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吸血鬼のいる街《QUATTUOR》

年内間に合って良かった…ってか月2話頑張ろうというのはどうした

 子どもの頃、裕福か貧しいかと思い出せば後者だった。だが、不幸か幸福かで思い出せば間違いなくそれも後者だった。

 住んでいた村は都市部から遠方にあるなど地理に恵まれてはいなかったが空気が澄んでおり自給自足に近いが土地が良かったお陰か作物がよく育ち飢える事は無かった。山に住む動物たちの鳴き声と川の流れる音がよく響くのが特徴の何もない、それでも平和で優しく暖かな村だった。

 両親は怒ると怖かったが、自分の事をよく誉めて頭を撫でてくれた。周りの大人達も自分が家畜の世話の手伝いに行くと喜んでいるような人達ばかりだった。手伝いの駄賃代わりにお菓子や夕飯をご馳走してくることもあった。隣の家の同年代の男の子と将来結婚するなんて子どもの頃によくするような忘れてしまいそうな口約束もしていた。

 少し離れた街への憧れは全くないわけではなかったが、それでも村が好きだった。世界がどうかは知らなかったが、少なくとも私の周りの景色は温もりに満ちた平穏そのものだった。


 あの炎に全てが焼かれるまでは。あの炎の吸血鬼の夕餉ゆうげとして喰われるまでは。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「また、夢……」


 別に珍しくもない。今の自分の始まりとなった記憶のリフレインと目覚めた後の頭が割れるような頭痛。吸血鬼に全てを奪われ、師に救われ第二の人生を歩みだした幼いの日の記憶。

 ふらふらと立ち上がりながら窓に近づき街を見下ろす。幼い日に憧れていたビルの街景色にも見慣れてしまった。吸血鬼達は街に拠点を作り動く。当然だ、()が多くいる場所に餌を求める獣も向かう。

 この街のどこかに『吸血鬼』と呼ばれる殺人者がいる。それが本物の吸血鬼かは分からない。だが、あのルーレスト・サングイスとケイリィン・ハウルヴァーンが来ている以上なにかあるのは確かだろう。


「……行こう」


 徒労に終わるかもしれないが情報は必要だ。この街の今まで起きている事件の情報は既に流してもらえる手筈になっている。師父が来る前にある程度の事は済ませておかなければ。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

22時10分


「全員、死亡……」


 そんな報告を聞き自然とおうむ返しをするように反復した。地元の人間がルーレストとケイリィンを匿名で非合法に追跡させているという情報があり、この街に先に来ていた他の狩人に様子を見るために追跡してもらっていた。それまでは良かった。

 そして、結果店員を除く全員が殺された。店員を気絶に留めておいたのは無関係な人間を殺す気はないというアピールのつもりなのか。


「……師父」


 彼は自分が来るまであの二人に手を出すなと命じた。だが、これを見過ごす訳にもいかない。吸血鬼に人が殺されるのを見過ごせるはずがない。


「すみません師父。言いつけを破ります」


 ライラの足は吸血鬼を追うために動いていた。


 その時は知らなかった。背後にライラを見張ってる者達がいたことを。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

22時00分


 月城真朝は頭を抱えていた。


「……どうなってんのさ、これ?」


 料理店にルーレストとケイリィンが入ったのは確認した。だが、その一時間もたたずに全く別な場所で二人の姿を監視カメラが捉えていた。そして、その件の料理店ではこちらで金だけ出して雇った人間と情報を流して動かした狩人が惨殺されている。周りの監視カメラの映像も文字通り盗み見している。が、


「あの店の周囲のカメラには二人の姿はなし、と。こりゃ意味分かんないわ。どうやって消えてどっか沸いてら出たのかな?」

『マーサどうした?』

「お二人様吸血鬼が今颯ちゃん達がいる場所とは全く違う場所で見つけた。アキくんの携帯に送ったから場所確認して」

『……結構離れてるな。監視カメラの見落としとかは?』

「軽い下調べくらいならしてるかもだけど、流石に全部のカメラから写らずに移動するなんて無理でしょ?顔認識したらアラームなるようにしているし見落としは多分ないと思うけどねぇ……」

『なら闇祝グラティアだろうな』


 いきなり暁人が発言した。その聞きなれない単語に眉をひそめる。それは電話の向こうの颯や二人が乗ってる車を運転している紺田も同じようだった。


『アキ、その闇祝グラティアってのはなんだ?』

『二番目と三番目の吸血鬼が持ってる超能力みたいなもの、らしい。見たことないからよく分からないが』

「一度モノホンの吸血鬼と殺りあってるんじゃないの?あの話は冗談話?」

『四番目の吸血鬼は闇祝グラティアを持てない。俺が殺ったのはその四番目だ』


 いまいちピンとこないが今はそれでいいと結論付ける。


「で、どうする?今ツキカゲちゃんの方もあの吸血鬼達探してるみたい。近くにいるよ、接触してみる?」

『……そのツキカゲに吸血鬼の場所の情報を送れるか?』

「少し時間かかるけど無理じゃない」

『ならやってくれ。罠だって思われるだろうが、向こうは無視できないはずだ』

「ツキカゲちゃんが臆病風吹かれて逃げる可能性は?」

『逃げるなら逃げるでいい。そもそもそこまであの女に期待していない』

「ひっど。だからいろんな人に嫌われるんだよ」


 電話を切られた。いつものことだし諦めてもいるがあの態度の悪さはどうにかならないのか。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「おい本條、どこに行く?」


 車を降りたところで暁人に運転手が声をかけてきた。


「例のツキカゲを追う。マーサから情報が送られれば勝手に吸血鬼どもを追い始めるだろうしな。そっちはそっちで吸血鬼を見張っといてくれ」

「おい、何勝手な……」

「了解。ただ最初の予定通り向こうにバレたと感じたら退くからな」

「ああ。それでいい」


 颯が紺田の言葉を遮り暁人をツキカゲのもとに向かわせた。


「いいのか?好き勝手させて」

「構わないって。ツキカゲちゃんが戦うならアキとしてはそれでいいんだし、もしアキが吸血鬼と接触して普通に死んで作戦が失敗したらAMADEUS(俺たち)は手を引くいいきっかけになる。アキが死んでこれ以上は関わるなってマーサが言えば不満は残るだろうが納得は皆するだろ。今の紺田さんみたいな感じで」


 そう言われては何も言い返せない。事実、暁人はAMADEUSのメンバーではなくその主人(オーナー)である真朝の協力者という微妙な立ち位置だ。真朝の知り合いというのと喧嘩の腕で言えばAMADEUS内で最高の颯を一蹴できるのだから誰も何も基本的に暁人がAMADEUSに出入りしていることに文句を言うことはなかった。

 そんな暁人が死ねば吸血鬼が自分たちの手に負えないということだ。いくらメンバーが殺されているとはいえもう誰も極力吸血鬼には関わろうとはしなくなるだろう。


「それに狩人(ツキカゲ)ちゃんだって生きていたら味方にしておきたいってのがマーサのご希望だとさ。警護代わりにアキが付いていたほうがいい」

「見捨てやしないかね。アイツ他人に興味0だろ?守るどころか狩人ちゃん殺して自分が吸血鬼狩りとかしかねないぞ」

「流石にそこまで積極的には殺しには行かないさ。邪魔されたらどうなるかは分からないが」


 紺田の盛大な溜息に颯は苦笑を浮かべ助手席から先ほどまで暁人が座っていた後部座席に移りバレットM82の点検をし始める。


「……マジで使う気か、それ?」

「使わなければいい、そう思ってる」


 答えになってねぇよ、そんな愚痴が聞こえたが颯には自身が手にしている銃に不備がないかを確認することに集中したいため無視していた。


(使わなければ使わないほうがいい。だが保険は必要だ……こんな物で吸血鬼(彼ら)を殺しきれるかは微妙だが)


 点検を終えサプレッサーを装着させる。気休め程度だがないよりは遥かにマシだ。


「終わったか?」

「ああ。待たせてすまない。こっちも動こう」


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

23時00分


 ルーレストとケイリィンはこの街での計画を話しつつ人が少ないほうへと移動していく。事件のせいで人通りが減ったとはいえ日付が変わる前の時間はやはり繁華街などはそれでも多い。二人は海岸沿いの通りを目指し歩いていく。


「ここら辺でいいだろ」

「僕としてはもう少し人目を避けたいんだけど……まぁ仕方ないね。あまり歓迎会を無碍にするのも気が引ける」


 海岸沿いの通りを歩くこと数分。まばらにいた人影は消え去り、そこには静寂と二体の吸血鬼だけだった。もともと二人が来た時には人があまりいなかったとはいえ完全に誰もいなくなる事態は異常だ。既に自分たちを狙っている狩人が仕掛けたと判断していい。


「女と一緒に来りゃ夜景の一つでも楽しみながら血飲めたんだがな」

「そこに乙女がいるだろう?彼女で我慢しな。だが……」


 そう一言置くとケイリィンの瞳は血を思わせる濁った赤に変色する。そして_消えた。


「ウァ!」

「夜道の散歩はダメだってママから教わらなかったかい?まずはその物騒なものを貰おうか」


 狩人の少女の後ろに姿を現せ一気に肩を外し地面に叩き付け関節を極める。腰に付けられている刃が着脱式の剣を奪うために手を伸ばすがそれより先に狩人_ライラ・ツキカゲが反応した。


「なめるなァッ!」


 服の裾から筒状の暗器が飛び出し二つ中から射出される。だが、


「悪りぃなお嬢ちゃん。飛び道具意味ないんだよ。特にお前にセクハラしている奴はな」


 ライラの足に鋭い痛みと全身に鈍い痺れが走る。それは彼女が_ライラが先ほど使った矢に仕込んだ毒と同じ作用だった。

 そんな一方的な蹂躙とも言えない静かな暴力でなけなしの反撃も無意味に終わりライラ・ツキカゲは敗北とすら言えない敗北に喫した。


「ママに教わらなかったかだと……?」


 全身の痺れに耐えながら二体の吸血鬼をあらんばかりの憎悪で睨む。


「そのママを殺したのはお前たちだ!」

「あぁー、そういう?んじゃ教えろよお嬢ちゃん。君のママぶち殺した不細工はどんな奴よ?一時期吸血鬼(同胞)殺しやってたからお前の仇も()()()()取ってるかもしれねぇわ。教えろよ」


 ついでに、その発言で理性も何もかもを失った。だが暴れようにも不可能だった。両腕の肩は壊され筋力も比べ物にならない吸血鬼が関節技を仕掛けている、そんな状況でやれることなどない。

 一瞬だけ体が軽くなり拘束を逃れるが、そのまま立ち上がりきる前に後頭部を踏みつけられ地面に顔面を沈められる。

 意識はある。だが何も出来ない。そんな状況で声が聞こえる。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「この娘を吸血鬼にする。これから来る狩人達にさっきの店とこの娘でいい見せしめになるだろう。敵は少ない方がいい。構わないね?……レスト?」

「…………」


 ケイリィンの言葉に何かを返すわけでもなくルーレストはケイリィンの背後を睨んでいた。それを不思議に思いケイリィンも頭を踏みつけている力を緩めることなく背後を伺う。


「……へぇ」


 そこには一人の男が立っていた。この距離で全く気配を感じさせないあたり普通の人間ではないのは確かだろう。そして何より、


「気を付けてくれ、レスト。さっき話した彼だ」

「そうかい。お前その狩人抑えといてくれ」


 レストが前に出るとそれを待っていたかのように男も_本條暁人も動き出す。煙草に火を付け、一つ息を吐くと酷く冷めた目で二体の吸血鬼を見据える。


「いい夜だな。吸血鬼(化け物)共」


 これから先、この街で起こる戦いが本当の意味で始まった瞬間だった。

見てくださっている方は来年度もこんな下手くそ文章ですがよろしくお願いします!

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