オウムちゃん量産化?!
次の、一般向け工業見本市の、うちのブースで、すごい新製品が、発表されるらしい。
事務方のうちの課にまで、緘口令が敷かれたが、そもそも、その新製品が、何なのかも、知らされていない。
かなり広めの、区画を押さえて、大がかりな展示を、行うそうで、各部署からも、手伝いに数人ずつ、人員を出すように、通達があった。
「休日出勤かぁ、その日は息子の運動会があってな」
「次の週まとめて代休取っていいならいいわよ」
押し付け合いには、ならなかったが、色々な事情を酌量すると、引率係の課長、独り身で自由がきく、自分と同僚の3人になった。
「ロボットだってさ」
へっ、とうっかり間抜けな声が出た。
「新製品さ、人間型のロボット、お喋りな奴らしいぜ」
曖昧に相槌を打ちながら、コーヒーをぐびりと呷る。
見本市まであと数日。常日頃から、色々な部署に、ちょっかいを出す同僚が、待ちきれなくなって、情報を仕入れてきたらしい。喋り続けている彼の声は、右から左へと、抜けていく。
もしかして、オウムちゃんが出るのか、いやいや、そんなはずはない。彼女は展示会の手伝いには行かないし、ってそんな問題でもないか。
うまく寝付けない夜を、何度か過ごし、あっという間に、見本市当日になった。
開場前に会場へ入り、各社の新製品を、ちらちら眺めながら、自社のブースへ向かう。仕切られたブースは、各社趣向の凝らした、展示方法を取り入れているが、高すぎる天井は、さすがに使い切れず、がらんとした空間に、器材チェックの音が、響いていた。
まずは、軽く全体挨拶と、打合せを。ステージの進行表などの、資料も配られる。と言っても、当日ぽっときた、専門外の人間が、できる手伝いなんて、限られている。自分たちは主に、配布用パンフレットの、在庫を運んだり、裏方の力仕事が、主なようだ。
「ま、昨日までであらかた準備も終わってるし、俺たちは何かあったとき要員だな」
気合入れが終わり一旦解散のあと、とりあえず待機、と言われたバックヤードで、課長がのんびりと呟く。
「えー!それで明日明後日と休日出勤すか、勘弁して下さいよ」
「どうせパチンコか飲み会だろ、日付がずれても同じじゃないか」
「週末じゃないと集まりが悪いんスよー!」
「美容師とかショップ店員とか土日休みじゃない職種を狙ってみたらどうかな」
入れ知恵するんじゃなかった。
合コンの誘いを、やんわりとかわすのが大変で、最初に依頼のあった、使いっぱしりを、喜んで引き受けた。
目隠しの衝立の向こうに抜けようとしたその時。
小さな女の子とぶつかりそうになって、立ち止まる。
そこにはきょとんした表情のオウムちゃん。
え、やっぱり発表されるのは君なのか!




