普通の女の子、ただし感じが良い
オウムちゃんが、オウムちゃんでは、なくなっても。
自分の中での、彼女の呼び名は、相変わらず、オウムちゃんだった。
彼女の、小さな変化には、まだ誰も、気付いていないようだ。
そもそも、オウム返しだった事に、気付いた人間も、いないのかもしれない。
今日も、いつも通り、定時10分前に、自分の席につき、仕事の準備を、はじめながら、同僚とにこやかに、会話をしている。昨日やっていた、ドラマがどうとか、自分には、さっぱりわからない話だし、どうやらオウムちゃんも、見ていなかったらしいが、うまく話を合わせている。
こういう時の、女子のコミュニケーション能力の、高さには恐れ入るものだ。
あれから2週間、彼女は特におかしい言動もなく、普通の人間として、仕事をしていた、相変わらず感じ良く。
たまにはミスもする、人間らしく。
機械らしい所は、一切見受けられない、あまりに普通すぎて、考え込んでいる自分が、バカらしくなってくる。
しかし、やっぱり思い過ごしだったのだろう、と考える度に、ネジの存在が、気にかかった。
直径1ミリほどだろうか、とても小さい。
これが、オウムちゃんの頭から、出てきたのだと思うと、彼女同様、かわいらしく見えてくるから、不思議なものだ。
出す必要のない結論を、捻り出そうと悩みながら、日々は過ぎていった。