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迫害

「はぁ、イリス、お前ちょっと本気になりすぎじゃないか?」

「大地が悪いんだよ。私達をほったらかしてあの竜に構ってるから」

「はい、お漏らしした女の子に興奮するなんて変態もいいところです」

「してないからな」

「まあいいです。大地のロリコンは今に始まったことじゃないので」

「だから違うっての」


 粗相をおこした竜少女のケアをしていた大地だが、妙に仲良さげに見えたためにイリス達が嫉妬し、ついさっきまで地獄の鬼ごっこの最中だったのだ。


「っていうかここどこだ?」

「ここは四十九階層だよ」

「そこにある階段を降りれば五十階層です」

「たしか人間の限界が五十六階層だっけ?」

「あぁ、といっても五十六階層だからレベル56あればいいわけじゃない。その階層のボスを倒して初めてその階層クリアなんだ。つまり、その階層の数+10くらいないと攻略は不可能だ」

「この階層だと70あれば文句なしですね」


 迷宮内の階層の解説をする大地、それに真剣に耳を傾けるイリス達、そしてそれに耳を傾けず顔を紅潮させたままうつむいている竜少女。


「なあ、竜。っていうか言いにくいな。名前は?」

「なにさりげなく名前をきいてんのよ」

「へぇ、教えてくれないのか。じゃあそのローブ返してくれないか?」

「な、なに言ってんのよ。この下なにも着てないのよ」

「だからだよ。その肌を晒したくなければ名前を言え」

「とことん最低ね」

「さて、脱いでもらおうか」

「分かった、言う。言います」


 名前をきくためだけに鬼畜な行為を平気でする大地。渋々竜少女はその名を口にした。


「私の名前は、ラミア・ネメシス。教えてあげたんだから感謝しなさい」

「ラミア、ネメシス。どっちで呼ばれたい?」

「どっちでもいいわよ」

「・・・・・じゃあ」


 ニヤリと笑うとゆっくりとラミア・ネメシスの元へ歩みより、耳元で囁くように言った。


「ラミア」

「ひゃんっ」


 常に鬼畜な大地である。竜とは言えど、少女に対しての対応が鬼畜過ぎる。耳元でささやかれたラミアは顔を紅潮させ耳を押さえている。


「変な声出すなよ」

「あんたがいきなり、変なことするから」


 ボソボソとそう呟くラミアは反則級に可愛らしく、不覚にも大地は鼓動を乱した。


「ちょっと大地、そんなお漏らし娘のどこがいいの?」

「そうです。幽霊程度で粗相をおこす少女のなにがいいんですか」

「おにいちゃんはそういうのが好きなの?だったら私も」

「まて夜空。俺にそんな趣味はない。断じて」


 またしても大地にロリコン疑惑。さらに変態という疑惑まで追加されてしまった。必死に否定する大地だが、周りにいるのは四人の少女や幼女。ロリコンと思われてもおかしくないのだ。


「ロリコン大地」

「ロリコン」

「ロリコンおにいちゃん。そしいてシスコンおにいちゃん」

「俺はロリコンじゃない。そしてもちろんシスコンでもない。少女や幼女に興奮はしない」


 きっぱりそう言いきった大地。しかし、その言葉を崩す決定的な出来事を、イリス達は身を持って体験している。


「ねぇ大地、海の旅館での事、覚えてる?」

「海の旅館。薬のせいとはいえ、大地なら私達を止めることが出来たんじゃないですか?」

「おにいちゃん、薬の効果が切れてからも何度も何度もねじ込んだよね?」

「あ、あれは、どうしようもなかった。でも、それでも俺は、ロリコンじゃない」

「・・・それなら」


 断じてロリコンを認めようとしない大地。それに対し妖艶な表情を浮かべ大地に近づき、大地の右手をガッチリと掴むイリス。


 何をしだすのかと思いイリスを見つめる大地だが、次の瞬間、予想外の出来事に大地の思考は停止した。


「えいっ」


 イリスは掴んだ大地の右手を自分の胸に押し当てた。鷲掴むように押し付けられた大地の右手は大地の意思とは裏腹に小刻みに揉み始めた。


「んん」

「いや待て。これは違う」

「ん、大地はどうか知らないけど、大地の体はすごく欲しいみたいだよ」

「これは俺の意志じゃ」

「大地の意志じゃない。体が無意識に動いてるんだよ」

「そんなはずは」


 自分の体がイリスを欲していた事実に驚愕する大地にイリア、夜空は追い打ちをかける。


「ほら、大地。私の胸もさわってみますか?」

「どう?おにいちゃん。私の胸を擦り付けられている感想は」


 イリアは大地の左手を自分の胸に押し付け、夜空は自分の胸を大地の体に擦りつけている。


「あれ、大地。息が荒いよ。ロリコンじゃないんでしょ?」

「これくらいで興奮なんてするはずありませんよね」

「おにいちゃん、妹の体に欲情してるの?お腹に固いのが当たってる」


 急にスイッチの入った三人の美少女に、大地の理性が崩壊を始めた。


「お、お前ら。やり過ぎ、だっ」


 口ではそう言いつつも抵抗する力は次第に弱まり、それに伴って理性も崩壊していく。このままでは迷宮内で狼が生まれてしまう。そうなれば魔獣からは格好の餌食だ。しかし、大地も大地もイリス達もやめる気はないようだ。そしてとうとう狼が誕生しようという時に


「こらぁぁぁぁぁ、あんたたちなにしてんのよぉぉぉぉぉ」


 竜化したラミアの拳によって、大地は迷宮の壁に激突した。


「くっ。いきなりはないだろ」

「あ、あんたたちが変なことしてるからでしょう」

「あれはそういうのじゃない」

「なに言って」


 最後まで言い終わる前にその口が何者かに塞がれた。


「そういえばラミアを忘れてた」

「あなたも見た目は少女、大地がロリコンかどうかの材料になってもらいましょう」

「大丈夫、おにいちゃんはテクニシャンだから」

「ん、んんん、んんんんんんんんんん」


 右手をイリス、左手をイリア、両足を夜空。完璧に拘束されたラミアは必死にもがくが、吸血鬼の女王とその妹、そして元支配者に敵うはずもなく必死の抵抗も無駄に終わった。


「さあ、大地。ラミアの胸を揉みなさい」

「両手でいやらしくやってあげてください」

「おにいちゃん、覚悟を決めて」

「んんんんん、んん、んんんん」


 このとき大地は狂っていた。三人の美少女の胸に欲情し、正常な判断が出来なくなっていた。


「そうだな、揉まないと平等じゃないよな」

「んっ、んんんんんん」

「そうか、ならここからは一人で行動してくれ」

「ん?」

「この不気味な迷宮を一人で行動しろと言ってるんだ。途中幽霊にあっても知らないがな」


 幽霊という言葉に敏感に反応し、必死に首を横にふるラミア。


「じゃあ、選択肢は一つだ。揉ませろ」


 鬼畜ロリ大地が誕生してしまった。こうなってはもう止められない。おとなしく揉まれるしかないのだ。


 逃げられない、かといって一人で行動も無理。残った選択肢をうけいれられない。だが、無理矢理その選択肢を受け入れ、苦渋と羞恥に満ちた表情で覚悟を決めた。


 大地の手がゆっくりとラミアの胸に伸びる。そっと手を触れ最初は弱く、そして次第に強く揉みしだく。


「ぁん。んんん。あっ」


 見た目に反して艶かしい声をあげ、よがりまくるラミア。それを至近距離で見た大地は耐えられるのか。答えは否だ。案の定理性は崩壊し、一度は引っ込んだ狼が再び誕生してしまった。


 四十九階層。迷宮内とは思えないような営みが終了して数分後。


「「「「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」」」」


 四人の少女の荒い息が迷宮内に響く。地面に転がっている四人の少女がそうなった原因はいうまでもなく、


「悪い、やり過ぎた」

「「「「やり過ぎたじゃない」」」」


 少女達からは怒りの声。当たり前のことなので大地も反論できない。


「大地、私たちから誘ったのは悪いと思うけど」

「反省はしています。でも、迷宮内でいきなり盛られても困ります」

「おにいちゃん、やっぱり強引だよ」


 イリス達が若干嬉しそうなことに大地は気付いていない。ここまで鈍感だと顔面にドロップキックを食らわせたくなるが、イリス達のドロップキックでは大地に止められてしまうのでほぼ不可能。


 イリス達はともかくとして、一番ショックを受けているのはラミアだ。地面にペタンと座り込み嗚咽を溢している。


「わだじの、はじめてが、うぅ、こんなかたちで、うぅ」


 次々と溢れでてくる涙にラミアの手では拭いきれない。地面にボタボタと落ちる涙は、ほんの十数秒で小さな水溜まりを作った。


「ラミア、悪い。謝って許されることでないことはわかってる。・・・悪い」

「うっ、うぅっ。ばか、ばかぁ」


 座り込むラミアにしゃがんでなるべく目線を合わせる大地に、弱々しく大地の胸を叩き、ひとしきり叩き終えると、大地の胸に顔を押し付けてとうとう声を出して泣き出すラミア。


「大地、ちょっとまずいんじゃない?」

「はい、やり過ぎたかもしれません」

「どうするの?おにいちゃん」

「俺は、どうすれば」


 大地の額に冷や汗が滲む。自分の胸で泣くラミアに、決して小さくない罪悪感が大地を襲う。


「うっ・・・・・・せ、責任とって」


 大地の胸で泣くラミアが呟いた。責任。たったそれだけの言葉にどれだけの重みがあるのだろうか。


「俺は、何をすればいいんだ」

「私の言うこと、聞きなさい」

「それで、ラミアが許してくれるなら」


 自分の犯した罪に押し潰されそうな大地にラミアの言うことを断る理由はない。


「私・連・・いき・・い」

「悪い、もう一回言ってくれ」

「だから、その、私を連れていきなさぃ」

「その程度でいいなら」


 ラミアを大地達の仲間の輪に入れる。それを受け入れ、ラミアを歓迎する。


「大地、いいの?」

「私は反対です」

「ラミアがまた襲ってくるかもしれないよ、おにいちゃん」

「構わない。何をされても文句はない」


 すでに腹をくくった大地。イリス達は賛成しない様子だが大地は自分の意思を貫き通すようだ。


「ラミア、本当に悪かった。どうしても許せないなら俺を殴ってくれてもいい」

「そんなこと、しない、わよ」

「・・・・・」


 まだ罪悪感を拭いきれない大地。それに対し、少しだけ嬉しそうなラミア。


「もう大地。・・・・・行こう」

「そうです。時間がありません」

「今日中に六十階層までいくよ」

「あぁ、ラミア、行こうか」

「う、うん」


 よくわからない雰囲気を壊すようにイリス達が五十階層へと続く階段を降り始める。


 さっさと五十階層へと行ってしまう。大地も五十階層へと向かうべくラミアに手を差しのべる。はにかんだようにその手を握る。


「しょうがないから、握って、あげるわよ」


 顔を紅潮させながら男殺しなことを言ってくれるラミア。イリス達に負けないくらい可愛らしい仕草に、大地は興奮を禁じ得なかった。


「大地、遅いよ」

「そうです。ラミアと何をしてたんですか」

「おにいちゃん、浮気しちゃダメだよ」


 イリス達よりも少し遅れて五十階層に降りる。大地が降りてくるとすぐさまイリス達が満面の笑みで駆け寄ってくるが、その笑みは一瞬で対極の表情に塗り替えられた。


「遅くなった。悪い」

「・・・・・・・・・・」


 イリス達の表情が固くなったのを見て、遅れたからと解釈した大地はその事を謝る。しかし、イリス達が怒っている真の理由は別にあった。


「ねえ、大地」

「何でその女と」

「手を繋いでるの?」


 大地は五十階層に降りる際にラミアと手を繋いだまま降りてきたのだ。当然、そんなのを見せつけられたイリス達が黙っているはずもなく、今に至るわけだ。


「もう、大地のばか」

「そんな女の何がいいんですか」

「おにいちゃんは私だけ見てればいいの」

「お前らなんか荒んでるな」


 イリス達に率直な感想を述べ、ラミアの手を放す。ラミアは放された手を見てしょんぼりとしている。


「さて、かれこれ話しているうちに客が来たみたいだぞ」


 大地の言葉に四人の少女は一点を見る。


 以前、大地がこの迷宮に来たとき命がけで戦った相手、牛頭人身の怪物。ミノタウロス。


「ミノタウロスの数は凡そ二百以上。そのなかでお前に会えるとは」


 ミノタウロスの腹にはなにかが刺さった跡があった。その跡には少量の鉱石が埋まっている。大地が以前戦った相手。


 本来、ミノタウロスは四十階層にいるのだが、力の強いものはごく稀に五十階層にいる。このミノタウロスもそうだろう。


「お前ら。こいつは俺が狩る」


 大地の意見に反論はない。大地がやると分かると四人の少女はとてとてと壁の方に寄った。


「幅十メートル、高さ五メートル。狭い通路だが好都合だ」


 大地は不適な笑みを浮かべると腕輪の中からビー玉程度の大きさの鉄球を取り出した。


「一瞬で粉砕してやる」

「オオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ」


 咆哮をあげ迫り来るミノタウロスに対し、大地は鉄球を軽く上に放る。


 何をするのかわからないイリス達は大地の行動に疑問を抱いたがそんな素朴な疑問は一瞬で粉砕された。


超電磁砲(レールガン)


 大地は落ちてくる鉄球を親指で弾いた。瞬間、鉄球は強い光と共に一瞬でミノタウロスを貫いた。


「み、見えなかった」

「はい、攻撃がミノタウロスに直撃するまでが早すぎます」

「おにいちゃん」

「あんた意外と強いのね」


 大地の使った超電磁波は初速から秒速七キロで発射される。この点はバレットと同じだがバレットは弾が必要なのに対し指で行う超電磁波は岩でも鉄でもできる。バレットよりも便利ということだ。


「弱すぎる」

「「「「超電磁波が強すぎたんだよ」」」」


 ミノタウロスを弱いと称した大地に突っ込みを入れるがそんなことはお構いなしに迷宮の奥へと進んでいく。


 五十階層にもなると魔獣も多くなり強くなっている。故に大地達は先程から魔獣に襲われまくっているのだ。


「どけっ」

「じゃま」

「どいてください」

「殺しちゃうよ」

「一瞬で殺してあげるわ」


 襲ってきた魔獣はすでに百を越え大地達の通ったあとには魔獣の骨や肉が散らばっている。


 暗く狭い通路をどんどん進んでいく。次第に地上は夜を迎えた。


「今日はここまでにしよう。野宿だ」

「「「はい」」」

「えっ?」


 野宿という言葉に動揺を隠しきれていないのが一人。いうまでもなくラミアである。


「野宿ってどういうこと。床で寝るの?こんな固い地面に?ご飯は?お風呂は?トイレは?」


 急な野宿にパニック状態になっているラミア。言葉を聞く限り本当に他の竜族達からいじめられていたとは思えないほどだ。しかし、大地とてばかではない。野宿には万全の準備をしている。


「寝床はこれだ。最新式寝袋。柔らかいぞ。夕飯は魔獣の肉を焼いて食べる。肉が食えないなら地上で採ってきた果実もある。風呂は水系魔法で作った水を火系魔法で暖めたものを使ってくれ。トイレに関しては錬成で個室を作る。以上。不満な点があれば言ってくれ」

「だ、大丈夫」

「そうか」


 適当に返事をして壁に部屋を作り始める大地。壁はどんどんと姿を変え、七畳くらいの部屋が出来上がった。


「よく壁のなかで野宿なんて妙案を思い付いたものね。しかも用意周到。ちょっと恐ろしいわ」


 壁の中の部屋に入ると称賛のような悪口のような感想を述べるラミア。


「ラミア、これお前のだ」


 そういって手渡されたのはステータスボード。竜族として迫害されていたなら当然ステータスボードもないのだろうという大地の優しさなのだ。


「これ、もしかしてステータスボード?」

「あぁ、持っていないだろうと思ったんだが。いらないか」

「いる。ありがとう。ずっと欲しかった」

「そうか、喜んでもらえたならよかった」


 ステータスボードの一通りの説明を施し、ラミアのステータスの詳細が表示された。


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

名前:ラミア・ネメシス 年齢:9 職業:奴隷 レベル:70

筋力:10700[+10000]

耐性:10700[+10000]

魔力:100 [+2000]

魔耐:100 [+2000]

能力:竜化・衝撃波・身体強化・金剛・感覚操作・千里眼・結界・探知・火焔・飛行

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


 イリス達とは違いパワー重視のステータス。[]の中は竜化した際に追加される付加ステータスだ。


 しかし、気になる点が一つ。言わなくても分かると思うが


「ラミア、この奴隷ってなんだ?」

「話さなきゃ、ダメ?」


 壁の中の明るい雰囲気は一瞬で凍りつき、重い静寂が襲いかかる。


 ラミアの顔は怒りと悲しさの感情が入り交じり酷く歪んでいる。竜族としての迫害がどんなものだったのか。その詳細をラミアがゆっくりと語り出す。

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