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吸血鬼のいる街《TRES》

1ヶ月に2話。そんな事を言っていたのにこれだよ

本当にすみません

20時30分


「別にもっと安いホテルで良かったんじゃねぇの?」

「いいじゃないか。こういう時奮発しないと君も僕もあまりお金は使わないだろう?」

「そうだけどさぁ……なんつーか落ち着かないわ」

「確かにそうかもしれない。でも、この手のホテルは高ければ高いほど防犯もしっかりしている。それに食事も美味しいしね」


 市内のホテルの最上階のスイートルームでケイリィンは荷物を下ろしながらルーレストの疑問に答える。


「てか野郎二人でスイートルームって何だよ?虚しすぎるわ、寂しすぎんだろ……よし、女呼ぶか?」

「確かに吸血(食事)用に必要があるな……とは言え二人揃って女性を呼んで吸血(食事)後にお楽しみなんて趣味が悪いと思うけど」

「いいさいいさ構わねぇよ。趣味が悪いのなんて昔からだ。この際だ二人と言わず四人くらい呼んで楽しもうぜ」

「はいはいまた今度…………今夜もう出るんだろ?」


 口調の軽さは変わらないが目付きが鋭く真剣なものになる。瞬間で闘争へと意識が切り替わる程度には、互いにこの手の事件には慣れきっている。

 ルーレストはスマートフォンの時間を見る。時刻は20時半。動き出すには少し早いが問題のない時間だった。


「あぁ。休みたいなら俺一人で行くが?」

「まさか。地理の把握は僕の方が必要だよ」

「そりゃそうだ。なら飯でも食いながら情報交換でもしとくか。んで後でリスティのとこにあの万年フラレ公僕(ポリ野郎)を呼んでシメる。意味はないけどとにかくシメ上げる」

「ハダも可愛そうに」


 とは言え、こちらの連絡を無視してきたのも事実だ。同情はするが助けはしない。

 ルーレストは窓から空を見上げている。雲の切れ間から月が見えていた。ちょうど半月くらいだろうか。


「少し曇っているけど、月が綺麗だ」

「いきなりどうしたの?」

「いや……良いことが起きそうだと思ってな」


 ケイリィンは苦笑浮かべ静かに悟った。ルーレストがこんな風な事を言うのはだいたい面倒の前兆だ。それも飛びっきりの質の悪いものだ。それさえもルーレストのいう『良いこと』なのだろうか。


(無駄足になっても、退屈だけはしたくないかな)


 ルーレストとケイリィンは保存していた血を一飲みすると眠らない街へ繰り出した。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

20時50分


「ロングブレードナイフとMOSSYOAK(モッシーオーク)シースナイフ、ベレッタ90two(ツー)。予備の弾倉マガジンを二つ。とりあえずだがこれでいいか?」

「十分すぎる」


 スーツ_と言っても生地はコンバットシャツのそれで作られた特注品に着替え終わりバールームに出ると真朝と一緒にいた蝶野からナイフと銃を渡された。渡されたナイフをシースごとベルトに差し込み軽く銃を構える。

 今AMADEUSには俺と颯と真朝、キッチンで料理の仕込みをしているナディアと紫音さんの五人だけだった。


「って言うかお前マジでやる気か?武器揃えた手前で言うのもどうかと思うが、仮に成功したとしてもリスクとメリットが釣り合ってない」

「成功しようが失敗しようがどちらにしろ死ぬ可能性が高い。なら自分が好き勝手やって死ねる方を選ぶのは当然だろ。第一、お前自分言ってる事だが武器揃えた後でする話じゃない」


 タバコに火を着け、一つ吸うと大きくため息をするように煙を吐き出した。


「まぁ、いつも通りでいい。俺かお前がもうダメだと判断したら切り捨てろ。つってもそれは今回の件の前提だけどな」

「……とりあえず車運転する奴には粗方の事情は説明する。構わないな?」

「それはお前らにとって当然の権利だ」


 蝶野との会話を切り腕時計で時間を確認する。20時50分。机の上に置いてあるこれから使う銃を分解し、そのまま不備や故障、埃や汚れがないかを確認し、そのままもう一度組み立てる。その間キッチンの二人は何かを楽しそうに話していた。それを眩しそうに見つめながら電話で車の手配をさせている蝶野、パソコンを叩きながらこれから数時間後に起こるであろう戦いにすらならないであろう俺の行動のための下準備を真朝はしていた。


「そろそろ行けるか?」

「銃積んで車を出せる準備出来たらな。こっちは狩人か吸血鬼にバレたら逃げる。で、お前は……」

「そのまま喧嘩を売る。安心しろ、俺じゃ彼らの片方にすら勝てない」


 そう、勝てない。殺せない。殺しきれない。だが、それでいい。

 別に目的はあの吸血鬼達に勝つ(殺す)ためじゃない。そんな事やっても意味がない。この街で暴れている殺人犯(吸血鬼)の障害が少し減るだけだ。

 問題なのは今のままでは本物の吸血鬼に勝てないという事実。


「……さて上手くいくか?まあ、どうでもいいが」


 銃をベルトに刺し込みバールームを後にした。もう帰れないだろうかと下らないことを考えながら。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

21時30分


「失礼」

「…………」

「どしたよ、リィン」

「……いや何でもない」


 すれ違った相手に視線を向けながらケイリィンはルーレストの言葉に数瞬ほど間を開けて答えルーレストが入っていた店に続く。


「ねぇ日本ここまで来て中華?もっと天麩羅てんぷらとかお寿司とか日本っぽい食べ物あったんじゃない?」

「今から忙しくなるんだから精のつくもの食べておきたいんだよ。それに高い日本食屋ってのは個室に通されるんだろ?そんなもん襲ってくれって言ってよるようなもんだぜ?」

「ずいぶんと偏見が入ってるな、それ。第一ある程度お金のかかる場所は大体そうだろう」


 ルーレストが席に腰をかけメニューを見ながら先ほどの事をケイリィン思い出す。


「そういや何で気になったんだ?さっきのお前がすれ違ったたガキのこと」

「僕の気にしすぎと言われればそれまでなんだけどね。ただ一般の人間が戦闘用のスーツを着るとは思えないし、動きのそれが普通の人とは違うように思えた。かといって狩人にしては行動が意味不明すぎる」

「どういうことだ?」


 店に入る直前すれ違った少年か青年か曖昧な容姿の男。ケイリィンはその男に引っ掛かりを覚えていた。

 着ているものが一見ただのスーツだが、素材として使われているものが軍隊などで使われる生地だった。それだけならボディーガードや市民を装っている警察などの仕事かと思えたが、すれ違った際あまりにも動きが()()()()()。人を避ける時の無駄なりきみや体重の移動があまりにもなかった。


(そして、なにより……)


 一瞬視線が重なった時に見えた男の目は完全に目付きが人を殺すことに慣れているような、そんな正気とはかけ離れた人間の目だった。


「ふーん?よく分からないな。まぁその辺の目付きやら動きやらはお前の方が詳しいし、お前が言うならそうなんだろう元軍人」

「いつの話だよ。君も目が合えば一目で尋常じゃないって分かるよ……もしかしたら彼がこの街の殺人鬼(吸血鬼)かも。今からでも追いに行くかい?」

「顔覚えてるんだろ?ならいいさ。今は飯食うことにしよう。それにどうやら喧嘩はもう売られはじめてるしな」

「……ああ。確かに()()()


 けられている。恐らくそんなに多くはない。尾行が下手だ、粗末にも程がある。恐らく狩人でもなんでもない奴もいる。


「ここで暴れる気はなさそうだな。ってか狩人でもなさそうな奴の方が多いな。後で俺がやろうか?」

「その前に飯だろう?ごはん食べた後に決めればいいさ。それに誰かなのかは察しはついた。君もだとは思うけど」


 店内には自分達より後に入ってきた背の高いカップル。家族連れが二組。晩酌をしている三人組の老人。高級そうなスーツ姿の男。ー全員狩人。もしくは関係者。


「リィン、店員以外全員殺すぞ。ここに来ることを仕組まれてたみたいだわ、悪いな」

「気にしてないさ。これで吸血鬼(僕ら)としての食事も困らないね」


 この数十分後、中華店の店員が意識不明の重症を負い来客が二名の男を除き惨殺される事になる。殺害された死体のなかには服装が剥がされたものもあった。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「あっはははは!!そうかそうか!皆殺されたのか!やっぱり酷い奴だなぁ!べらぼうに悪党だ!ただのはした金で雇われただけの人間も含まれているのを知っていただろうに」

「……あなたが仕組んだことか博士プロフェッサー?」

「まさか。バカを言いたまえ君。地元民が勝手にやっただけさ。私達はそれを見ていただけだとも。私はただルーレスト・サングイスを観察していただけだ」


 巻き戻して再生したカメラに映っているルーレストはケイリィンが立ち止まったのを見て飲食店に入った。


「恐らくケイリィン・ハウルヴァーンにすれ違ったスーツの者が彼に何かしたのだろう。それでケイリィンは立ち止まりスーツの者を目で追っていた。そんなケイリィンを見ればルーレストは何が合ったのかを一応早めに確認を取ろうとする」

「それで狩人とその関係者がいるあの店に入れられたと?そんな計画とも言えない穴の多いやり方で?事前の用意は周藤だがいささか理解しかねるな」

「そうだな、確かに穴は多い。だが彼ら二人を嵌める罠がこれだけとは限らなかった筈だ。たまたま一発目が成功した、と私は考えている。事実、あの場にいた狩人は並程度の二人だけだ。吸血鬼を本気で迎え撃つつもりなら戦力が少なすぎる」


 ピッとディスプレイの電源を切り博士プロフェッサーと呼ばれた男は傍らの存在に目を向ける。


「我々、吸血鬼、狩人。そして謎の原住民。ふははは……実に愉しくなってきたじゃあないか!君にも働いてもらう。こんな愉しい事を私の一人占めではきっとすぐに飽きてしまう」

「承知しました」


 恍惚とした表情で博士プロフェッサーは呟いた。


「早く目を覚ませ……我らが死の薔薇姫(ルベル・カエルム)

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