がったのもそうだが、右半身の能力が書き足されている。


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

名前:イリス・アルテミス 年齢:500 職業:吸血鬼 レベル:87

筋力:165

耐性:165

魔力:17500

魔耐:17500

能力:・再生・再生操作・波動・斬撃・探知・身体強化・夜眼・魔力操作・支配

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

名前:イリア・アルテミス 年齢:495 職業:吸血鬼 レベル:83

筋力:155

耐性:155

魔力:16500

魔耐:16500

能力:・再生・再生操作・波動・斬撃・探知・身体強化・夜眼・魔力操作・支配 

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

名前:大神夜空 年齢:10 職業:妹 レベル:136

筋力:15

耐性:15

魔力:36500

魔耐:36500

能力:・金剛・威圧・複写・再生操作・再生・構築・超電磁砲・衝撃波・神速

   ・夜眼・魔力操作・支配・身体強化・千里眼

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

名前:ラミア・ネメシス 年齢:9 職業:奴隷 レベル:78

筋力:11800[+10000]

耐性:11800[+10000]

魔力:125 [+2000]

魔耐:125 [+2000]

能力:竜化・衝撃波・身体強化・金剛・感覚操作・千里眼・結界・探知・火焔・飛行

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


イリス達のステータスも徐々に上がりつつある。それも常人では追い付けないようなスピードで。


「以前よりも格段に上がっている」

「やったぁ」

「まだまだ気は抜けません」

「もっと誉めてもいいんだよ?おにいちゃん」

「当たり前よ」


 だがまだ足りない。カオスの時のようなことが起こるかもしれない以上、ステータスは十分すぎるほどあげておかなくてはならないのだ。


「しばらくここで殺しててくれ。ちょっと行ってくる」

「どこ行くの?おにいちゃん」

「秘密だ」


 さっさと木を巧みに使い樹海の外へと出ていく。イリス達には詳しい事情は話せないが、心配をかけたくない大地の優しさなのだ。


「また来たぜ。帝国」


 わざわざ自分を殺そうとしている国王がいる帝国に入る。表情には出さないが内心は若干緊張が混じっている。


「少々危険だが大丈夫だろ」


 人波をスラスラと避け、人目につきにくい路地にはいる。


「路地を使った方が早いからな」


 理由は近道。どこにいきたいのかは、何となく想像がつく。


 帝国で大地に一番縁(ゆかり)がある、城だ。


「さてと、いっちょ犯罪でも起こしてくるか」


 城の壁に錬成で穴を開け中に侵入。庭にももちろん警備兵はいるので、庭に植えられた木や、建てられたオブジェクトに身を隠し、うまく城の内部に侵入することができた。


「もう間取りは覚えてないからな。放電。電磁波をなめんなよ」


 電磁波を使い、地下へと続く階段を探す。途中ばれそうになったが、スキルをうまく活用し乗り越えた。


「ふぅ、やっと着いた。ここが地下の階段」


 電磁波で地図は分かっても、警備兵のせいで回り道をしたり、しばらく動けなかったりで、だいぶ時間がたっている。およそ二時間くらいだろうか。


「暗いな。それに奥から血の臭いがする」


 恐る恐る地下を覗いてみる。そこにはやはり異常な光景が広がっていた。


「なるほど。これでアルビノを量産してたのか」


 地下には、何百とも言える女が牢に入れられていた。数えてみると五百人。途方もない数だ。


 アルビノが生まれる確率は二万人に一人。つまり、一人がが四十回出産を行えば一人生まれるということだ。


「この顔、どこかで」


 大地は牢に入れられている女に見覚えがあった。


「思い出した。この女、以前帝国で、国王が国民を殺した時にいた女だ。いや、この女だけじゃない。もしかしたらここにいる全員、あの時」


 大地には疑問だった。国王があれだけ人を殺しても国が栄え続けたその理由(わけ)が。


「なるほど。あの時の目撃者は全員ここにつれてきたのか」


 女は牢に入れ、男は殺した。というのが大地の読みだ。おおかた当たっているだろう。


 あらゆる疑問を紐解こうとしていたとき、階段から複数の足音が聞こえてくる。


「錬成」


 錬成で牢の格子を変形させ、中に設置されている簡易式の雑なベッドの下に隠れる。


「国王様はイカれてるよな」

「あぁ、人間のアルビノを作るために、生きたアルビノからデータそのものを腹の中の子供にコピーしろっていうんだもんな」

「噂によると、国王様は人間だけじゃなくて他の種族とも裏でアルビノを作ってるらしいな」

「まじかよ。とうとうやらかしちまったなぁ」


 二人の警備兵が見回りに来た。上手く隠れた大地は警備兵の話を聞くことに成功したが、それは気分が悪くなるような内容だった。


「つまり、データそのものをコピーってことは百パーセントアルビノが産まれるってことか」


 ここは魔法の使える世界だ。人一人のデータくらい余裕だろう。それを利用してアルビノを量産。売買。国王はこれで私腹を肥やしていたのだ。


「くそっ。国王は乱心か」


 自分を裏切って殺そうとした国王への怒りが増幅する。殺すことはさほど難しくないだろうが、確実に生きづらくなる。まだ待たなければいけない。


「はぁ。気分わりぃ。イリス達には絶対言えないな」


 見回りの警備兵がいないことを確認し、格子に穴を開けて出る。


「お、おにいさん。助けて。ここから出して」


 後ろから声をかけられた。見ると、大地の隠れた牢の隅に、ボロボロの布にくるまった小さな女の子がいた。


「お願い出して。知らない人にひどいことされたくない」


 顔色を見ると健康的な色をしている。恐らく最近ここに入れられたのだろう。見た目から十四歳。まだまだ少女だ。


「そのひどいことってのはいつされるんだ?」

「三日後の夜。時間がないの。お願い助けて」


 三日後。その日にはこんな幼い少女でさえ子供を産まされる運命をたどるのだ。大地の中でイリス達の顔が思い浮かぶ。見た目の年が近いからだろう。故に、大地はこの少女を放ってはおけなかった。


「わかった。三日後の夜だな。この計画を阻止しにくる。それまでは待ってろ」

「・・・・・・・・・・わかった」


 少女の目は疑いの目だった。当然だろう。どうせこのまま逃げるに決まっていると思うのが妥当だろう。


 急ぎ、城を抜け出し樹海に戻る。


「大地ぃ。どこ行ってたの?」

「遅いですよ」

「おにいちゃん、ちゃんと埋め合わせよろしくね」

「許可とってからにしなさいよ」

「悪い」


 ここ最近イリス達に怒られてばかりで若干気分が落ちてくる大地。


 そして、夜。月は雲に隠れ樹海は一層不気味さを増す。吸血鬼の夜眼はこういうときに便利だ。


「夜になると警備兵がすこし減るのか。侵入しやすくて有難い」


 素早く侵入し、電磁波を頼りに王の寝室らしきところのちょい手前に到着。


「探知。・・・・・王の部屋前には警備兵が四人。そして部屋の周囲を巡回する警備兵が五人。難しいな。上から行くか」


 正面突破はリスクが高いため、天井に錬成で穴を開け、上から行く方法に切り替えたようだ。ちゃんと穴は閉じて証拠隠滅。


「位置的にはこのあたりか」


 錬成でサッカーボールくらいの穴を開け、中を確認。安全なことを確認すると静かに飛び降りる。


「国王の机は・・・あった」


 部屋は驚くほど広く、縦横十メートルはありそうだ。


 広い部屋に置いてある机にむかう。王が使っている机のようだ。


「アルビノを人工的に作るなんてことしてるんだ。なにか書類があってもおかしくない」


 大地の目的はアルビノを増やそうとしている国王の計画の阻止だ。地下牢にいたあの少女を救うため、計画を根底から崩さなければいけない。


「あった。これか」


 机をガサガサと漁っていると、アルビノについてかかれた書類を数枚発見した。


「強制アルビニズム化計画?くそみたいな計画だな」


 内容は、警備兵が話していたことに加え、アルビノを奴隷として売り出し、莫大な財政を築くこと。そしてそれを利用し、兵を強化し、他種族との戦争を勃発させること。などの二つが記されていた。


「全部国王の独りよがりじゃねぇか」


 溜まりまくった怒りは大地の器から雫としてわずかにこぼれ落ちた。


「このっ」


 怒りに任せ、机をドンと叩く。机はバキバキ音を立て瓦解した。


「誰だっ」

「そこにいるのはわかってる。抵抗するな」


 王の寝室の入り口に立っていた警備兵がドアを蹴破り入ってくる。


「き、貴様は誰だ」


 警備兵の突入に、目を覚ました国王も大地の存在に気づく。


「あの時の勇者か。ノコノコと」

「国王様。御無事ですか?」

「問題ない。奴を殺せっ」


 国王の命令に、四人の警備兵は一斉に剣を抜き迫り来る。


「俺の新しい足の犠牲になってもらおうかっ」


 鬼族の右足を一人の警備兵にあてる。樹海の木ですら跡形もなく粉砕した足なのだ。人間ごときに耐えられる衝撃ではないだろう。


「ぐぇあ」


 案の定、蹴りを食らった警備兵は見事に肉塊となった。


「応援を」

「はいっ」


 残りの三人のうち一人が応援を呼ぼうと部屋を出ようとするが、大地にとってそれは無駄な労力を費やすことになるので、早急に始末する。


電槍(でんそう)


 単発式の電槍は的確に仲間を呼びにいこうとする警備兵の心臓を貫いた。


「無詠唱で魔法を放てるなんて。こいつは魔獣だ」

「国王様の領土を汚すな」


 魔獣と決め付け、好き勝手文句をいってくる警備兵に大地はすこし、いらっときてしまった。


「うるさいっ」


 次の瞬間にはすでに、警備兵二人の首が弾け飛んでいた。


「おい国王」

「な、なんだ。金が目的か、それとも女か」

「その命。大事にとっとけよ」


 国王に死の宣告とも言える言葉を残して、机を燃やし、大地はその場を去った。


 机を燃やしたのは、大地がアルビノの書類盗んだことがバレないためである。


「帝国はどれだけブラックなんだよ」


 樹海に向かう途中の大地の愚痴も、夜の闇に静かに溶けていった。


「寝てるな」


 樹海の木に戻ってみると、イリス達は相も変わらず熟睡中。愛くるしいその姿に日々のストレスを癒す大地。


「国王の思い通りにはさせない。絶対に崩してやる」


 強い覚悟を胸に大地は眠りに着いた。


 一日目が終了。残り二日と十数時間。


 翌日の朝。大地は目をさます。


「ふぁあ。最近は外出が多いからな。眠りが浅い」


 うまく疲れを取りきれていない様子だ。目が半分閉じている。


「あ、おはよう大地」

「おはようございます」

「おにいちゃん、妹の寝起きドキドキしちゃう?」

「起こされなくても自分で起きられるし」


 どうやらイリス達も起きたみたいだ。四人とも大変健康的な様子。大地とは正反対だ。


「今日も魔獣狩り?」

「今日は模擬戦だ。一人づつ、俺と戦ってくれないか?」


 大地の提案に少女達は快く承諾してくれた。


「大地、最近私たちに構ってくれないんだもん」

「久しぶりですね。大地と戦闘をするなんて」

「おにいちゃんとはベッドの上で戦いたいな」

「手加減なんてしなくてもいいわよ」


 各々ヤル気満々。最近大地が構ってくれないとのことで不満がどんどん溜まっているのだろう。寝る前や起きた後、魔獣を狩った後、イリス達がすこし寂しそうな顔をしているのを大地は知っていた。


「今日は目一杯遊んでやる」

「わあぁぁぁぁい」

「後で後悔しないでくださいよ」

「私の体で遊んでくれてもいいんだよ?」

「しょうがないわね。どうしてもって言うんならそうしてあげるわよ」


 戦闘、食事、昼寝、娯楽。とりあえず思い付くことは何でもやった。イリス達も満足してくれたようで、眩しい笑顔が心地いい。


 ポンポンとイリスの頭を軽く撫でる。気持ち良さそうに身体中の力を抜いているのがわかる。


「ずるいですよお姉ちゃんばかり」

「おにいちゃん。妹の頭を撫でるのは兄の義務だよ」

「撫でたかったら撫でればいいじゃない。特別だからねっ」


 しょうがないので全員の頭を撫でた。もちろん嫌ではないので快く撫でた。撫でる大地も、撫でられるイリス達も幸せになれる。ウィンウィンなのだ。


 そして夜。昨夜とはうってかわって雲一つないきれいな夜空である。


「昨日盗んだ書類はまだすべてじゃなかった。続きがある」


 盗んだ書類を見ても、樹海にいたアルビノ達の情報が載っていない。あれだけ多くのアルビノを、商人程度の身分で秘密裏に所持できるはずはない。


「まだ、知らないことだらけだ」


 どんどんと樹海を進み、帝国の中に入り、路地を通り、城壁を抜け、城内に侵入した。侵入したのだが。


「警備兵の数が三倍近くに増えてやがる」


 昨日の大地の侵入が国王にばれたせいで、守りを強化したようだ。すぐに死んでしまうような下級警備兵ではなく、装備も豪華な上級警備兵だ。大地が昨日殺したのは下級警備兵だ。


 帝国で下級警備兵のレベルは20~30。中級警備兵は30~50。上級警備兵は50~70。そして平均ステータス値が左から順に、2000~3000。3000~5000。5000~7000。


 どちらにしろ、上級警備兵が束になってかかって来たら負ける確率の方が高い。


「国王の奴。絶対に許さねぇ」


 上級警備兵いてもやることは変わらない。探知と電磁波を駆使して誰にもばれずに王の寝室へ行くだけ。


「上級警備兵でも見つからなければ下級警備兵とおなじだ」


 なんとか王の寝室の真上までやって来た。始めから壁の中を通って来る方が楽なんだが、方向感覚を失ってしまうため、大地としてはあまりやりたくないのだ。


「やっと着いた。三倍の時間はかかったぞ」


 昨日と同じように静かに飛び降りる。国王がいる寝ていることを確認し、国王の机に向かう。


 昨日大地が燃やしたため新しいのを買い直したようだ。ご丁寧に引き出しに鍵がついている。


「錬成」


 もちろん、大地には鍵穴なんて意味はない。錬成で鍵穴そのものを無くすことができる。


 ガサガサと中をあさり、昨日盗み損ねた書類をまとめて回収。後は証拠隠滅して帰るだけというところで。


「なっ」


 いきなり魔法が飛んでくる。しかも上級魔法だ。


「貴様が国王様を殺そうという害悪か」

「抵抗しなければ命だけは助けてやる」


 上級警備兵七人。ステータス値合計は35000~49000。勝てる見込みはゼロに近い。


「ふんっ。勇者の癖に泥棒なんぞに手を染めよって。殺せ」


 上級警備兵の(やいば)が一斉に大地に向けられる。


 暗い夜。シルエットが見えるかどうかの暗さの寝室に、月明かりが大地を照らし出した。

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