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UnHappyBirthdayToMe《QUATTUOR》

短い&遅くてゴメンナサイ。

来年も気が向けば読んでください

 目を醒ますと見知らぬ部屋のベッドの上でライラは一糸まとわぬ姿だった。1単語で表すと全裸だった。しかも妙な女がそれを撮影していた。


「ん、お目覚め?おはよーツキカゲちゃん」

「は?え、ちょ……え?」


 女は撮影を止めずにライラの身体を覗き込み


「さっきから思ってたんだけど、おっぱい大きいよね。Fくらい?もしかしてGあっちゃう?」

「何なんですか、いきなり!!というか、ここはどこですか!?あなたはいったい何者ですか!?」

「ここは私のアジトみたいなものだよ。んで、私はさっきルーレスト・サングイスと戦っていた彼の、んー?友達なのかな?まぁとにかく仲間みたいなもんだって思ってもらえれば」

「……そうだ!彼はどうなったんですか!?」


 問いながら毛布で体を隠し、周囲を見渡す。武器などは大丈夫なのかと確認するために。それを察したのか女が部屋のすみに指差した。


「探し物は武器のことかな?武器(それ)ならあそこにおいてあるから。それとアキ君のことは心配ないよ。生きてるし、仮に死んだとしてもツキカゲちゃんには関係ないでしょ?」

「関係ないって……というか彼は今どこに?放置しておくのは危険です!彼が近くにいるなら避難してください」


 本條暁人の事を問いつつ武器の確認をする。確かに妙な機材の近くに自身の武器らしきものが立て掛けられていた。全裸のまま確認し武器が無事なのを確認する。普段ならそんな事を思うが今はそうはいかない。


「心配ないと思うけどねぇ。ま、ちょっとはゆっくりしなよ。さっき死にかけたの忘れたわけじゃないでしょ」

「呑気に構えてる場合じゃありません!」

「落ち着きなってば。全裸で叫んだところで危機感あるように思えないよ?それにアキ君なら平気だよ。どうせ彼の事だし腕もがれても眉ひとつ動かせなかったんでしょ?そんな人が吸血鬼になった程度で騒ぐことないって」

「……なら服貸してもらえますか?何も着ないまま話しをする気はそちらにもないでしょう」

「服ならここにあるよ。私のだから趣味が合わないかもしれないけど、その時ゴメンね」


 画面の前で何やらマウスを動かしている。何をしているのか気になりもするが、まず本條暁人の事も詳しく聞かなければならない。それに目の前の女の目的どころか名前すら不明だ。

 真朝を最大限警戒しつつ服を取るために彼女の隣に立ったときだった。


「おい、マーサ。なんか怒鳴り声聞こえたけどツキカゲちゃんとやらに何かあったのか?」


 整った容姿の男が扉を開けた。腕で胸部分を隠すと男は目を逸らした。後ろからは騒がしい音楽と大勢の声が聞こえる。どうやらここはクラブか何からしい。


「おぉー!颯ちゃんラッキースケベじゃん、よかったね。ねぇ眼福?眼福っしょ?」

「…………あー、その。すまん。着替えたら言ってくれ」


 そう言うと静かに部屋から出て扉を閉めた。


「もー少しさ、感想あってもいいと思わない?こんないいおっぱい中々見れないのにね」

「……」

「あはは、睨まないでよ。とりあえず服着なって、アキくんや私達とちゃんと話したいでしょ?」


 服を着るとマーサと呼ばれた女に目を向けた。女はまだ少し笑っている。見たところ戦う力はなさそうに見える。武器も見当たらない。


「そんな警戒しなくていいよ。お腹すいたでしょ?なにか嫌いなものある?今持ってきてもらう用に伝えておくからさ」

「呑気に構えてる場合じゃないと言いましたよね。あのアキトという男はどこですか?彼が近くにいるならすぐに……!」

『俺がどうした?』


 画面の一つから声が聞こえた。ルーレスト・サングイスと戦った時とは比べ物にならないほど気だる気な声だったが、あの本條暁人と名乗った男と同じ声だった。


「そっちはもういいの?お互い満足した?」

『どうでもいいだろ。それよりツキカゲの懸念を晴らせ。いつまでもその女を無駄にからかうな』

「……あなたは大丈夫なんですか?」

『ああ。思ったほどの飢餓感もないしな。安心しろ、まだ誰の血も飲んでない。まぁ今から飲むつもりだが』


 今からという言葉が引っ掛かる。近くに人がいるのか。それに飢餓感と言い切ったのも気になった。


「今どこにいますか?」

『同じ施設だ。すぐに向かうから飯でも食ってろ』


 一方的に通信が切られる。マーサがこちらに質問してきた


「飢餓感って何のこと?」

「……文字通りそのままの事ですよ。吸血鬼になった直後は激しい空腹と渇きを感じるんです。村一つ地図から消し去るほどの暴走をすることも珍しくない。実際見たことあります」

「へぇー危ないんだね。ツキカゲちゃんが早くアキ君に会おうとして他のそういうこと?」


 それでもどこか他人事のように聞いているマーサに怒りが生まれ声を荒げようとしたときに控えめなノックが聞こえ綺麗な髪の女性がスープとパンが持って入ってきた。


「あれ紫音ちゃん?アキ君は?」

「颯君が後で行くからごはん持っていってほしいって言われたの。持ってきた後で言うのもおかしいけど、ライラちゃんは何か苦手なものある?」

「……いえ、いただきます」


 温かいご飯なんていつ以来だろうかそう思いながらスープを口に運んだ。


「……美味しいです」

「ありがとう、でも温めなおしただけだけどね」


 紫音と呼ばれた女性はマーサにちゃんとご飯を食べているのかと聞いている。マーサも人懐っこい笑顔を浮かべ顔をしかめている紫音に抱き着きじゃれついている。紫音も困っている顔ではあるが嫌がっている様子はない。

 昔の自分を、吸血鬼など知らず母に甘えていたころを思い出してしまいそうになっていた。


「……」

「なんの感傷に浸っているのか知らんが早く食え」

「本條暁人……」

「アキ君遅かったね。それよりケーキはいる。ある意味今日誕生日じゃん」

「暁人君今日誕生日なの?」


 暁人は一つため息を吐くと紫音を外に出した。それと入れ違うように先ほど部屋を開けた男が再び入ってきた。暁人はマーサが操作していたディスプレイを見ながら近くの壁にもたれかかっている。もう一人の男は近くの椅子に腰かけこちらを携帯を見ている。マーサは近くの冷蔵庫からケーキを取り出して切り分けた。


「それじゃツキカゲちゃん。まずはハッピーバースデートゥーユーをアキ君にどうぞ。ロウソクはなくていいっでしょ?0歳児だし」

「無視していい。ツキカゲ、俺の要求は1つだ」

「自分ひとりでやる気なんだな。少なくとも俺とマーサは巻き込むんじゃないのか」

「気が向けばな」


 暁人は視線をこちらに向ける。その視線に表情の色が見えない。


「俺が吸血鬼を殺すのに協力しろ」

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