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アンドロイドの燃料とは

 ある日、部署の全員が、仕事を定時に、切り上げた。少し早い、忘年会を開くためだ。

 一部の、外回りの人間は、どうしても客先の都合で、時間が合わず、後から合流に、なったのは仕方ないが、他の全員が、しっかり仕事を終わらせた事には、びっくりした。

 明日に回した分も、少しはあったようだが、手の空いた人が、作業の多い人を、手伝ったりしていたらしい。お酒の力を借りる前から、結束力を固めるなんて、たまにはこういう機会が、あるのもいい事だ。

 わらわらと連なって、会社のすぐ近くにある、居酒屋へ歩いた。

 随分と冷え込んできて、風も冷たい。

 グループごとに、和やかに話をしながらも、皆の歩調は速く、首をすくめながら歩く様は、まるでハトのようだ。


 暖簾をくぐり、少し湿った、温かい空気に包まれると、ほっとする。

 靴を脱いで、座敷に上がり、熱いおしぼりで、ようやく人心地ついた。

 ここで、顔を拭いてしまったら、オヤジの仲間入り。と、ぐっと堪える横で、課長が首の後ろまで、ごしごしと拭いているのを、見て見ないふりをする。

 反対側の隣には、オウムちゃん、特に席は決まっていなかったが、何となく、指導している先輩の横に、新入社員が座っているようだ。

 まだ来ていない人には申し訳ないけど、と言いつつ、幹事がお店の人と一緒に、瓶ビールを配っていく。ウーロン茶の入ったグラスも、適当に置かれた。

 どちらかと言うと、ウーロン茶率が高い、この部署の飲み会では、酒を飲むように、強要されないのもあるが、いつも通り、車で通勤してきた人も、多いようだ。

 公共交通機関の、使い勝手の悪い土地柄では、仕方ないのだろう。


「それでは皆様。グラスの用意はよろしいでしょうか」

 一通り皆の手元を、確認した幹事が、改めて皆に問いかけ、それぞれが、手にグラスを持って、うなずく。乾杯の音頭は、課長が指名された。

 課長の挨拶は、必要な事を手短に話し、ちょっぴり笑えるネタを一つ入れ込んだ、素晴らしいものだった。まずは隣のオウムちゃんと、そして近場の人間と、グラスを合わせて、ぐっとビールを喉に流し込む。何故か拍手が起こり、それが収まるやいなや、大皿料理が、次々に運ばれてきた、遠慮せずに取り分け、舌鼓を打つ。

 もし、もう少し規模が大きく、部長が来ていたら、こうはいかないだろう。2品目のおでんに、手をつけている今ですら、まだグラスを手に、おあずけを喰らっていた、かもしれない。


 先輩どうぞ、と声がかかったので、空になったグラスを、手に取ると、オウムちゃんが、ビールをついでくれる。

「嬉しいけど、自分のペースで飲むから気にしないでね」

 私がやりたいんです、と笑顔で答えてくれるのは、本当に嬉しいのだけれど、昨今の、セクハラだの、アルハラだの、と言う騒ぎを見ていたら、鼻の下をのばして、可愛い女の子に、甘えているわけにもいかない。

 騒がしい、とまではいかないが、ざわざわと会話が混ざり合って、楽しそうな空気を作る中、お酒を手に、席から席へと、忙しなく動き回らなくてもいい、ただ美味しい料理と、ついでにお酒を楽しもう、という風潮を、作ってくれたのは、課長なんだよ、とオウムちゃんに、説明している間、彼女はじっと、自分を見つめながら、ニコニコと、話を聞いてくれている。おしぼりへの蹂躙は、どうかと思うが、それ以外は上司として尊敬できる。とまでは言えなかったが。


 小さなグラスに、半分程残ったビールを、持て余している、ように見えた、彼女に、他の飲み物を勧めると、メニューを眺めた、オウムちゃんが、注文したのは、梅酒のロックだった。

 あまり、酒を飲むように、見えなかったのに、と意外に思ったのが、伝わったのか「家族とよく飲むんです」と少し恥ずかしそうに、言い訳をしながら、両手でグラスを持って、ちびりと梅酒を飲む。


 家族もアンドロイドなのかな。

 そういや、アンドロイドでも、食べ物や飲み物は摂取できるんだ。

 アルコールは燃料として、効率がいいのかもしれないな。


 課長の話に、適当に相槌を打ちながら。

 頭の中はオウムちゃんで占められていた。

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